イチゴ授粉 期待の助っ人 ミツバチ代わり 有望 医療用ヒロズキンバエ
2017年05月30日
ハウスに設置するパックに入ったさなぎを紹介する東井指導研究員(奈良県桜井市で)
イチゴを放花するヒロズキンバエ(奈良県農業研究開発センター提供)
ミツバチの代わりとしてイチゴの授粉に使えるハエ「ビーフライ」の利用が広がってきた。傷の治療など医療用に幼虫が使われるヒロズキンバエの成虫だ。現状はミツバチよりもコストはかかるが、試験では蜂が飛びにくい低温、低日照でも活動するため奇形果が減る効果も出ている。ミツバチの供給が逼迫(ひっぱく)した際に補完的な働きを期待する声も出てきた。
ビーフライをイチゴの授粉に使う研究が本格化したのは、2011年ごろから。09年にミツバチが不足し、価格が高騰したことから試験が始まった。岡山大学の吉田裕一教授は「もともとマンゴーでは訪花すると知られていた。イチゴでは花の蜜を吸うために花に行くと分かった」と話す。
ハエといっても、人間の医療用にも使われるものだ。ヒロズキンバエの幼虫(マゴット)は、やけどや糖尿病で壊死(えし)した部分などを治療する「マゴットセラピー」に活用されている。
ジャパンマゴットカンパニー(岡山市)は、医療用に無菌状態で増やした幼虫を生産・販売。ビーフライはこの技術を応用し、閉鎖環境で衛生的に増やしたさなぎの状態で園芸農家に発送する。ハウス内に入れておけば羽化して訪花する。同社によると、全国約60カ所で利用実績があるという。
奈良県農業研究開発センターの試験では、ビーフライならではの利点も見えてきた。ビーフライの活動温度は10~35度とミツバチに比べて広く、厳寒期にミツバチが飛びにくい時期でも使える。
12年度から行った試験では、無加温のハウスにイチゴ10品種を混植。7日間隔で1アール当たり300個のビーフライのさなぎを置いたところ、ミツバチと比べて12~4月に収穫した果実の重量に品種による差はなかった。
一部の品種ではビーフライの授粉で、奇形果の発生がミツバチよりも少なかった。センターの東井君枝指導研究員は「県内は3アールほどの単棟ハウスが多く、ミツバチの巣箱を一つ入れると花の数が足りず、開花前に潜り込むことで奇形果が出ることがある」とみる。
試験導入した農家からは問題点は挙がっておらず、逆に蜂のように人を刺さないためイチゴ狩りなど観光農園で利用を期待する声もあるという。
10日に1度の補充が必要なためミツバチよりコストはかかるが、3アール程度のハウスであれば蜂と同等のコストで利用できそうだ。東井指導研究員は「治療用マゴットを国内で供給できるようになるまで、海外から購入していたと聞いた。イチゴでの利用が増えることで需要が安定し、医療向けの生産と共存しながら発展していければ」と望む。
現在は同社と同大学、同センターの他、島根県や農研機構・西日本農業研究センターが協力し、利用マニュアルの作成などに取り組んでいる。
吉田教授は「厳寒期はビーフライを使い、ミツバチの消耗を避けることにより、ミツバチの過剰な消費を抑えられるのではないか」と、補完的な活用を視野に入れる。
<ことば> ヒロズキンバエ
キンバエの一種で日本国内にも生息する。野外に出ても生態系に問題は起こらないという。ハウス内では餌となる動物性タンパク質がないことなどから、羽化して10日程度で死んでしまうとみられる。
低温・低日照で活動 厳寒期補完に
ビーフライをイチゴの授粉に使う研究が本格化したのは、2011年ごろから。09年にミツバチが不足し、価格が高騰したことから試験が始まった。岡山大学の吉田裕一教授は「もともとマンゴーでは訪花すると知られていた。イチゴでは花の蜜を吸うために花に行くと分かった」と話す。
ハエといっても、人間の医療用にも使われるものだ。ヒロズキンバエの幼虫(マゴット)は、やけどや糖尿病で壊死(えし)した部分などを治療する「マゴットセラピー」に活用されている。
60カ所で利用
ジャパンマゴットカンパニー(岡山市)は、医療用に無菌状態で増やした幼虫を生産・販売。ビーフライはこの技術を応用し、閉鎖環境で衛生的に増やしたさなぎの状態で園芸農家に発送する。ハウス内に入れておけば羽化して訪花する。同社によると、全国約60カ所で利用実績があるという。
奈良県農業研究開発センターの試験では、ビーフライならではの利点も見えてきた。ビーフライの活動温度は10~35度とミツバチに比べて広く、厳寒期にミツバチが飛びにくい時期でも使える。
12年度から行った試験では、無加温のハウスにイチゴ10品種を混植。7日間隔で1アール当たり300個のビーフライのさなぎを置いたところ、ミツバチと比べて12~4月に収穫した果実の重量に品種による差はなかった。
