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【社説】

東京集中の是正 大学の規制は筋違いだ

 東京一極集中を和らげるために、政府は大学定員を抑える方針を打ち出した。地方の疲弊の責任を、東京の大学に転嫁するのは筋違いだ。若者の学ぶ機会の制約につながりかねず、見直したい。

 政府のまち・ひと・しごと創生本部は、社会政策としての大学改革の方向性をまとめた。東京二十三区では大学の定員増を原則認めず、学部・学科の新設は定員の枠内に収めるよう求めている。

 政府は閣議決定する骨太の方針に盛り込む。東京への若者の集中を抑え、定員割れの目立つ地方大学の活性化、ひいては地方創生につなげるという。

 全国知事会の要望に沿ったものだが、均衡の取れた国土づくりに失敗したツケを都心の大学に回す格好ではないか。効果が出なければ、規制の対象地域を広げるのではないかとの疑念も抱かせる。

 学問の自由、教育を受ける権利を損ねる危うさもはらみ、きわめて短絡的な政策にみえる。

 大学の立地や規模への安易な介入は、少子化で激しい競争にさらされている経営を圧迫しかねない。社会の需要動向をにらんでの教育研究環境の刷新を妨げるおそれも否めないだろう。

 大学など進学先を出たら高校所在の地元に残りたいかどうかを、リクルート進学総研が昨年春の高校卒業生に尋ねている。結果、四割は「残りたい」と答え、「離れたい」は二割にとどまった。

 しかも、エリア別でも「残りたい」が「離れたい」を上回った。

 着目したいのは、四人に一人が「どちらでも良い」と答えている点だ。地方に魅力的な雇用機会が見当たらなければ、東京をはじめ大都市志向へと転じるだろう。

 どこの大学で学ぶかよりも、卒業後の活躍の舞台がどこにあるか。それが最大の問題といえる。

 後押ししたい政策はある。例えば、東京の大学が地方にサテライトキャンパスを展開したり、地方の大学とのいわば相互遊学の仕組みを導入したりすることだ。視野や人脈が広がれば、進路の選択肢も充実するだろう。

 とはいえ、やはり経済界の意識を地方に向けさせる刺激策が重要だ。

 とりわけ大企業の本社機能の移転に加え、地方採用枠や地域限定正社員枠の拡充を促したい。政府は思い切った優遇税制措置を検討するべきではないか。

 なにより地元の産学官を束ねる首長の指導力こそが問われている。若者の就学の流れをせき止めるような発想は建設的ではない。

 

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