豆腐業界 初の定義 大豆10%以上「とうふ」 「品質」明確に安売りを防止
2017年06月05日
豆腐の定義作りに業界が乗り出した。これまで定義が曖昧だったため、大豆の使用割合が多いこだわり製品と、安値になりがちな汎用(はんよう)品とが、同じくくりで販売されていた。品質に応じた製品表示で不当廉売を防ぎ、製造業者や原材料の供給元となる農家が適正な利益を得られるようにする。納豆業界も製品の定義や区分の策定に動き、国内外で規格認証の取得を目指していく。
豆腐業界の定義作りは、製品表示に関する規約策定の中で進めている。主導するのは、豆腐事業者の全国団体でつくる豆腐公正競争規約設定委員会。「豆腐の定義や表示方法が不明確だったことが、不当廉売の要因だった」と対応に動いた。
定義では、豆腐に含まれる大豆の割合「大豆固形分」を基準に、10%以上を「とうふ」、8%以上を「調製とうふ」、6%以上を「加工とうふ」と大まかに分類する。6%に満たないものや、卵を主原料とするたまご豆腐などは除外する。
加工状態や硬さに応じて「木綿」「ソフト木綿」「絹ごし」「充てん絹ごし」「寄せ(おぼろ)」と五つの中分類も設ける。「最高級」「天然」「純粋」など、根拠が定かでない表示を禁止し、添加物もさらに詳細な表示を義務付ける方針だ。
豆腐を固形分の割合で定義し、表示するのは初めての試み。乳脂肪分を基準に分類するアイスクリームなどを参考にしたという。「大豆や凝固剤をどのくらい使っているかが分かり、仕入れ側や消費者が製品を選べるようになる。汎用品や高級品のすみ分けも進む」と委員会に参加する豆腐メーカー・さとの雪食品の村尾誠常務は強調する。
同委では、来年初めの消費者庁への認定申請に向け、事業者に説明を進めている。公正取引委員会での審査などを経て、2019年3月末の認定・告示を目指す。
納豆製造業者でつくる全国納豆協同組合連合会(納豆連)も、今夏から納豆の定義区分に乗り出す。「海外で認知が進み、日本の納豆とは懸け離れた廉価で品質の不確かな外国製品も増えてきた。海外で日本産納豆の消費を伸ばすためにも、明確に区別できる基準が必要となってきた」と納豆連の松永進専務は話す。現在は「大粒」「小粒」といった粒種や成分、製造工程などを中心に、納豆の要件についての検討を進めている。
今後は、19年をめどに食品国際基準であるコーデックスと、国内の改正JAS法での認証を目指す。今月中にも専門の検討部会を設置し、詳細の検討を始める予定だ。(岡下貴寛)
豆腐業界の定義作りは、製品表示に関する規約策定の中で進めている。主導するのは、豆腐事業者の全国団体でつくる豆腐公正競争規約設定委員会。「豆腐の定義や表示方法が不明確だったことが、不当廉売の要因だった」と対応に動いた。
定義では、豆腐に含まれる大豆の割合「大豆固形分」を基準に、10%以上を「とうふ」、8%以上を「調製とうふ」、6%以上を「加工とうふ」と大まかに分類する。6%に満たないものや、卵を主原料とするたまご豆腐などは除外する。
加工状態や硬さに応じて「木綿」「ソフト木綿」「絹ごし」「充てん絹ごし」「寄せ(おぼろ)」と五つの中分類も設ける。「最高級」「天然」「純粋」など、根拠が定かでない表示を禁止し、添加物もさらに詳細な表示を義務付ける方針だ。
豆腐を固形分の割合で定義し、表示するのは初めての試み。乳脂肪分を基準に分類するアイスクリームなどを参考にしたという。「大豆や凝固剤をどのくらい使っているかが分かり、仕入れ側や消費者が製品を選べるようになる。汎用品や高級品のすみ分けも進む」と委員会に参加する豆腐メーカー・さとの雪食品の村尾誠常務は強調する。
同委では、来年初めの消費者庁への認定申請に向け、事業者に説明を進めている。公正取引委員会での審査などを経て、2019年3月末の認定・告示を目指す。
納豆でも検討