一部の品種ではビーフライの授粉で、奇形果の発生がミツバチよりも少なかった。センターの東井君枝指導研究員は「県内は3アールほどの単棟ハウスが多く、ミツバチの巣箱を一つ入れると花の数が足りず、開花前に潜り込むことで奇形果が出ることがある」とみる。
人刺さず安心
試験導入した農家からは問題点は挙がっておらず、逆に蜂のように人を刺さないためイチゴ狩りなど観光農園で利用を期待する声もあるという。
10日に1度の補充が必要なためミツバチよりコストはかかるが、3アール程度のハウスであれば蜂と同等のコストで利用できそうだ。東井指導研究員は「治療用マゴットを国内で供給できるようになるまで、海外から購入していたと聞いた。イチゴでの利用が増えることで需要が安定し、医療向けの生産と共存しながら発展していければ」と望む。
現在は同社と同大学、同センターの他、島根県や農研機構・西日本農業研究センターが協力し、利用マニュアルの作成などに取り組んでいる。
吉田教授は「厳寒期はビーフライを使い、ミツバチの消耗を避けることにより、ミツバチの過剰な消費を抑えられるのではないか」と、補完的な活用を視野に入れる。
<ことば> ヒロズキンバエ
キンバエの一種で日本国内にも生息する。野外に出ても生態系に問題は起こらないという。ハウス内では餌となる動物性タンパク質がないことなどから、羽化して10日程度で死んでしまうとみられる。
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改正畜安法の難題 生乳需給乱れ所得減も
畜産経営安定法(畜安法)改正案の国会審議が大詰めを迎えた。規制改革論議から端を発した改正だけに、いまだに何のための改革なのかが問われる。問題は、指定生乳生産者団体が担ってきた一元集荷多元販売という根幹が大きく揺らぎ、果たして生乳需給調整ができるかだ。飲用向けに傾斜して需給混乱を招けば、酪農家の所得拡大どころか減収となる。国は明確に需給調整に責任を持つべきだ。
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改正畜安法をテーマに先日、研究者や酪農団体らによるシンポジウムがあった。この中でも専門家から「指定団体の機能低下につながる」「酪農家の所得増大どころか逆に減収となりかねない」などの指摘が相次ぎ、問題点が浮き彫りになった。講演者の一人、東大大学院の鈴木宣弘教授は「半世紀ぶりの制度改革。まずは国の審議会を開き、広く関係者の意見を聞くべきではないか」と問題提起した。日本農業新聞も早急に食料・農業・農村政策審議会畜産部会で議論を深化すべきと主張してきた。同省は応じるべきだ。
衆院であまり議論が深まらなかった大きな理由は、改正案の中身に加え、実際の運用などを規定する政省令が明らかになっていないためだ。「今後、政省令で懸念のないようにしたい」とされても納得できないのは当然だろう。関係者からは「後出しじゃんけんと同じだ」との声も漏れる。同省は関係者と調整の上、秋までに政省令を固める方針だ。制度改正での「いいとこ取り」や指定団体以外との「二股出荷」はどうなるのか。生産現場の不安は拭えない。
焦点の一つは、制度改革の本来の目的だった酪農家の所得向上との関係だ。先の衆院農水委員会の参考人招致では、改正法の導く制度機能に積極的な肯定意見はなかったと言っていい。日大の小林信一教授は「残念ながら不安定化法ではないか。指定団体の一元集荷多元販売を崩すことが大きな問題だ」と根本的な疑念を表明。“規制改革派”の山下一仁氏ですら「所得向上にほとんど寄与しない」とした。山本有二農相は所得向上に関連し、「生産者の生乳仕向け先の選択肢が広がる」などと応じたが、恩恵は一部の酪農家にとどまるとの見方が強い。
問題は、日々変わる用途別対応と全体の生乳需給を確実に担保できるかだ。衆院農水委では採決と同時に10本もの付帯決議をした。それだけ強い懸念があるのだ。生乳需給では販売計画ばかりでなく、国が前面に出る対応を明記すべきではないか。
2017年06月05日
農薬散布用 水田でドローン実演 1ヘクタール10分で処理 宮城県大崎市
世界最大のドローン(小型無人飛行機)メーカー、DJI製の農薬散布用ドローン「AGRAS(アグラス)MG―1」の実演会を1日、宮城県内の資材販売業者とドローン関連企業が大崎市田尻沼部の水田で開いた。1ヘクタールを10分で処理できる効率の高さに加え、切り返し時の姿勢安定や高度を自動で保つ機能などを披露した。
「MG―1」は10リットルの薬剤タンクを搭載。1回10分の飛行で1ヘクタールの散布ができる。
