【シリコンバレー=兼松雄一郎】米アップルは5日、人工知能(AI)で音声に自動応答するスピーカー端末「ホームポッド」を12月に発売すると発表した。同端末は「ポスト・スマホ」の本命とされ、先行する米アマゾン・ドット・コムや米グーグルが米国中心に販売を急拡大させている。アップルは個人情報保護と音楽再生の機能を高めることで競合他社との違いを打ち出した。
米カリフォルニア州サンノゼ市で同日開いた開発者向けイベント「世界開発者会議(WWDC)」で発表した。価格は349ドル(約3万8500円)で、米、英、オーストラリアで先行発売する。音声で操作するため、販売地域の拡大にはAIの言語理解能力の制約がある。英語圏から始め、来年以降、欧州、中国、日本などに地域を広げていく。日本での発売は来年以降になる。
AI機能を搭載したスピーカーはアマゾンが製品化で先行し、昨年時点で既に累計1千万台以上を売り上げている。同社のスピーカー性能が低い機種の価格は49.99ドルからで、アップルの端末は高価格帯に入る。同様の製品は米グーグルも投入済みで米マイクロソフト(MS)も今秋に発売を予定するなどIT(情報技術)大手がしのぎを削る構図となっている。
見た目はただの小型スピーカーだが、マイクが内蔵されており、話しかけると瞬時に反応が返ってくる。電球など接続機能がついた家電と連携させれば話しかけるだけで操作ができる。天気、渋滞、スポーツの結果などの情報を尋ねると、ネットで検索して結果を声で知らせてくれる。アラーム設定やニュース読み上げも声で指示でき、スマホに触らずに声だけで操作できる手軽さが売りだ。
最も使われる機能の一つが音楽再生。好みの曲やミュージシャンの名前を言うと曲が自動で再生される。MSは自ら端末は手掛けず、様々なスピーカー会社にAIを提供する戦略。一方、アップルはセンサーで部屋の中の空間配置を検知し、最適な音響になるよう音の出し方を変えることで性能を高め、違いを打ち出した。
アマゾンやグーグルは家の中の会話などの個人情報に関わる音声データもいったんはクラウド上に上げて処理している。アップルは個人情報に関わる音声データは端末内で処理することでプライバシーの保護を訴えている。
日本語に対応したAI搭載スピーカーはグーグルが年内に発売する予定。アマゾンとMSは発売時期を明らかにしておらず、アップルも来年以降になる。一方、国内勢ではNTTドコモ、通話アプリのLINEが今夏にも発売する予定。ソフトバンクもロボット開発ベンチャーと組んで年内に発売する計画だ。