|
|
|
減量手術が糖尿病治療の新たな選択肢に
術後患者の多くで血糖値が改善、薬も不要
2013年01月
米メソジスト病院(ヒューストン)減量・代謝手術部長であるVadim Sherman氏は、「特効薬は手術ではなく生活習慣の改善だが、減量手術はそこに至るのを助ける手段となる」と説明する。 減量手術が血糖管理にも有効であることが最初に報告されたのは50年以上前とされる。当時は手術に伴うリスクが非常に高く、糖尿病治療に応用するのは現実的ではなかったが、技術の向上で手術リスクや合併症が減少し始めると、再び減量手術による血糖管理効果に日が当たるようになった。2003年には「Annals of Surgery」に、Roux-en-Y胃バイパス術を受けた2型糖尿病患者の83%で術後の糖尿病の治癒が認められたという報告が掲載された。糖尿病の治癒とは、経口薬もインスリン治療も不要になったという意味だった。 Sherman氏によると、Roux-en-Y胃バイパス術とは摂取した食べ物を消化するしくみを作り替える手術になる。胃の一部を直接小腸につないで食べ物を送り、胃の残りと十二指腸、小腸上部をバイパスする。食物摂取量が制限される点は他の術式と同じだが、この術式ではさらに消化器系におけるホルモンの作用にも変更を加えることになる。 「食物や栄養が中小腸や後小腸に取り込まれると、グルカゴン様ペプチド-1(GLP1)などの消化管ホルモンが分泌され、脳の満腹中枢に食物摂取の中止を働きかけるが、胃バイパス術後はこの働きかけがより早い段階で起こるようになる。血糖値の低下はほぼすぐ、たいていは患者が退院するより前に起きてくる」とSherman氏。 米国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所(NIDDK)によると、胃バイパス術に伴うリスクは出血多量や血栓、感染など、他の外科手術と同じだ。ただしこれらのリスクは肥満した患者ほど高い。術後は以前のような栄養摂取ができないため、サプリメントの摂取が勧められる。術後の合併症としては腹痛や下痢を伴うダンピング症候群が指摘されている。 また、現時点では糖尿病患者のすべてに胃バイパス術の適応があるわけではない。胃バイパス術が推奨されるのは、ボディ・マス・インデックス(BMI)が40以上の肥満者か、BMI35以上で2型糖尿病や高血圧、心疾患の症状がある患者だ。 1型糖尿病も減量手術の推奨リストには入っていない。米スウェディッシュ医療センター(シアトル)内分泌科医のMichael Williams氏によると、先天性の自己免疫疾患であり、膵ベータ細胞でのインスリン産生ができない1型糖尿病患者については、減量手術による血糖コントロール効果は見込めないためだ。 ただし2型糖尿病については、病歴が比較的短く、血糖管理にインスリン注射が必要でない段階の患者にも有効だという。Williams氏は「減量手術を設定するのは簡単ではなく、多くの準備が必要で、術後も生涯にわたる生活習慣の調整が必要だ。それでも適応のある患者には本当に良い選択肢となる」と述べている。
●原文 http://consumer.healthday.com/Article.asp?AID=669104
[2013年1月4日/HealthDayNews] Copyright© 2013 HealthDay. All rights reserved.
「世界の糖尿病最前線」では米国で配信されている医療関連情報HealthDay Newsの中から糖尿病に関連したニュース記事を厳選し、日本語に翻訳・要約しお届けします。
■最新ニュース |
更新情報
|