実演会ではドローンの販売や操作教習などを手掛ける仙台市の企業、空むすびの杉山健一社長が機体を操作。田植えが終わったばかりの水田で、農薬に見立てた水を四つのノズルで高度2メートルから噴霧した。
方向転換時にも機体を水平に保ち、作物からの高度を自動で一定に保つ機能などを披露した。杉山社長は「操作しやすいので、講習を受ければ誰でも簡単に扱える。手作業での散布に比べて大幅に効率化できる」と強調した。
大崎市の資材販売業者で、「MG―1」を扱うホリマンの堀健太郎社長は「ドローンの機能は年々向上している。導入すれば大幅な省力化が可能」と話した。価格は1機180万円。重さは9・5キロ。機体幅は150センチだが、8枚の羽根やアームを畳むと約半分の大きさになり、手軽に持ち運ぶことができる。
DJIはドローンの世界シェア7割を占める。「MG―1」は中国や韓国、米国で販売されていて、日本国内では3月に販売が始まった。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=P0Ceg4cf4lQ
2017年06月02日
転機10年 牛乳月間 国際記念日と価値訴え
6月は「牛乳月間」である。今回は10年の大きな節目を迎えた。Jミルクは新ロゴマークで心機一転を図る。1日の「牛乳の日」には、国連食糧農業機関(FAO)が同日に設けている「ワールド・ミルク・デー」という世界的記念日を前面に押し出し、イベントを開いた。浸透してきた「乳和食」や健康志向で追い風が吹く牛乳の効能、機能性を業界挙げてもっとアピールしたい。
酪農を取り巻く環境は急変している。生産基盤弱体化に歯止めがかからない。現行制度の抜本見直しに向け、畜産経営安定法改正案の国会審議など酪農・乳業界が大揺れのさなかである。牛乳月間を機会に、国内酪農の大切さを内外にアピールするため知恵を絞るべきだ。
まずは国民的な共感を強めたい。中央酪農会議は東京・六本木で5月下旬、1日限定の「六本木牧場」を開き、メディアなどでも取り上げられた。ゲストで登壇した女子レスリング・吉田沙保里さんは「牛乳は大好きで毎日1リットル飲む」と、丈夫な体作りの原点に牛乳の存在感を語った。こうした話題づくりと酪農の果たす役割を組み合わせ、分かりやすく国民に訴える取り組みをさらに強めるべきだ。
FAOが2001年、6月1日を「ワールド・ミルク・デー」に提唱したことに始まる。これを受け、Jミルクが07年に同じ6月1日を「牛乳の日」、6月の食育月間と連動して同月の1カ月間を牛乳月間とし、さまざまな催しを進めてきた。
だが「牛乳の日」は、いまひとつ、認知度が低い。Jミルクによると、6月だけでも食に関連した記念日は延べ130日以上もある。スーパーによる「牛乳の日=特売日」などの誤解もあり、他記念日との差別化が問われていた。
今回からは、世界的記念日を前面に押し出し、他の記念日との違いを訴えている。見直しの視点の一つは、栄養と健康の価値を一段と情報発信することだ。減塩で高血圧対策も兼ねる「乳和食」を広げる。「牛乳の日」には東京都内で日本乳業協会が「おいしいミルクセミナー」を開き、牛乳の効能を内外にアピールした。今後、夏場を迎える中で、熱中症予防を含めて「運動直後に牛乳」を合言葉に牛乳月間を盛り上げていく。
ヨーグルトなど液状乳製品の国産需要拡大は、貿易自由化が加速する中で今後の酪農生産基盤を維持する礎を築くだろう。酪農家支援にも力を入れる大手乳業・雪印メグミルクは、26年までの今後10年間の長期ビジョンで「ミルク未来創造企業」を掲げた。確かに牛乳には健康をキーワードに大きな潜在力と未来があるはずだ。
2017年06月02日
[若者力] ゆず部会 三役30代 移住、農家以外から就農・・・ 産地再生託す JA高知はた三原支所
高知県三原村のJA高知はた三原支所ゆず部会は、部長、副部長、監事の部会三役を農外就農の30代の若手に任せ、産地改革に乗り出した。歴代、部会のかじ取り役はベテラン農家が担ってきたが、昨年4月に一新。若者の新しい発想に託した。村外から移住する新規就農者も呼び込みやすくなり、インターネット交流サイト(SNS)などへの情報発信力が強まり、過疎化が進む産地の立て直しを進める。
未来志向の提案SNS発信強化
部長のバトンを受け取ったのは、大阪市出身の岩崎篤志さん(38)。ともに同村出身で農家以外から就農した杉本勇平さん(35)が副部長に、田渕正悟さん(31)は監事に就任し、若者たちが部会をけん引する。
「フェイスブックで花の開花状況を発信するね」「剪定(せんてい)の講習会を開こうか」。JA三原支所に集まった若い農家の会話は、未来志向の提案が飛び交う。ひょうきんな杉本さんがジョークを飛ばし、笑い声が絶えない。
