疲れやすい、足腰が痛い――そういった症状は年齢や体調のせいにしがちだが、実はいつも飲んでいる薬の副作用が原因の場合がある。思いもよらない形で健康をむしばむ「副作用リスト」。
「半年ほど前、引っ越して新しい医者にかかりました。それから、やたらと空咳が出るようになった。最初は新しい家のハウスダストかなにかが原因で、生活環境が変わったせいではないかと疑っていました」
こう語るのは、大阪府在住の井上晃一さん(67歳、仮名)。
「医者に行って咳止めをもらいましたが、一向によくならない。そこで引っ越す前のかかりつけ医に相談に行ったところ、『引っ越した先の病院で、新しい薬をもらいませんでしたか?』と聞かれた。
それで新しい医者にかかったときに出された降圧剤が咳と関係していることがわかったのです。
新しく処方された薬はアデカットというもの。これはACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬という種類の降圧剤で、副作用に咳があるのです。
それで降圧剤をもともと使っていたカルシウム拮抗薬に戻してもらったところ、ぴたりと咳は治まりました」
井上さんのように、一般の患者は、まさか血圧の薬が慢性的な咳の原因になるとはなかなか気づかない。
病院に行っても、「3分診療」で患者がどんな薬を飲んでいるかすらきちんとチェックしない医者ならば、咳止めを出されておしまいだろう。
このように体のちょっとした不調、なんとなく気分が優れないといった症状が、実は飲んでいる薬の副作用で起こっていることがある。その場合、薬をやめることで症状が治まってしまうことがほとんどだ。
投薬など医療行為が原因でなる病気を「医原病」と呼ぶ。しかし医者がそれを医原病だと見抜けず、疾患があると診断すれば、さらに新しい薬が処方されることになる。
そうなるとさらに新しい副作用が加わって、病気を治すどころか、「飲めば飲むほど体調が悪くなる」という負の連鎖に陥りかねない。
井上さんの場合も本来は不要な咳止めを処方されていた。もし、そのまま咳が続いて状態が悪化していれば、抗菌薬などの新しい薬も追加されて、薬漬けの副作用まみれになっていただろう。
このような悪循環に陥らないためにも、患者は薬が引き起こす諸症状を知っておいたほうがいい。いろいろな症状別に、その原因となりうる薬の例を見てみよう。