東芝TY-CDX9N。都内の量販店の店頭では1万1000円ちょいの値段がついていた(2017年6月5日現在、撮影:志和浩司)
このデジタル時代に、静かなアナログブームが起きている。ここ数年、アナログレコードが人気を集めたり、フィルムカメラで写真を撮る人が徐々に増えていたりするそうだ。
そして、一時はもはや過去の遺物かと思われたコンパクトカセットテープも、根強い人気。今月7日発売のTUBEのミニアルバム「sunny day」は通常盤CDのほか、完全生産限定盤としてカセットもリリース。ラジカセやウォークマンで育った世代が懐かしさにかられて……というのが狙いなのだろう。
しかし、デジタル世代と思われる10代・20代といった若い世代にも、カセットテープファンが増えているそう。カセットならではのアナログな音質、そしてデザインがおしゃれ、面倒くさいところがいいとの声も。アイドルグループのでんぱ組.incは新曲をカセットでもリリースしている。
とはいえ、現在新品で入手できるコンパクトカセットのプレイヤーはそれほど多いわけではない。そんな中、今回は実売1万円ちょっとで量販店で販売されている東芝製のラジカセ・TY-CDX9Nに注目してみた。ラジオとカセットのほか、CDも聴ける。録音済みのカセットをカセットとして聴くだけではなく、SDカードやUSBメモリーなどを介してデジタルデータ化できる便利なモデルで、ハイポジションのカセットを再生できるのが大きなポイントだ。
ハイポジションとは何? Type IからIVとは?
上がハイポジション(TDKのSA)、下がノーマル(TDKのAD)。カセット全盛時の人気モデルだ(撮影:志和浩司)
カセットに親しんだ世代には釈迦に説法となってしまうが、カセットにはType IからIVまで4つのタイプがあった。Iはノーマルなどと呼ばれ、最初期から現在まで使われている基本的なもの。
IIがハイポジジョンで、出始めたころは磁性体として二酸化クロムが使用されたためクロームテープ、CrO2などとも呼ばれた。後に公害問題はじめいくつかの理由からコバルト‐酸化鉄系磁性体に代わられ、ハイポジション、ハイポジといった呼称が定着した。
Type III、フェリクロームの代名詞といえるソニーのDUAD(デュアド)。一時は高いステータスがあった(撮影:志和浩司
IIIは、表層に Type II の磁性体、下層に Type I の磁性体と二層塗りを施したもの。それぞれの特性を生かしたものとして、フェリクローム、Fe-Crなどと呼ばれた。しかしIやIIの高性能化にともない、優位性が次第に失われていったため、数はそれほど出ていない。