人口1600人、高知市中心部から車で3時間以上かかる同村。高齢になった農家らが、かつて米に代わる新たな収入源としてユズを導入した。部会は1999年に発足した。
だが、ライバル産地の台頭や単価の低迷、農家の高齢化や離農・・・。部会発足時には面積100ヘクタールを掲げ、産地拡大を続けてきたが、現実は50ヘクタール、部会員35人。実現は遠い状況だ。夢が途絶えそうな時だった。
危機感から、ベテラン農家らが本気で話し合いを重ねた。「年寄りだけだと、駄目だと分かっていても昔の話をして前に進めない。若者にわしらの夢の続きをかなえてほしいと思った」と農家の矢野勝三さん(76)。
若い人に託そう――。そんな雰囲気が少しずつ芽生えてきた。JAの営農担当者は「新米部長が意見を言いやすいよう、若い農家で役員を固める。部会全員の意見で決めた」と明かす。
役員が若返った昨年から、部会は“改革”を次々仕掛ける。昨年、選果場を新設したのを契機に出荷体制を刷新。出荷の時間や選果員の配置など自動選果にする上でのルールを新たに作った他、視察に行けば、学んだ技術を部会で共有する。
SNSをフル活用し、外部に向けた発信に力を入れる。部長の岩崎さんの妻で同村出身の浩子さん(38)の発案で、4月から部会のフェイスブックを立ち上げ、産地の様子を紹介。SNSでつながった都会のシェフを招いた料理教室やレストランも企画した。
部会は、農業公社、役場と連携して移住者を受け入れ、担い手に育てる仕組みも今年から本格始動させた。住民から公社が園地を借り受けユズを栽培し、新規就農者がそのユズを引き継いで栽培することで、初期投資なく参入できる。部会の若者は、移住者と年齢が近く、より親身に積極的に相談に乗っている。
京都市から移住した新規就農者の岡村優良さん(27)は「若い先輩が活躍していて都会よりエネルギーがある。同年代で相談しやすかった」と感謝する。現在も、3人の若者が将来の担い手を目指し研修中だ。
選果場を新設したことで、昨年の販売高は3600万円と前年比1・5倍になった。産地の武器は、規模は小さくても若い農家が複数人いて、地域をけん引していること。「派手な取り組みはしていないけれど、笑顔が増えたのが成果。目の前の課題を解決する一歩を大切にし、新規就農者を増やしたい」。ニューリーダーの岩崎さんが新たな目標を見据える。(キャンペーン取材班)
JC総研 和泉真理客員研究員の話
部会三役を農外就農の若者に任せる事例は、全国的にも珍しい。若者に部会運営を任せることは非常に意義がある。住民の危機感が背景にあり、若者を育てようと地域が合意したのだろう。負担を押し付けるのではなく、実権まで与え若者力を育むことが鍵となる。
2017年06月02日
ローズポークのっけみそ JA茨城むつみ
JA茨城むつみが、JA農産物直売所「わだい万菜」で販売する県銘柄豚「ローズポーク」を使って開発した肉みそ。少し濃いめの味付けで、ご飯をはじめ焼き肉やサラダ、豆腐など幅広い料理に合う。
「ローズポーク」は、直売所の人気商品の一つ。肉みそは、JA農産物直売課がお手頃価格で販売するため1頭単位で仕入れる「ローズポーク」の全部位を活用しようと開発。ひき肉を中心に、タマネギやこんにゃくを使って絶妙な味に仕上げた。
1個(100グラム)350円、化粧箱(3個入り)は1050円。「わだい万菜」の道の駅ごか店と総和店で販売。問い合わせはごか店、(電)0280(84)1089。
2017年06月05日
経済の新着記事
豆腐業界 初の定義 大豆10%以上「とうふ」 「品質」明確に安売りを防止
豆腐の定義作りに業界が乗り出した。これまで定義が曖昧だったため、大豆の使用割合が多いこだわり製品と、安値になりがちな汎用(はんよう)品とが、同じくくりで販売されていた。品質に応じた製品表示で不当廉売を防ぎ、製造業者や原材料の供給元となる農家が適正な利益を得られるようにする。納豆業界も製品の定義や区分の策定に動き、国内外で規格認証の取得を目指していく。
豆腐業界の定義作りは、製品表示に関する規約策定の中で進めている。主導するのは、豆腐事業者の全国団体でつくる豆腐公正競争規約設定委員会。「豆腐の定義や表示方法が不明確だったことが、不当廉売の要因だった」と対応に動いた。
定義では、豆腐に含まれる大豆の割合「大豆固形分」を基準に、10%以上を「とうふ」、8%以上を「調製とうふ」、6%以上を「加工とうふ」と大まかに分類する。6%に満たないものや、卵を主原料とするたまご豆腐などは除外する。
加工状態や硬さに応じて「木綿」「ソフト木綿」「絹ごし」「充てん絹ごし」「寄せ(おぼろ)」と五つの中分類も設ける。「最高級」「天然」「純粋」など、根拠が定かでない表示を禁止し、添加物もさらに詳細な表示を義務付ける方針だ。
