はじめに
以前、「コーラは歯を溶かす」といわれていたことがありました。この現象はコ-ラに限らず、酸性度の強い食品を摂った時に共通に起こる現象です。
歯は酸によってカルシウムが溶け出します(この現象を脱灰と言います)。通常は唾液の緩衝作用によって酸が中和され、カルシウムが再び歯に戻る”再石灰化”という現象が起こるため、歯に影響はありません。酸っぱいものを口にしたり、想像しただけでも唾液が出てくるのは、歯に悪い酸を唾液で中和するための生体反応です。唾液が多く出るような食品は歯には良くありません。
しかし酸を大量に摂取したり、長時間口に入れていると、脱灰が再石灰化を上回り、歯がどんどん溶けてきます。この状態を”酸蝕”と言います。初期にはエナメル質に艶がなくなり、さらに酸蝕が進むとエナメル質が薄くなってきて、象牙質の色が透けて歯が黄色くなってきます。さらに進行すると歯が丸く小さくなり、象牙質が出てきてしみるようになってきます。
注意
- 海外で発売されているホワイトニング剤の中には、酸で歯を白くするものもあり、注意が必要です。
エナメル質の脱灰が起こるpHは約5.5以下です。これを下回る食品を摂る場合には、十分に注意が必要になります。
ポイント
- 口の中が酸性になって、脱灰しているときに強く歯を磨くと、エナメル質を傷つけることがあります。
ポイント
- pHは水素イオン濃度指数のことで、一般的な環境下では0~14まであります。pH7が中性で、それ以下が酸性、それ以上がアルカリ性です。
また歯のホワイトニングを行った直後は、酸に対する抵抗力がなくなっていますので、最低30分は酸性の食品を控えてください。
ヒント
- 歯のホワイトニング後に歯の表面にフッ素を塗るとカルシウムが溶け出すのを防ぐことができます。ホワイトニング後すぐに食事をしたり、ジュースを飲む場合にはフッ素入りの歯磨きで歯を磨いてください。
この知恵ノートでは、一般的な酸性が強い食品のpHを挙げておきますので、これらの食品を摂る場合には、注意してください。
pH1 クエン酸
ポイント
- 歯科で虫歯治療に使用されている、エナメル質を一時的に溶かす酸エッチングのpHが約1です。クエン酸を飲む時には十分に注意してください。
pH2 レモン、コーラ、炭酸飲料、栄養ドリンク、梅干し、ピクルス、タバスコ、胃酸など
注意
- 拒食症の方は嘔吐することで、胃酸によって酸蝕症になってしまうことがあります。これもうがいやフッ素歯磨きである程度予防することができます。
pH3 お酢、ドレッシング、梅酒、ビタミンC、柑橘系フルーツ(オレンジ、イチゴ、リンゴなど)、ソーダ、スポーツドリンク、白ワイン、柑橘系ジュースなど
pH4 赤ワイン、ヨーグルト、乳酸飲料、ミックスジュース、ソース、ケチャップ、ポン酢、ビール、発泡酒、梨など
ポイント
- 梅干しやワイン、お酢などはアルカリ食品として有名ですが、これは体をアルカリ性にする食品という意味で、食品自体は酸性です。梅干しがアルミのお弁当箱を溶かすのも酸が原因です。
pH5 醤油、焼酎、ウイスキー、トマトジュースなど
注意
- 上記のpH値は目安です。品種や銘柄によってpHは若干変わってきます。
ポイント
- 通常の食事でも、飲食直後は口の中のpHは5.5以下の酸性になっています。以前は食後3分以内に歯を磨くことが推奨されていましたが、現在では食事の直後は歯が脱灰していてもろくなっているため、飲食直後の歯磨きは推奨されていません。
注意
- ホームホワイトニングを就寝中に行っている方は、朝の食事に特に注意してください。果物やフルーツジュース、トマトジュース、スポーツドリンク、ヨーグルト、サラダドレッシング、梅干しなど、朝食に食べるものには酸性の食品が意外と多いことが分かります。知らずに摂取すると、歯を傷めたり、歯の着色の原因になってしまいます。ホームホワイトニング中の方は、朝起きたらフッ素入りの歯磨きで歯を磨くか、30分以上経ってから朝食を摂ってください。歯科医師にも意外と知られていないホワイトニングの落とし穴です。
食べ物やその食べ方によっては、歯を溶かしたり、歯を黄色くしたりします。正しい知識で歯の健康を維持してください。