納豆製造業者でつくる全国納豆協同組合連合会(納豆連)も、今夏から納豆の定義区分に乗り出す。「海外で認知が進み、日本の納豆とは懸け離れた廉価で品質の不確かな外国製品も増えてきた。海外で日本産納豆の消費を伸ばすためにも、明確に区別できる基準が必要となってきた」と納豆連の松永進専務は話す。現在は「大粒」「小粒」といった粒種や成分、製造工程などを中心に、納豆の要件についての検討を進めている。
今後は、19年をめどに食品国際基準であるコーデックスと、国内の改正JAS法での認証を目指す。今月中にも専門の検討部会を設置し、詳細の検討を始める予定だ。(岡下貴寛)
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〈「さなぶり」と酔ひし四文字の農日記〉
〈「さなぶり」と酔ひし四文字の農日記〉。本紙「俳壇」の入選作。選者の八木健さんは「…その夜もきちょうめんに農日記を書く。楽しい宴会を詳述できない。四文字で十分。」と明快。仲間と飲んで食べ、議論していい気分だったろう。充実感に満ちたへろへろの四文字が目に浮かぶ▼早苗饗(さなぶり)は一大事の田植えを終え、家族や親類、地域の人々で労をねぎらううたげ。「さ」は田の神。山から下り(さおり)、田植えを見届けた神が山に上る「早上(さのぼ)り」が転じたとも。ごちそうは多彩で、瀬戸内ではタコを出す所も。タコの足のように苗がよく活着し、分けつが進むように、と▼かつては地域で助け合い、田ごとに順番に手植えした。機械移植の普及で重労働から解放されたが、代表的な「結い」が消え、早苗饗も減った▼本紙「くらし」面で、早上り復活で地域を活性化させる宮崎県高千穂町の事例を紹介した。農家の減少や高齢化で地域行事への参加者が減った。JA、地元企業も後押しし、地域住民ら150人が集まる催しに。7月初めのうたげでは女性部員手作りの「カッポ鶏」を楽しむのだろう▼結いの心は今でも共同作業や集落営農に生きる。地域の暮らしと農業の地盤。収益重視の企業的な経営体に、結いの熱意と早苗饗を待ちわびる心はあるか。
2017年06月03日
イチゴ授粉 期待の助っ人 ミツバチ代わり 有望 医療用ヒロズキンバエ
ミツバチの代わりとしてイチゴの授粉に使えるハエ「ビーフライ」の利用が広がってきた。傷の治療など医療用に幼虫が使われるヒロズキンバエの成虫だ。現状はミツバチよりもコストはかかるが、試験では蜂が飛びにくい低温、低日照でも活動するため奇形果が減る効果も出ている。ミツバチの供給が逼迫(ひっぱく)した際に補完的な働きを期待する声も出てきた。
低温・低日照で活動 厳寒期補完に
ビーフライをイチゴの授粉に使う研究が本格化したのは、2011年ごろから。09年にミツバチが不足し、価格が高騰したことから試験が始まった。岡山大学の吉田裕一教授は「もともとマンゴーでは訪花すると知られていた。イチゴでは花の蜜を吸うために花に行くと分かった」と話す。
ハエといっても、人間の医療用にも使われるものだ。ヒロズキンバエの幼虫(マゴット)は、やけどや糖尿病で壊死(えし)した部分などを治療する「マゴットセラピー」に活用されている。
60カ所で利用
ジャパンマゴットカンパニー(岡山市)は、医療用に無菌状態で増やした幼虫を生産・販売。ビーフライはこの技術を応用し、閉鎖環境で衛生的に増やしたさなぎの状態で園芸農家に発送する。ハウス内に入れておけば羽化して訪花する。同社によると、全国約60カ所で利用実績があるという。
奈良県農業研究開発センターの試験では、ビーフライならではの利点も見えてきた。ビーフライの活動温度は10~35度とミツバチに比べて広く、厳寒期にミツバチが飛びにくい時期でも使える。