豆腐を固形分の割合で定義し、表示するのは初めての試み。乳脂肪分を基準に分類するアイスクリームなどを参考にしたという。「大豆や凝固剤をどのくらい使っているかが分かり、仕入れ側や消費者が製品を選べるようになる。汎用品や高級品のすみ分けも進む」と委員会に参加する豆腐メーカー・さとの雪食品の村尾誠常務は強調する。
同委では、来年初めの消費者庁への認定申請に向け、事業者に説明を進めている。公正取引委員会での審査などを経て、2019年3月末の認定・告示を目指す。
納豆でも検討
納豆製造業者でつくる全国納豆協同組合連合会(納豆連)も、今夏から納豆の定義区分に乗り出す。「海外で認知が進み、日本の納豆とは懸け離れた廉価で品質の不確かな外国製品も増えてきた。海外で日本産納豆の消費を伸ばすためにも、明確に区別できる基準が必要となってきた」と納豆連の松永進専務は話す。現在は「大粒」「小粒」といった粒種や成分、製造工程などを中心に、納豆の要件についての検討を進めている。
今後は、19年をめどに食品国際基準であるコーデックスと、国内の改正JAS法での認証を目指す。今月中にも専門の検討部会を設置し、詳細の検討を始める予定だ。(岡下貴寛)
2017年06月05日
朝食はパンよりご飯 支持じわり 農林中金が高校生調査
高校生の朝食は「パン」より「ご飯」――。農林中央金庫の調査によると、東京近郊に住む高校生が普段食べている朝食はご飯が最も多く、パンを押さえて初めてトップに躍り出た。男子生徒を中心にご飯が支持を集めた。一方、昼食は自宅から学校に持っていく「弁当派」が多数を占めた。
高校生を対象に食生活の調査を実施するのは2006年、12年に続いて3回目。東京や埼玉、千葉、神奈川の4都県に住む400人から回答を得た。
普段朝ご飯に食べているものを複数回答で聞いたところ、ご飯と回答した人は71%で最も多かった。過去の調査結果と比較すると、前々回が51%、前回が67%だった。徐々に支持を広げている。これまで最も人気のあったパンは、前回を3ポイント下回る70%となった。「卵料理」が50%、「牛乳・ヨーグルト」が46%と続いた。
男女別で見ると、ご飯への支持率は男子が高い。男子でご飯を選んだのは74%でパン(67%)を上回ったのに対し、女子はご飯(68%)よりもパン(73%)が多かった。
また、学校での昼食は「弁当を親に作ってもらう」が91%と圧倒的に多かった。「コンビニなど校外の店で買う」(27%)や「学校の売店で買う」(24%)は2割台にとどまった。農林中金は「食育活動などを通じて、食の安全・安心への意識が高まっているのではないか」とみる。
2017年06月05日
日本米美味 中国魅了 3割安 若者に狙い 上海に専門店
日本の商社が中国でオープンさせた、日本米の専門店の滑り出しが上々だ。中間業者を省き流通コストを抑えることで、従来より3割安く販売することに成功。ふりかけや箸なども販売し、日本の米文化を丸ごと発信する。米を使ったジェラートは若い客層の人気も集めており、日本産米の発信基地として、期待が高まっている。
店名は「瀛之粮品」で、東京都中央区の板橋貿易が5月上旬、上海・田子坊に開店した。田子坊地区は「上海の原宿」と称され、しゃれたこだわりの店も多く、特に若者に人気がある。「発信力に期待して、この地区を選んだ」(同社)という。農水省によると、中国で日本産米の専門店は珍しい。
JA全農が扱う北海道産「ななつぼし」や石川、三重産「コシヒカリ」、山形産「はえぬき」を1袋(2キロ)99~128元(約1600~2000円)で販売する。多い日は20袋が売れるという。
同社が中国国内のスーパーで販売する価格と比べると、3割以上安い。中間業者を省いて値下げにつなげた。購買者の裾野を広げたい考えだ。中国全土への配送サービスを行っており、購入した客は手ぶらで帰ることができる。品質をアピールできるよう、店では試食も行っている。
米の年間消費量は、日本が約800万トンであるのに対して、中国は約1億5000万トンと桁違いだ。輸入量も年間約500万トンに上るなど、巨大市場として潜在的な需要が見込める。
ただ、中国側は米で厳しい検疫条件を課し、日本の輸出可能な指定精米工場などを制限。2016年の輸出実績は375トン(1億6300万円)にとどまり、情報発信の強化と併せて、輸出ルートの整備・拡大も課題になっている。
2017年06月04日
“海なし県”埼玉発 野菜すし登場 魚介使わず県産で勝負 レシピ公開・普及 菜食主義者訪日客に的
