ビブリオバトル部

　ビブリオバトル部作戦会議が始まりました。

　部長さんが説明を始めます。

「対戦相手から、キムに対して差別的で侮辱的な発言があった。そうだなキム」

「……」キムさんの表情は暗いです。

「キムはビブリオバトルとは関係ないと言ってあまり話したがらないが、僕は大いに関係あると思う。だから聞いてほしい」

「先週、日本帝国学校から一緒にビブリオバトルをやろうという提案があったから、うちの学校に来てもらって顔合わせをした」

「奴らがここに来るバスの中で、キムがスマフォの家族写真を見てたらそれを覗き込んで、急にヘイトスピーチを始めたそうだ。キムの親の正装が彼らのヘイトの対象だからな」

「日本から出て行け、お前らを養う為に税金を払ってるんじゃない、どうせお前も強姦魔の人殺しなんだろう、自分の国へ帰れ、お前らみたいなやつが日本にいると夜も安心して歩けない、この前の震災の時だってそれにかこつけて悪巧みしてたんだろ」

　ひどいです。キムさんが何かをしたのでしょうか。私から見たら年上ですけど、それでもまだただの子供です。こんなわけのわからない非難を投げつけていい理由なんてありません。

「日本帝国学校とビブリオバトルをやるという話をしてからキムの様子がおかしいとは思ってたけど……」

「日本帝国学校、正しい社会歴史研究部、会長、悪山悪太郎。正しい社会歴史研究部はこれまでさしたる活動はしてなかったそう。一応部活やってましたという内申書のアリバイ程度の活動ね。ところが去年、悪山悪太郎が部長になってから急に積極的な活動を始めたらしい。新入生部活動紹介でヒトラーのような演説を一席ぶったらしいの」

「人種差別につながるようなデマやヘイトスピーチは止めたほうがいいという先生もいたらしいんだけど、演説を校長がたいそう気に入ったらしいのよ。そして表現の自由は守られなければならない、言論弾圧は行うべきではないって彼を守ったらしいの」中さんが説明します。

「ツイッターとかのＳＮＳでも過激な事を書きまくってフォロワーも多いの。ビブリオバトルを知ったのが最近らしくて、どうもそれを政治利用したいと考えてるみたいなの」

「その情報の内容は確かなのかな？もちろんキムを信じてないという意味じゃないけど、学校での評価なんかはどこから集めた情報ですか？」

「そこの善恵ちゃんが日本帝国学校の生徒なんだよ」

　私に視線が集まります。こういうのはとても苦手です。