12年度から行った試験では、無加温のハウスにイチゴ10品種を混植。7日間隔で1アール当たり300個のビーフライのさなぎを置いたところ、ミツバチと比べて12~4月に収穫した果実の重量に品種による差はなかった。
一部の品種ではビーフライの授粉で、奇形果の発生がミツバチよりも少なかった。センターの東井君枝指導研究員は「県内は3アールほどの単棟ハウスが多く、ミツバチの巣箱を一つ入れると花の数が足りず、開花前に潜り込むことで奇形果が出ることがある」とみる。
人刺さず安心
試験導入した農家からは問題点は挙がっておらず、逆に蜂のように人を刺さないためイチゴ狩りなど観光農園で利用を期待する声もあるという。
10日に1度の補充が必要なためミツバチよりコストはかかるが、3アール程度のハウスであれば蜂と同等のコストで利用できそうだ。東井指導研究員は「治療用マゴットを国内で供給できるようになるまで、海外から購入していたと聞いた。イチゴでの利用が増えることで需要が安定し、医療向けの生産と共存しながら発展していければ」と望む。
現在は同社と同大学、同センターの他、島根県や農研機構・西日本農業研究センターが協力し、利用マニュアルの作成などに取り組んでいる。
吉田教授は「厳寒期はビーフライを使い、ミツバチの消耗を避けることにより、ミツバチの過剰な消費を抑えられるのではないか」と、補完的な活用を視野に入れる。
<ことば> ヒロズキンバエ
キンバエの一種で日本国内にも生息する。野外に出ても生態系に問題は起こらないという。ハウス内では餌となる動物性タンパク質がないことなどから、羽化して10日程度で死んでしまうとみられる。
2017年05月30日
[未来人材] 30歳、重機操り次々と放棄地再生 福島県喜多方市・江川正道さん 野菜作り販路も開拓 環境整え参入迎え入れ
改革をしないと、自分が農業界に入った意味がない――。福島県喜多方市の農業生産法人エガワコントラクター代表の江川正道さん(30)は、古里への思いを胸に、耕作放棄地を畑に再生する。トラクターも入れないような条件不利地も預かり、アスパラガスやソバなど計14ヘクタールで約20品目を生産。農地をよみがえらせ、地域の景観を守る。
畑が点在する同市の山間部。3アールほどの小さな畑も多い。全て元耕作放棄地。江川さんらがチェーンソーで伐採し、重機で石を砕き再生した。
法人は建設会社を営む江川さんの父が、農家の高齢化が進んでいることに危機感を持ち、農地を維持するために2009年に設立。「条件が良ければ誰でも再生できる。重機を持ち整備できる強みを生かし、条件の悪い所を担うのが俺たちの役目だ」。どんな農地も受け入れる。
大学進学で地元を離れた江川さんは、26歳で建設会社を手伝うつもりで帰郷。その時初めて法人の存在を知った。そして、父に言われた。「農業をやってほしい」。戸惑ったが、古里の情景に心が動いた。山あいの畑から見ると、会津盆地に沈む夕日が水田に映り、輝いていた。
「自分を育ててくれた喜多方は、農業で成り立っていることを痛感した。この景色を守りたいと思った」。決意を固めた。
江川さんは今、新たな新規就農モデルの構築を目指す。再生後の畑の地力を上げるため3~5年、同社が農産物を生産し販路を開拓。その販路ごと新規就農者に譲り、同社は新たな耕作放棄地を開拓する計画だ。
「就農の壁は地力と販路。これを解決すれば、意欲ある若者が入る」。江川さんは新たな一歩を踏み出している。(塩崎恵)
2017年06月03日
例年に増して暑い日が続く