埼玉県のすし店30店舗が、魚介類を一切使わず県産農産物だけで作る「野菜すし」の提供を始め、注目を集めている。2019年のラグビーワールドカップ(W杯)や20年の東京五輪・パラリンピックをにらみ、急増する訪日外国人客やベジタリアン、健康志向の人向けに、県内のすし店でつくる県鮨(すし)商生活衛生同業組合が3年かけて考案。県内のすし職人向けにレシピ本を作成、5月から提供を始めた。将来的には店舗数を増やし、江戸前ならぬ“埼玉前”の普及を目指す。
県鮨商組合が考案
赤や黄色のパプリカを使い、上に甘めのしょうゆだれを付けた握りずしや、刻んだトマトを酢飯の上に載せ、バルサミコ酢を掛け、のりの代わりにズッキーニで周囲を巻いた軍艦巻き――。野菜だけを使った「野菜すし」は40種類に上る。
滑り出し好調
同組合の理事長を務める関根利明さん(60)が組合のメンバーと開発した。関根さんが経営するさいたま市北区のすし店「山水」でも5月から提供を始めたところ、1カ月足らずで200人が注文した。同店には、問い合わせの電話が相次ぐ。
関根さんによると、生魚を食べられない人は焼き魚や卵焼きなどを探すことが多かったが、「野菜すしなら食べられると言ってくれる」と来店者の反応の良さに喜ぶ。
こだわった点は「野菜本来の味やシャキシャキとした食感をどう残すか」。さっとゆでたり、レモン汁であえるなど作業工程を工夫した。ソースにもバジルなど農産物を利用。酢飯やしょうゆだれは、「野菜によく合う」と関根さんは話す。
有数の生産地
関根さんは3年前から、海のない同県のすし店として「海産物ばかりのすしは面白くない」と、メニュー作りを模索し始めた。同県は野菜の産出額で全国7位(15年)という野菜の一大生産地であることを知り、「野菜すし」のアイデアを温めてきた。
特に19年のラグビーW杯、20年の東京五輪を意識し、「外国人観光客や生魚が苦手なベジタリアン、健康志向の人に食べてもらえるすし」(関根さん)を考え、メニューの改良を重ねてきた。
組合は、県内120の加盟店にレシピ本や、季節ごとの野菜を使ったメニュー表などを送った。今後は県内各地で開催する職人向けの研修会などで、レシピ本を使った「野菜すし」の作り方などを実演するなど、普及を進めていく。
関根さんは「将来的には県内80のすし店で提供してもらえるようにしたい。また、職人のアイデアで新たな野菜を使うメニューも充実させ、埼玉発の野菜すしを発展させたい」と展望する。
全国すし商生活衛生同業組合連合会の若竹敦史事務局長によると、地元で取れた海産物を使ったり地域の漬物を利用したりと、地場産にこだわったすしはこれまでも存在したが、全てが県産野菜というのは「初めて」という。「県産食材で地元を盛り上げようという埼玉の組合の姿勢は素晴らしい。ぜひ応援したい」と強調する。(中村元則)
2017年06月02日
ジビエ学ぶ動画公開 全35本「広く活用を」 ネット講座 振興協会
日本ジビエ振興協会は30日、野生鳥獣の肉(ジビエ)について幅広く学べるインターネット講座を公開した。野生鳥獣の捕獲から精肉加工、販売までのノウハウを専門家が指導する内容で、10分程度の動画を35本用意。空いている時間に、手軽に閲覧して学習できる。8月末までに申し込めば無料となる。狩猟者らジビエに関わる人の利用を広く呼び掛けている。
政府が今月まとめた、ジビエの利用拡大に関する対応方針の一つ。講座は「ジビエビジネス入門」と題し、内閣府の補助事業で設けた。さまざまなネット講座を紹介するポータルサイト「地方創生カレッジ」で申し込む。ジビエの品質向上や安定供給に向け、狩猟者らの育成につなげる。
東京国際大学商学部の伊藤匡美教授が講師となり、①ジビエ流通の条件と課題②解体処理・加工・流通のポイント③生産・販売を軌道に乗せた優良事例④ジビエビジネスの展開――の四つのテーマに沿って解説する。動画は計35回あり、テーマ別に公開して小テストを行い、合格すると別のテーマの新たな動画が閲覧できるようになる仕組みだ。自民党ジビエ議連の石破茂会長も登場し、ジビエの利用拡大への思いを語るという。
動画は1本当たり10~20分で、パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレット端末でも閲覧できる。一つのテーマ当たり2、3時間で学習できる。最終試験で60点以上とれば、ジビエに精通した証しとして受講者に「修了証」を発行する。同協会は「講座を通じて、狩猟者に捕獲の仕方や衛生管理について再確認してほしい。ジビエを広く知ってもらうきっかけにもしたい」と期待する。
2017年05月31日
イチゴ授粉 期待の助っ人 ミツバチ代わり 有望 医療用ヒロズキンバエ
