香港=益満雄一郎
2017年6月5日21時42分
民主化を求めて弾圧された1989年の天安門事件の犠牲者を追悼するため香港で開かれた集会で、参加者の一部が5日未明、会場から中国政府の出先機関にデモ行進し、共産党の旗を燃やすなどした。共産党政権との対決姿勢を強めるグループが現れる一方、これまで追悼集会を支えてきた大学学生会は集会自体への組織参加を辞退。民主派内の「分断」があらわになっている。
「中国の強権体質は変わっておらず、香港の民衆は共産党の様々な妨害に直面している」。若者ら約100人のデモ隊が出先機関前で中国政府を批判した。香港の将来は香港人が決めると訴え、伝統的な民主派とは一線を画す「自決派」の人々が多く含まれていた。中国政府が神経をとがらせる天安門事件の追悼に合わせて党旗に火をつけたことは、中国側の香港に対する感情を刺激する可能性がある。
香港の民主派勢力は、同じ中華民族として香港から中国の民主化を進めようとの立場から、事件翌年の90年以降、毎年、追悼集会をおこなってきた。しかし、若い世代の間で「中国本土離れ」が進み、今年の追悼集会の参加者は約11万人(主催者発表)で、2009年以降で最少だった。
背景には14年に若者たちが香港での民主選挙実現を求めた大規模デモ「雨傘運動」以降、要求をはねつけた中国への失望と無力感が強まっていることがある。
「中国の民主化より香港の民主化を優先するべきだ」という意識が広がり、主要大学の学生会も、中国への働きかけを続けようとする伝統的な民主派から距離を置くようになった。
香港大の世論調査によると、「香港人には中国の民主化を推進する責任がある」との意見が90年時点では約80%占めたが、今年は史上最低の58%まで低下。香港大学生会は4日、「香港独立派」をパネリストとして招いたフォーラムを開催した。(香港=益満雄一郎)
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朝日新聞国際報道部