例年に増して暑い日が続く。気象庁の3カ月予報によると6~8月の気温は高めで、特に8月は平年を上回る確率がかなり高い見込み。太平洋高気圧の勢力が増し、夏の後半ほど猛暑を覚悟した方がよさそう▼最高気温30度以上の日は「真夏日」。近年は35度以上の「猛暑日」も珍しくないが、「スーパー猛暑(日)」の造語も登場した。テレビの情報番組で今夏の特徴として使われ、ネット上では「37度以上」との素人解説も。気象庁によると「気象用語では猛暑日まで」だが、「ゲリラ豪雨」のように正式に認定される日は近いか。それなら40度以上は「ハイパー猛暑日」▼雨も心配。梅雨のころには西日本中心に雨が多いとの予想で、局所的な集中豪雨が懸念される。梅雨明け後の台風はどうか。7月後半から相次ぎ日本に襲来し、北海道まで農業被害をもたらした昨年の悪夢が思い出される▼しかし、まずは人の体調管理。熱中症の予防に小まめな水分補給が肝心。喉の渇きには清涼飲料水が欲しくなるが、牛乳にも注目したい。厚労省は予防マニュアルで運動直後30分以内の牛乳を勧める。糖質とタンパク質が血液量を増やし、体温の調節能力を高める▼6月は「牛乳月間」。農作業の手休めに牛乳を飲み、夏ばてや熱中症をはね返す体力をつけよう。
2017年06月04日
予約購買率 2年後50% 価格体系の「見える化」も JAおきなわが生産資材低減計画
JAおきなわは、生産資材価格低減のための事業改革方針「生産資材事業リボーンプラン」をまとめた。予約購買率向上や価格の「見える化」など重点的な取り組みについて、具体策や工程表を盛り込んだ。今後、生産資材関連の子会社や資材店舗の集約・再編も検討し、管理コスト削減や事務合理化につなげる方針だ。
予約購買率は、2019年度までに現行の23%から50%に引き上げるとした。生産者代表を交えた購買委員会を設置し、品目選定などについて検討する。推進体制も強化し、メール配信やホームページなども活用する。
価格の「見える化」では、奨励金や割引率も含めた1品目の価格体系を分かりやすく生産者に提示する。定期的に同業他社の価格調査を実施し、低価格での設定を徹底する。注文書も栽培する品目別に作成し、使用方法なども掲載する。
予約購買率向上と生産資材費の「見える化」で、生産者が納得できる価格設定を実現する。
組合宅を訪問する「ふれあい訪問活動」でちらしを配るなど、全職員が一体となって資材価格低減への取り組みを周知していく考えだ。
「リボーンプラン」は、支店や本店各部署の職員らでつくる生産資材価格低減プロジェクトチーム(PT)が議論を重ねてまとめた。
生産資材店舗の約4割が赤字となっている現状を踏まえ、6月には新たに店舗再編ワーキングチームを設置する。地域のニーズに応じて、各地の資材店舗を整理し、広域店舗への機能集約や小規模なサテライト店舗設置などを検討する。
併せて子会社再編ワーキングチームも立ち上げ、生産資材の供給を担う子会社再編の検討にも取り組む。
PTを統括する慶留間照雄常務は「農家・組合員の生産資材価格引き下げに対する切実な思いは、日々耳に入ってきている。この思いと声を原動力に、一円でも安く良質な生産資材を提供するため、聖域なき改革を進める」と意気込む。
2017年05月30日
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豆腐業界の定義作りは、製品表示に関する規約策定の中で進めている。主導するのは、豆腐事業者の全国団体でつくる豆腐公正競争規約設定委員会。「豆腐の定義や表示方法が不明確だったことが、不当廉売の要因だった」と対応に動いた。
定義では、豆腐に含まれる大豆の割合「大豆固形分」を基準に、10%以上を「とうふ」、8%以上を「調製とうふ」、6%以上を「加工とうふ」と大まかに分類する。6%に満たないものや、卵を主原料とするたまご豆腐などは除外する。
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豆腐を固形分の割合で定義し、表示するのは初めての試み。乳脂肪分を基準に分類するアイスクリームなどを参考にしたという。「大豆や凝固剤をどのくらい使っているかが分かり、仕入れ側や消費者が製品を選べるようになる。汎用品や高級品のすみ分けも進む」と委員会に参加する豆腐メーカー・さとの雪食品の村尾誠常務は強調する。