ミツバチの代わりとしてイチゴの授粉に使えるハエ「ビーフライ」の利用が広がってきた。傷の治療など医療用に幼虫が使われるヒロズキンバエの成虫だ。現状はミツバチよりもコストはかかるが、試験では蜂が飛びにくい低温、低日照でも活動するため奇形果が減る効果も出ている。ミツバチの供給が逼迫(ひっぱく)した際に補完的な働きを期待する声も出てきた。
低温・低日照で活動 厳寒期補完に
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60カ所で利用
ジャパンマゴットカンパニー(岡山市)は、医療用に無菌状態で増やした幼虫を生産・販売。ビーフライはこの技術を応用し、閉鎖環境で衛生的に増やしたさなぎの状態で園芸農家に発送する。ハウス内に入れておけば羽化して訪花する。同社によると、全国約60カ所で利用実績があるという。
奈良県農業研究開発センターの試験では、ビーフライならではの利点も見えてきた。ビーフライの活動温度は10~35度とミツバチに比べて広く、厳寒期にミツバチが飛びにくい時期でも使える。
12年度から行った試験では、無加温のハウスにイチゴ10品種を混植。7日間隔で1アール当たり300個のビーフライのさなぎを置いたところ、ミツバチと比べて12~4月に収穫した果実の重量に品種による差はなかった。
一部の品種ではビーフライの授粉で、奇形果の発生がミツバチよりも少なかった。センターの東井君枝指導研究員は「県内は3アールほどの単棟ハウスが多く、ミツバチの巣箱を一つ入れると花の数が足りず、開花前に潜り込むことで奇形果が出ることがある」とみる。
人刺さず安心
試験導入した農家からは問題点は挙がっておらず、逆に蜂のように人を刺さないためイチゴ狩りなど観光農園で利用を期待する声もあるという。
10日に1度の補充が必要なためミツバチよりコストはかかるが、3アール程度のハウスであれば蜂と同等のコストで利用できそうだ。東井指導研究員は「治療用マゴットを国内で供給できるようになるまで、海外から購入していたと聞いた。イチゴでの利用が増えることで需要が安定し、医療向けの生産と共存しながら発展していければ」と望む。
現在は同社と同大学、同センターの他、島根県や農研機構・西日本農業研究センターが協力し、利用マニュアルの作成などに取り組んでいる。
吉田教授は「厳寒期はビーフライを使い、ミツバチの消耗を避けることにより、ミツバチの過剰な消費を抑えられるのではないか」と、補完的な活用を視野に入れる。
<ことば> ヒロズキンバエ
キンバエの一種で日本国内にも生息する。野外に出ても生態系に問題は起こらないという。ハウス内では餌となる動物性タンパク質がないことなどから、羽化して10日程度で死んでしまうとみられる。
2017年05月30日
「冷やし」「洋風」・・・ 変わり種みそ汁続々 女性や若者に支持拡大 メーカー、外食
「冷やし」や「洋風」など、みそ汁の変わり種商品が増えている。メーカーが従来になかった飲み方を提案し、女性や若者に支持を広げている。みそ消費のてこ入れに期待が高まる中で、専門店を展開する外食事業者も出てきた。
飲料大手の伊藤園は冷やして味わう缶入り飲料「冷やしみそ汁」(185グラム・希望小売価格130円)を4月から売り出した。麦みそを加えた独自ブレンドみそに、いりこやさば節を加えて飲みやすく仕上げた。具材のナメコの食感も楽しめる。
同社は「おしるこなど従来温めて楽しむ食品で、“冷やし”うたって受けている商品が増えてきた」と着想。小腹を満たせる商品として、社会人や学生をターゲットにする。
大手みそメーカーのマルコメは、即席みそ汁の新商品「パンと合うみそスープ」(170円)を3月上旬に発売した。ベースはトマトの酸味を利かせた西洋スープのミネストローネ風で、具材はズッキーニやキャベツを用いている。
同社は「栄養バランスの良い和食を取りたいと思いながらも、手軽なパン派が増えている」として、ハンバーガーチェーンのフレッシュネスと共同開発した。全国のコンビニエンスストアなどで販売。サンドイッチや味の濃い総菜パンとの相性が良く、好評という。
みそ汁人気の高まりから、専門店も登場する。2月、横浜市に開業した和食ビュッフェ「MISOY(ミソイ)」は、シジミやアサリなどの定番に加え、オクラやサツマイモといった青果系、パクチー(コリアンダー)を入れたアジア風など、約10種のみそ汁を提供する。素材のみそは長野、京都、九州から取り寄せている。
女性客を中心に利用を広げ、1日50杯以上出るメニューもある。同店は「2019年にフランチャイズ展開をしていく」と話す。
2017年05月30日
カレー、スイーツ、カクテル・・・ 豆腐の楽しみ方提案 東京・銀座に美のビアガーデン
