はじめに
ワンクリック詐欺について、法律面から纏めた知恵ノートに気が付きませんでしたので、素人ながら纏めてみました。
細かい内容は、リンク先を参照するなり、検索、辞書等で調べるなりしてください。
Yahoo!辞書、ウィキペディア(注:誰でも内容を変更できますから、間違いがあることもあります)等も参考になるでしょう。
経済産業省が「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」内にインターネット上での契約に関係する法律を纏めて解説してくれています。
ワンクリック詐欺についても1章を割いています。
I 電子商取引に関する論点
I-1 オンライン契約の申込みと承諾
I-1-4 ワンクリック請求と契約の履行義務
PDFファイルを読めない方はこちらのリンク(Yahoo!のPDF閲覧サービスです)からご覧ください。(携帯電話や非力なインターネット端末からは難しいと思います)
具体的な法律に入る前に
契約は、当事者の合意で成立します。逆に言えば、当事者の合意がなければ成立しません。
詐欺師は、いかにも合意があったと、あの手この手で主張してきます。
又、民法第1条第2項に「信義誠実の原則(信義則)」が定められています。
互いに信義に基づいて誠実に行うべしということです。
業者は消費者が勘違いやミスをしないように誠実な表示等を心がける必要がありますが、そのような誠実なことをしていれば詐欺は成り立ちません。
規約等を見ても、(信義則に反する)一方的なことが書かれています。
人は、勘違いや失敗をする動物です。そういた行為を救済する為に民法95条に「錯誤無効」が定められています。勘違いや失敗があった場合、(行為者に)重大な過失がなければ無効を主張できます。
「特定商取引に関する法律」及び「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(電子消費者契約法)」
インターネット上のワンクリック詐欺に直接関係しているのがこれら法律です。
特定商取引に関する法律
特定商取引に関する法律の概要は「通信販売|特定商取引法ガイド」(消費者庁)をご覧ください。
ワンクリック詐欺は大抵 「インターネット通販における『意に反して契約の申込みをさせようとする行為』に係るガイドライン」に違反しています。
特定商取引法施行規則第16条より下記行為が「意に反して契約の申込みをさせようとする行為」として禁止されています。、
- 顧客がパソコンの操作を行う際に、申込みとなることを容易に認識できるように表示していない。
- 申込みを受ける場合において、顧客が申込みの内容 を容易に確認及び訂正できるようしていない。
ポイント
- 以下は違反です
- メールやインターネットのアドレスをクリックしたら、いきなり契約成立と表示される
- 画面に大きく「無料」と書くなどして、無料と勘違いさせる表示
- 申し込みボタンの表示等が「18歳以上」等、有料申し込みであることが一目で分かるように表示していない。
電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律
インターネットにおいては、消費者が簡単に操作ミスをしたり、表示等を勘違いするケースが多々あり、業者側は十分な注意を払えば、それらを避けられる可能性が高いです。
その為、インターネット上の契約において、
- 十分な申し込み内容の確認措置を行った場合
- 消費者自身が確認措置が不要と意思表示した場合
を除いて、消費者の勘違いや操作ミスがあった場合、契約を無効とすることが出来る(錯誤無効)と定めています。(第3条)
1.2.共に形式的なものではなく(法律の目的を満たすレベルの)実質的に確認したと言い切れるだけの表示等が求められます。
ポイント
- 以下は違反です(特定商取引に関する法律にも違反しています)
- 「18歳以上」「規約に同意」等の表示はあるが、具体的な申し込み内容等をその画面に分かりやすく表示していない。
- 携帯電話などの画面で、下の方まで画面をスクロールしなければ申し込み内容が表示されていない。
- 画面を何回クリックしても、契約完了画面の前に、申し込み内容を分かりやすく表示していない。
電子商取引及び情報財取引等に関する準則より
I-1-4 ワンクリック請求と契約の履行義務 の内容を要約してみます。
契約が不成立の場合
契約は当事者の合意により成立しますが、合意が成立していないと考えられる場合。例えば、メール等に書かれたアドレスをクリックしたら、いきなり申し込みになった等、客観的に見て業者から契約の申出があったと認められない等
準則に記載はありませんが、当然、申し込んでいないのに一方的に契約が成立しているとメールが来た 場合等も該当します。
錯誤により契約の無効の主張が可能な場合
画面表示の内容が不十分だったり、消費者の意思確認が不十分だった場合が該当します。
ワンクリック詐欺は消費者の勘違いや操作ミス等を利用しますから、大抵は該当します。
消費者契約法違反の条項があり無効となる場合
消費者契約法第8条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)、第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)、第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)に該当する場合、当該条項は無効となります。
(契約の有効性は別の問題です)
例えば、(法律の認める範囲を超える)過大な違約金、延滞金等。
法律の詳しい解説は||| 消費者契約法 | 消費者の窓 |||(消費者庁)をご覧ください。
契約の内容が公序良俗に違反するとして無効の主張が可能な場合
民法第90条に公序良俗に反するものは無効と定められています。
例えばサービス内容に比して対価が高すぎる場合、サービス内容が違法(例えば他人の著作物を承諾を得ずに利用)である場合等
詐欺による契約の取消しの主張が可能な場合
ワンクリック請求業者が、申込者に対して欺罔行為を行い、その結果として申込者が勘違いをして申込みの意思表示をなした場合には、申込者は詐欺(民法第96条)による契約の取消しを主張することができます。
申込者が未成年であることにより取消しの主張が可能な場合
ワンクリック詐欺の場合において、民法第5条第2項より、未成年が法定代理人(親等)の同意を得ずにした契約は取り消すことが出来ます。ただし、成人であることを偽った場合は取り消すことは出来ません(民法第21条)。
ワンクリック詐欺の場合、年齢確認画面の中身しだいで未成年取消しは利用できない可能性があります。
不正指令電磁的記録に関する罪(ウイルス作成罪)
ワンクリック詐欺サイトを見た際に、画面に「料金を支払え」等の表示をするプログラムが実行されることがあります。これは、不正指令電磁的記録に関する罪(刑法168条の2及び168条の3)に該当する恐れがあります。
#刑罰の対象はウイルスに限定されません。
アダルトサイトの「4クリック詐欺」で暴力団幹部ら5人を逮捕、千葉県警(公開終了)
- 不正指令電磁的記録保管容疑(通称・ウイルス作成罪)の可能性もあるとみて、県警は捜査を続けている。
「代金請求」画面がどうしても消せない アダルトサイトで新手のウイルス感染 : J-CASTニュース