同委では、来年初めの消費者庁への認定申請に向け、事業者に説明を進めている。公正取引委員会での審査などを経て、2019年3月末の認定・告示を目指す。
納豆でも検討
納豆製造業者でつくる全国納豆協同組合連合会(納豆連)も、今夏から納豆の定義区分に乗り出す。「海外で認知が進み、日本の納豆とは懸け離れた廉価で品質の不確かな外国製品も増えてきた。海外で日本産納豆の消費を伸ばすためにも、明確に区別できる基準が必要となってきた」と納豆連の松永進専務は話す。現在は「大粒」「小粒」といった粒種や成分、製造工程などを中心に、納豆の要件についての検討を進めている。
今後は、19年をめどに食品国際基準であるコーデックスと、国内の改正JAS法での認証を目指す。今月中にも専門の検討部会を設置し、詳細の検討を始める予定だ。(岡下貴寛)
2017年06月05日
朝食はパンよりご飯 支持じわり 農林中金が高校生調査
高校生の朝食は「パン」より「ご飯」――。農林中央金庫の調査によると、東京近郊に住む高校生が普段食べている朝食はご飯が最も多く、パンを押さえて初めてトップに躍り出た。男子生徒を中心にご飯が支持を集めた。一方、昼食は自宅から学校に持っていく「弁当派」が多数を占めた。
高校生を対象に食生活の調査を実施するのは2006年、12年に続いて3回目。東京や埼玉、千葉、神奈川の4都県に住む400人から回答を得た。
普段朝ご飯に食べているものを複数回答で聞いたところ、ご飯と回答した人は71%で最も多かった。過去の調査結果と比較すると、前々回が51%、前回が67%だった。徐々に支持を広げている。これまで最も人気のあったパンは、前回を3ポイント下回る70%となった。「卵料理」が50%、「牛乳・ヨーグルト」が46%と続いた。
男女別で見ると、ご飯への支持率は男子が高い。男子でご飯を選んだのは74%でパン(67%)を上回ったのに対し、女子はご飯(68%)よりもパン(73%)が多かった。
また、学校での昼食は「弁当を親に作ってもらう」が91%と圧倒的に多かった。「コンビニなど校外の店で買う」(27%)や「学校の売店で買う」(24%)は2割台にとどまった。農林中金は「食育活動などを通じて、食の安全・安心への意識が高まっているのではないか」とみる。
2017年06月05日
日本米美味 中国魅了 3割安 若者に狙い 上海に専門店
日本の商社が中国でオープンさせた、日本米の専門店の滑り出しが上々だ。中間業者を省き流通コストを抑えることで、従来より3割安く販売することに成功。ふりかけや箸なども販売し、日本の米文化を丸ごと発信する。米を使ったジェラートは若い客層の人気も集めており、日本産米の発信基地として、期待が高まっている。
店名は「瀛之粮品」で、東京都中央区の板橋貿易が5月上旬、上海・田子坊に開店した。田子坊地区は「上海の原宿」と称され、しゃれたこだわりの店も多く、特に若者に人気がある。「発信力に期待して、この地区を選んだ」(同社)という。農水省によると、中国で日本産米の専門店は珍しい。
JA全農が扱う北海道産「ななつぼし」や石川、三重産「コシヒカリ」、山形産「はえぬき」を1袋(2キロ)99~128元(約1600~2000円)で販売する。多い日は20袋が売れるという。
同社が中国国内のスーパーで販売する価格と比べると、3割以上安い。中間業者を省いて値下げにつなげた。購買者の裾野を広げたい考えだ。中国全土への配送サービスを行っており、購入した客は手ぶらで帰ることができる。品質をアピールできるよう、店では試食も行っている。
米の年間消費量は、日本が約800万トンであるのに対して、中国は約1億5000万トンと桁違いだ。輸入量も年間約500万トンに上るなど、巨大市場として潜在的な需要が見込める。
