胃下垂とはどのような病気?
更新日:2017/04/22 公開日:2017/04/22
胃の病気の基礎知識
胃下垂は、胃の下部が垂れ下がった状態のことを言います。症状がない場合も多いとされますが、胃の運動機能低下や消化不良にもつながる可能性があります。こちらでは、胃下垂の概要についてドクター監修の記事で解説します。
この記事の監修ドクター
胃下垂とはどのような症状を言うのか、また、胃下垂の改善や予防をはかるには、どのようにしていけばよいのか、解説していきます。
胃下垂とは
胃下垂とは、胃の下部が骨盤内まで垂れ下がった状態のことをいいます。通常、胃は臍(へそ)よりも高いところに位置するとされます。ところが、さまざまな原因によって胃の下部が垂れ下がり、ヤコビー線と呼ばれる骨盤の頂点を結んだ線よりも低いところにまで落ちた状態になることがあります。この状態を胃下垂と呼びます。
胃下垂は、しばしば病名のようにいわれますが、胃の形状を示す用語です。医学的には胃の位置が下がることで問題になることはないとされています。しかし、胃の下部が下がることで中には消化不良などの症状が出る場合があります。その場合には治療の対象とされます。
かつては胃下垂と診断されていた諸症状は、胃アトニーや胃けいれん、慢性胃炎などとともに機能性胃腸症(機能性ディスペプシア、FD)という名称で呼ばれるようになりました。胃がもたれたり、胸焼けがしたりするなど、さまざまな症状は現れているものの、内視鏡などの検査をしても胃の粘膜に炎症や潰瘍などの疾患が認められないような状態が、この機能性胃腸症に該当します。
胃下垂の症状
胃下垂では、一般には無症状のことが多いとされています。胃下垂は胸部のレントゲン検査によってすぐに診断をすることが可能とされますが、症状がない、あるいは、あっても軽度のものが多いため、胃下垂だったことが検査をするまでわからなかったというケースも少なくないようです。胃下垂で症状が現れた場合、主に胃のもたれや腹部の張り、食欲の低下などがみられるほか、めまいや頭痛などの自律神経失調症状が現れることもあります。
胃下垂もふくめた機能性胃腸症としてみた場合には、主な症状として2つの傾向がみられます。ひとつは、食後愁訴症候群と呼ばれる諸症状で、食後に胃もたれ感が起こる、早期に満腹を感じるといった食後の不調を訴えるものです。そして、もうひとつは心窩(しんか)部痛症候群と呼ばれる諸症状で、みぞおちに痛みを感じる、胸焼けがするといった身体の胸部から上腹部にかけての部分に痛みを覚えるものです。
上記のような症状が起こるものの、それらを引き起こす原因となり得る潰瘍や炎症、がんなど器質的な疾患が認められない場合、胃の機能になんらかの不具合が生じている可能性が考えられ、機能性胃腸炎として対処していくことが多いようです。
胃下垂の原因
胃下垂は、痩せ型の女性に多いといわれます。そのことから、痩せているために胃を支える腹部の筋肉や脂肪が少ないこと、腹部の筋力が低下していること、それらによって腹部の緊張が弱まったことが胃下垂の原因ではないかとする考えがあります。また、なんらかの理由で急激に痩せたという場合にも胃下垂になりやすいといわれています。そのほかにも、精神的なストレスや、過労などの肉体的なストレスが影響しているとする説もありますが、胃下垂の確かな原因はまだ定かにはなっていません。
胃下垂の改善法
胃下垂は、胃の形状を示すもので、それ自体は病気とはされません。そのため、症状がない場合には、治療を必要としない、というのが通例のようです。しかし、症状がある場合には、以下の2つの治療が行われることがあります。
薬の服用(薬物療法)
胃下垂で生じている症状に合わせて、胃の運動機能を改善するような薬や、胃酸の分泌を抑える薬などを服用します。胃は心の状態にも影響を受けやすいとされ、精神的なストレスが症状を引き起こすもととなっている場合もあるために、抗不安薬が用いられる場合もあります。また、症状や体質などに応じて漢方薬が処方される場合もあります。
生活習慣(食生活)の改善
薬物療法とともに、生活習慣の改善も、胃下垂の改善には大切とされます。生活習慣の中でも特に、食生活の改善が重視され、食事の内容やタイミングなどを見直し、改善をはかっていきます。
胃下垂は、胃が消化のための活動をしづらい状態になっており、消化に時間がかかってしまったり、十分に消化ができなかったりすることが生じやすくなります。そのため、1回の食事量が増えたり、脂肪分や油分を多く含むものを食べたりすることは、消化にいっそう長い時間がかかってしまうことにつながり、症状を悪化させやすくしてしまいます。暴飲暴食を避け、消化によい食べ物を規則正しく、ゆっくりとよく噛んで食べるように心がけることが大切です。
また、食生活の改善とともに大切なのが、ストレスへの対策です。適度な運動などによりストレス発散をはかるとともに、しっかりと睡眠をとるよう心がけましょう。
胃下垂の予防
胃下垂を予防するためには、日常生活がカギになります。食事については、暴飲暴食を避けるようにしましょう。1度に大量の食事をとることを避け、規則正しいバランスの取れた食生活を送るようにすることが大切です。
また、極度の緊張状態が続いたり、過労や睡眠不足が続いてしまったりすると、それが精神的にも身体的にも大きなストレスとなって、胃にも大きな影響をおよぼしかねません。ストレスを緩和し心身ともにリラックスできるような機会を積極的につくっていきましょう。十分な睡眠をとり、身体も胃も休めることも大切です。日常生活を見直し、胃にもやさしい生活を心がけてください。
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