はじめに
最近では歯のホワイトニングは多くの歯科医院やホワイトニングサロンで行われていて、受ける方も年々増加しています。ホワイトニングは歯を溶かす、歯を削る、歯が脆くなる、神経が死ぬことがあるなど、歯に悪いからやらないほうがいいという考えの歯科医師や歯科衛生士もいます。本当にホワイトニングは歯に悪いのでしょうか。
ホワイトニングの研究は100年以上前の1844年から行われており、アメリカでは約20年前から実用化されていて、今ではドラッグストアや百貨店などで普通に売られているくらい、生活に浸透しています。
ホワイトニングに使用される薬剤の多くは、アメリカの食品医薬品局(FDA)や日本の厚生労働省でも認可されている薬剤です。アメリカのニューヨーク大学、ニュージャージー医科歯科大学、ロマリンダ大学、インディアナ大学など、日本では昭和大学、日本大学、東京医科歯科大学、岩手大学など多くの大学や研究機関で研究されています。その結果、歯のホワイトニングは、歯を軟化させたり、傷めたりすることなく安全に白くすることができることが証明されています。
ポイント
- アメリカでは99%の歯科医院で歯のホワイトニングを行っています。訴訟大国のアメリカで一般的に行われていることは、安全である証です。もし本当にホワイトニングで歯が脆くなったことがあるのであれば、アメリカで訴訟を起こされ、多額の損害賠償を請求されているでしょう。今のところこのような事例はありません。
注意
- ホワイトニング剤の中には、アメリカのFDAまたは日本の厚生労働省のどちらの認可も受けていないものがあります。認可されていない製品の中には、歯にダメージを与えるものもありますので、ホワイトニングを受ける際には、認可製品であるかどうかを確認されることをお勧めします。
それでは各項目について科学的に検証してみましょう。
1.ホワイトニング剤
オフィスホワイトニングは通常、過酸化水素を使用して歯を白くします。過酸化水素は、消毒剤として一般的に使用されているのをはじめ、食品添加物にも使用されており、人体でも肝臓で1日に約6.5gの過酸化水素が作られています。
初期のホワイトニング剤の中には強酸性のものがあり、一時的に歯のカルシウムが溶け出す”脱灰”という現象を起こします(これがホワイトニングは歯を溶かすと言われる原因です)。しかし唾液の作用で1時間以内にはカルシウムが戻る”再石灰化”という現象が起こることが分かっています。このリスクはコーラを飲んだ時と同程度です。
ポイント
- ホワイトニング後にフッ素を歯に塗ることで、この脱灰も防いで、歯を強化することが分かっています。多くのオフィスホワイトニングでは、施術後にフッ素を塗るようになっています。
注意
- オフィスホワイトニングに使用される高濃度の過酸化水素は、誤って皮膚や歯茎に付くと一時的に白くなって痛みますが、すぐに元に戻ります。
ホームホワイトニングで使用されている過酸化尿素は、歯肉炎の治療薬として古くから使用されています。このホームホワイトニング剤が体に影響を与える量は、マウスを使用した実験から27.01g/kgということが分かっており、成人では約1kgに及びます。1kgのホワイトニング剤を飲むことは通常では考えられませんので、通常の使用では安全です。
注意
- 海外の製品の中には、かなり高濃度のものや酸が含まれているがあります。高濃度のホームホワイトニング剤が歯茎に付くと、白くなって痛みが出たり、歯茎が炎症を起こして歯茎が下がることもあります。また酸は歯を溶かしてしまうことがあります。海外製品、特に濃度の高いホワイトニング剤を使用するには必ず医師の指導の元で行ってください。また自分で作製する簡易的なマウスピースで使用すると、薬剤を飲み込んでしまう量が多くなるため、お勧めできません。
ヒント
- 歯のホワイトニングに使用する過酸化水素は、髪の毛の脱色(ブリーチ)にも使用されています。髪の毛はブリーチすると痛みますが、これは髪の毛がタンパク質でできているためです。歯のエナメル質はほとんどが無機質で、常に唾液に被われているため、過酸化水素によるダメージはほとんどありません。
2.ライト
一般的なホワイトニングには可視光線領域中の380nm~600nmのライトやレーザー、LEDなどを使用しますので特に問題はありませんが、一部の機械(ズームアドバンス、ピュールホワイト)には365nmの近紫外線であるUVAを含んでいます。UVAはUVBで生成されたメラニン色素を褐色化させる作用がありますので、これらの機械を使用する際には、皮膚の色素沈着を防ぐために、防護措置が必要になります。
注意
- 紫外線アレルギーや膠原病の方など、太陽に当たることができない方は、オフィスホワイトニングができない場合があります。
3.熱
オフィスホワイトニングに使用される機械の中には、熱が出るものがあります。これはホワイトニング剤を活性化させるためですが、温度が50度近くになることもあります。通常、歯の温度が5.5度以上上昇すると歯髄炎になることが分かっていますので、約43度で歯髄炎になってしまいます(これがホワイトニングをすると歯髄炎になったり、神経が死んでしまうと言われる原因です)。
しかしCRA(Clinical Research Associates)というアメリカの研究機関の報告では、歯に適正に塗られたホワイトニング剤の表面の温度が50度近くになっても、歯の温度は体温にも満たない(36度以下)ことが確認されています。機械で発生する熱は、通常の使用方法を守っていれば、歯の神経には影響がありません。
今までに歯のホワイトニングが原因で重篤な症状になった方は世界的にも報告がありません。薬事法が厳しい日本や、訴訟大国のアメリカで認可されているシステムであれば、正しい使い方をしていれば安全性に問題はありませんので、安心してホワイトニングに挑戦してみてください。
ヒント
- 最近ではホワイトニングによって、歯周病が改善したり、歯質を強化することで虫歯になりにくくなるという研究結果が各大学から報告されています。特にホワイトニング後には、歯へカルシウムが取り込まれやすくなり、虫歯予防になることがわかってきました。ホワイトニングは歯を傷めるどころか、歯にいいということが証明されてきています。歯を白くすることができなかった一昔前は黄色い歯のほうが健康でしたが、現在では白い歯=健康ということになります。