ただ、中国側は米で厳しい検疫条件を課し、日本の輸出可能な指定精米工場などを制限。2016年の輸出実績は375トン(1億6300万円)にとどまり、情報発信の強化と併せて、輸出ルートの整備・拡大も課題になっている。
2017年06月04日
“海なし県”埼玉発 野菜すし登場 魚介使わず県産で勝負 レシピ公開・普及 菜食主義者訪日客に的
埼玉県のすし店30店舗が、魚介類を一切使わず県産農産物だけで作る「野菜すし」の提供を始め、注目を集めている。2019年のラグビーワールドカップ(W杯)や20年の東京五輪・パラリンピックをにらみ、急増する訪日外国人客やベジタリアン、健康志向の人向けに、県内のすし店でつくる県鮨(すし)商生活衛生同業組合が3年かけて考案。県内のすし職人向けにレシピ本を作成、5月から提供を始めた。将来的には店舗数を増やし、江戸前ならぬ“埼玉前”の普及を目指す。
県鮨商組合が考案
赤や黄色のパプリカを使い、上に甘めのしょうゆだれを付けた握りずしや、刻んだトマトを酢飯の上に載せ、バルサミコ酢を掛け、のりの代わりにズッキーニで周囲を巻いた軍艦巻き――。野菜だけを使った「野菜すし」は40種類に上る。
滑り出し好調
同組合の理事長を務める関根利明さん(60)が組合のメンバーと開発した。関根さんが経営するさいたま市北区のすし店「山水」でも5月から提供を始めたところ、1カ月足らずで200人が注文した。同店には、問い合わせの電話が相次ぐ。
関根さんによると、生魚を食べられない人は焼き魚や卵焼きなどを探すことが多かったが、「野菜すしなら食べられると言ってくれる」と来店者の反応の良さに喜ぶ。
こだわった点は「野菜本来の味やシャキシャキとした食感をどう残すか」。さっとゆでたり、レモン汁であえるなど作業工程を工夫した。ソースにもバジルなど農産物を利用。酢飯やしょうゆだれは、「野菜によく合う」と関根さんは話す。
有数の生産地
関根さんは3年前から、海のない同県のすし店として「海産物ばかりのすしは面白くない」と、メニュー作りを模索し始めた。同県は野菜の産出額で全国7位(15年)という野菜の一大生産地であることを知り、「野菜すし」のアイデアを温めてきた。
特に19年のラグビーW杯、20年の東京五輪を意識し、「外国人観光客や生魚が苦手なベジタリアン、健康志向の人に食べてもらえるすし」(関根さん)を考え、メニューの改良を重ねてきた。
組合は、県内120の加盟店にレシピ本や、季節ごとの野菜を使ったメニュー表などを送った。今後は県内各地で開催する職人向けの研修会などで、レシピ本を使った「野菜すし」の作り方などを実演するなど、普及を進めていく。
関根さんは「将来的には県内80のすし店で提供してもらえるようにしたい。また、職人のアイデアで新たな野菜を使うメニューも充実させ、埼玉発の野菜すしを発展させたい」と展望する。
全国すし商生活衛生同業組合連合会の若竹敦史事務局長によると、地元で取れた海産物を使ったり地域の漬物を利用したりと、地場産にこだわったすしはこれまでも存在したが、全てが県産野菜というのは「初めて」という。「県産食材で地元を盛り上げようという埼玉の組合の姿勢は素晴らしい。ぜひ応援したい」と強調する。(中村元則)
2017年06月02日
ジビエ学ぶ動画公開 全35本「広く活用を」 ネット講座 振興協会
日本ジビエ振興協会は30日、野生鳥獣の肉(ジビエ)について幅広く学べるインターネット講座を公開した。野生鳥獣の捕獲から精肉加工、販売までのノウハウを専門家が指導する内容で、10分程度の動画を35本用意。空いている時間に、手軽に閲覧して学習できる。8月末までに申し込めば無料となる。狩猟者らジビエに関わる人の利用を広く呼び掛けている。
