糖尿病が手術で治る!?胃のバイパス手術とは?

更新日:2017/02/23 公開日:2015/09/28

糖尿病の治療と検査

糖尿病の治療は、食事療法と運動療法を基本とし、必要に応じて薬物療法が行われることが一般的ですが、新しい選択肢として手術療法の効果も期待されています。ドクター監修のもと、糖尿病治療に有効とされる手術についてご紹介します。

糖尿病の治療は、食事療法と運動療法に加え、必要に応じて薬物療法もあわせることが従来の方法でした。しかし、近年「手術」という新しい選択肢の可能性が示唆されています。糖尿病への効果が報告されている手術にはどのようなものがあるのか、また、どのような人に適用されるのかについて解説します。

糖尿病の治療

糖尿病の治療は、一般的に下記のような方法が用いられます。

食事療法

食事の量・質・バランスに注意し、1日に必要なカロリーや栄養素をきちんと摂取しながら血糖値が上がりすぎるのを防いで、正常な状態に整えていきます。

運動療法

食事から摂取した糖質は体内で分解されてブドウ糖になり、全身に運ばれてエネルギーとして活用されます。しかし、2型糖尿病などでインスリンの働きが弱まっていたり、分泌量が少なかったりすると、血中にブドウ糖が余ってしまいます。

運動をすると筋肉がエネルギーを必要とするので、血中のブドウ糖が使われ、すぐに血糖値を下げることが可能です。また、日常的に運動をすることで筋肉でのブドウ糖の取り込みがよくなり、インスリンの働きが向上して血糖値が上がりにくくなるというメリットもあります。ストレスも血糖値をあげる原因のひとつですが、運動によってストレスの解消ものぞめます。

薬物療法

食事療法と運動療法で思うような効果が得られなかった際に、薬物療法をあわせて行うこともあります。薬物療法には飲み薬による治療とインスリン注射の2つがあり、組み合わせて行うこともあります。

糖尿病への効果が報告されている胃のバイパス手術とは?

糖尿病の治療で行われるのは「胃のバイパス手術」です。これは、胃の大半を切り取って直接小腸につなぐというもの。胃の容量が小さくなることで食事量を減らせると同時に、小腸を短くすることで栄養の吸収を抑えることができます。

本来、この手術は病的な肥満の人が行う減量のための手術でした。しかし、アメリカで胃のバイパス手術を受けた糖尿病患者の容体を検討したところ、60%を超える人が術後6年目には症状が落ち着いたとのことです。また、血糖コントロールも安定していたことから、糖尿病の改善効果も期待されるようになったそうです。

胃のバイパス手術が糖尿病に効果的とされる理由

食後は、小腸内が刺激されることで「GLP-1」という消化管ホルモンが分泌されます。GLP-1には、すい臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促す作用、血糖値を上げる「グルカゴン」というホルモンの分泌を抑制する作用、食欲を抑える作用があります。

バイパス手術を行うことで胃が小さくなると、十分に消化されていない食べ物が小腸に流れ込むため、腸が強く刺激されます。その結果、GLP-1の分泌が大幅に増え、血糖値の低下につながると考えられています。

また、肥満により内臓脂肪が多くなると、大きくなった脂肪細胞からインスリンの効きを悪くする生理活性物質が分泌されます。胃のバイパス手術で肥満が解消されれば、このような問題も解消されるため、インスリンの効きもよくなるとされています。

全ての糖尿病患者に適用されるわけではない

ただし、現在のところ、胃のバイパス手術は全ての糖尿病患者に適用されるわけではありません。対象となるのは、BMI35以上の高度肥満が原因で血糖値がなかなか下がらず、薬物療法をしても十分な効果が得られない人です。

BMI(体格指数)とは肥満度を判定する国際的な基準で、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求めることができます。日本肥満学会では、BMI22を適正体重、BMI25以上を肥満、BMI35以上を高度肥満としています。

また、β細胞が壊れてインスリンを産生できない1型糖尿病患者についても、減量手術をしても血糖コントロールの効果は見込めないため、推奨リストに入っていません。

胃のバイパス手術にリスクはないの?

胃のバイパス手術は外科手術なので、ほかの手術と同様に出血多量や血栓、感染といったリスクをともないます。肥満の患者ほど、こうしたリスクは高くなるといわれています。また、術後の合併症として、腹痛や下痢をともなう「ダンピング症候群」も指摘されています。これは、今までは胃液と混ざって粥状になり、少しずつ腸に移動していた食べ物が、一度に急に腸へ流れ込むようになったことで起こる症状です。

糖尿病の発症には、遺伝的にインスリンの分泌量が少ない体質が影響している場合もあります。手術を受けても体質自体が変わるわけではないので、術後に再び生活習慣が乱れて太ってしまうと、糖尿病が復活する可能性があります。手術をしたからと安心せず、引き続き生活習慣の見直しは必須です。

これらのことを踏まえたうえで、高度肥満で薬物療法をしても血糖値が下がらず、合併症が進行してしまっているような場合は、手術を検討してみるとよいかもしれません。

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