豆腐の新しい楽しみ方を提案するイベントが、東京都中央区の百貨店、松屋銀座で始まった。料理やスイーツ、カクテルなど豆腐をふんだんに使ったコースメニューを提供する。豆腐メーカーが「消費の伸びしろが見込める若い人に、豆腐の魅力を伝えたい」と素材供給で協力し、実現した。
「美しくなるビアガーデン」と銘打つイベントで、主役はビールでなく豆腐だ。松屋銀座は「健康意識の高い女性の支持を獲得しようと、ヘルシー食品に注目した」と狙いを話す。
看板メニューの豆腐フルコース料理(飲み放題付き、5500円)は、豆腐のグリーンカレー、エスニック風豆腐ステーキなど、豆腐をたっぷり使用。豆腐のかき氷やカクテルなど珍しいサイドメニューも充実する。
素材の供給で協力するのは豆腐メーカーの相模屋食料(前橋市)。消費が伸び悩む中、販路拡大で若者をターゲットにしたイベントに着目。自社で手掛けるスイーツ風の「ナチュラルとうふ」や、ドリンク感覚で食用できる「のむとうふ」などを供給する。
「おしゃれ、ヘルシーといった豆腐のイメージが広まってきた。女性の感性に合わせた新しい食べ方を提案していく」(同社)と、市場開拓に意欲的だ。
ビアガーデンは10月9日まで。
2017年05月28日
国内外で市場開拓 秋にもノングルテン認証 日本米粉協会設立
米粉の需要拡大に向け、農業団体や製粉業、消費者団体、料理研究家ら一体で「日本米粉協会」を25日に設立した。用途別に米粉を区分けする新基準を普及させ、米粉製品の開発を後押しする。小麦アレルギーの原因物質のグルテンを含まないことを指す「ノングルテン」を製品に表示する認証制度を秋にも実行に移す。国内外で米粉の市場を開拓し、需要を拡大基調に乗せる“米粉新時代”の創造を目指す。
同日に東京都内で設立総会を開いた。設立準備を進めてきたJA全中や全農、全国穀類工業協同組合、NPO法人・国内産米粉促進ネットワークなどをはじめ、会員には計44の団体・個人が名を連ねた。会長に就いた料理研究家の服部幸應氏は、米粉の年間需要量が近年2万トン程度で停滞しているとして、「この数年で10万トン、できればその倍にしたい」と述べた。
同日に決めた事業計画では、農水省が定めた米粉を菓子、パン、麺の三つの用途に分ける新基準を製粉業やJA、食業界などに普及させるため、全国8カ所で説明会を開くとした。同省は、「ノングルテン」を米粉製品に表示する基準も定めたが、同協会に設けた学識者らによる専門委員会で、基準を満たすと認証する第三者機関の設立準備や認証マークの作成などを進める。秋にも製品へのマークの表示ができるようにする。
「ノングルテン」需要が見込まれる欧州に米粉製品を売り込むため、10月にはフランスやドイツなど4カ国での販売イベントも実施。輸出を実践する国内事業者らによるセミナーも開く。米粉の使用が遅れている麺類に向く米品種の普及に向けた対策も検討する。
設立総会には全中の田波俊明副会長や同省の奥原正明事務次官らも出席した。
2017年05月26日
飲むヨーグルト増産 メーカー 製造ライン拡充 機能性うたい手軽さ人気
乳飲料メーカーが、ヨーグルト飲料の増産に乗り出している。工場の新設や製造ラインの拡充で、生産能力を向上する。健康志向の高まりから機能性をうたった商品を投入し、手軽に飲めることから幅広い世代に支持を広げている。民間の調査会社によると2017年の市場規模は1700億円に達する見込み。各社は増産で拡大する需要を確実に取り込みたい考えだ。
雪印メグミルクは京都府南丹市で新工場の建設を進めており、18年度上期の稼働を目指す。内臓脂肪を減らす効果が期待できる機能性表示食品の「恵megumiガセリ菌SP株ヨーグルト ドリンクタイプ(100グラム)」の製造量を2倍に増やす。
現在は神奈川県の海老名工場だけで生産しているが、需要拡大をにらみ、新工場で西日本向けの生産を補う。
今年1~3月の同商品の売り上げは、前年同期の倍以上に増えた。
同社は「小型ボトルで飲み切れる点が受けている」(広報担当)と分析する。
飲料メーカーの日清ヨークは今月中旬から、埼玉県羽生市の新工場を稼働させた。旧工場を建て替え、生産能力をこれまでより1.5倍に高めた。「十勝のむヨーグルト」などをメインに製造する。同社は「簡便さから今後も市場拡大が見込める」と期待する。
明治ホールディングスは昨年末、埼玉県戸田市の工場のラインを新設し、乳酸菌の働きが強いプロバイオティクスを使ったシリーズ「明治プロビオヨーグルト」の飲料タイプを1割ほど増産に踏み切った。
調査会社の富士経済によると、16年のヨーグルト飲料市場は前年比9%増の1605億円となり、5年前と比べて2.2倍に拡大。17年はさらに6%増えると予測する。
2017年05月23日