1935(昭和10)年の沖縄各地の人々の暮らしを撮影した写真のネガフィルム277カットが朝日新聞大阪本社で4日までに見つかった。大阪朝日新聞の記者が取材で撮影したもので、現在の糸満市糸満や沖縄市古謝、那覇市、宜野湾市、名護市、南城市の久高島の82年前の様子が写されている。(※記事・写真の無断転載・コピー・撮影・スキャン等を固く禁じます)
専門家「本土側の報道意図を探れる」
1930年代の沖縄の写真は人物などの記念撮影や名所旧跡などを写した観光PR用がほとんどで、県内にあった写真の多くも沖縄戦で焼失している。専門家によると、県外の報道機関が撮影した写真は貴重で、100枚単位で見つかるのは極めて珍しいという。
撮影された写真の一部は35年7月の大阪朝日新聞の連載「海洋ニッポン」(全10回)に掲載された。同時に撮影されたとみられる写真のいくつかは同年の雑誌「アサヒグラフ」でも掲載された。
277カットの中には少年たちがサバニに乗っている写真や、漁の様子、水揚げした魚を運ぶ漁師の姿や、農作物などを頭に乗せ売り歩く「カミアキネー」(カミアチネー)の女性の姿が記録されている。他にたいまつの明かりを頼りに農作業をする沖縄市古謝の住民の様子、洞窟の中での帽子作り、セーラー服の女学生が自転車に乗っている写真などもある。
沖縄国際大学の吉浜忍教授(沖縄近現代史)は「貴重な資料だ。今回の写真群からは懐かしさだけでなく、本土側がどんな意図で沖縄を報道しようとしたかを探ることができる」と史料としての価値の高さを指摘した。(「1935沖縄」取材班・堀川幸太郎)