政府が今月まとめた、ジビエの利用拡大に関する対応方針の一つ。講座は「ジビエビジネス入門」と題し、内閣府の補助事業で設けた。さまざまなネット講座を紹介するポータルサイト「地方創生カレッジ」で申し込む。ジビエの品質向上や安定供給に向け、狩猟者らの育成につなげる。
東京国際大学商学部の伊藤匡美教授が講師となり、①ジビエ流通の条件と課題②解体処理・加工・流通のポイント③生産・販売を軌道に乗せた優良事例④ジビエビジネスの展開――の四つのテーマに沿って解説する。動画は計35回あり、テーマ別に公開して小テストを行い、合格すると別のテーマの新たな動画が閲覧できるようになる仕組みだ。自民党ジビエ議連の石破茂会長も登場し、ジビエの利用拡大への思いを語るという。
動画は1本当たり10~20分で、パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレット端末でも閲覧できる。一つのテーマ当たり2、3時間で学習できる。最終試験で60点以上とれば、ジビエに精通した証しとして受講者に「修了証」を発行する。同協会は「講座を通じて、狩猟者に捕獲の仕方や衛生管理について再確認してほしい。ジビエを広く知ってもらうきっかけにもしたい」と期待する。
2017年05月31日
イチゴ授粉 期待の助っ人 ミツバチ代わり 有望 医療用ヒロズキンバエ
ミツバチの代わりとしてイチゴの授粉に使えるハエ「ビーフライ」の利用が広がってきた。傷の治療など医療用に幼虫が使われるヒロズキンバエの成虫だ。現状はミツバチよりもコストはかかるが、試験では蜂が飛びにくい低温、低日照でも活動するため奇形果が減る効果も出ている。ミツバチの供給が逼迫(ひっぱく)した際に補完的な働きを期待する声も出てきた。
低温・低日照で活動 厳寒期補完に
ビーフライをイチゴの授粉に使う研究が本格化したのは、2011年ごろから。09年にミツバチが不足し、価格が高騰したことから試験が始まった。岡山大学の吉田裕一教授は「もともとマンゴーでは訪花すると知られていた。イチゴでは花の蜜を吸うために花に行くと分かった」と話す。
ハエといっても、人間の医療用にも使われるものだ。ヒロズキンバエの幼虫(マゴット)は、やけどや糖尿病で壊死(えし)した部分などを治療する「マゴットセラピー」に活用されている。
60カ所で利用
ジャパンマゴットカンパニー(岡山市)は、医療用に無菌状態で増やした幼虫を生産・販売。ビーフライはこの技術を応用し、閉鎖環境で衛生的に増やしたさなぎの状態で園芸農家に発送する。ハウス内に入れておけば羽化して訪花する。同社によると、全国約60カ所で利用実績があるという。
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12年度から行った試験では、無加温のハウスにイチゴ10品種を混植。7日間隔で1アール当たり300個のビーフライのさなぎを置いたところ、ミツバチと比べて12~4月に収穫した果実の重量に品種による差はなかった。
一部の品種ではビーフライの授粉で、奇形果の発生がミツバチよりも少なかった。センターの東井君枝指導研究員は「県内は3アールほどの単棟ハウスが多く、ミツバチの巣箱を一つ入れると花の数が足りず、開花前に潜り込むことで奇形果が出ることがある」とみる。
人刺さず安心
試験導入した農家からは問題点は挙がっておらず、逆に蜂のように人を刺さないためイチゴ狩りなど観光農園で利用を期待する声もあるという。
10日に1度の補充が必要なためミツバチよりコストはかかるが、3アール程度のハウスであれば蜂と同等のコストで利用できそうだ。東井指導研究員は「治療用マゴットを国内で供給できるようになるまで、海外から購入していたと聞いた。イチゴでの利用が増えることで需要が安定し、医療向けの生産と共存しながら発展していければ」と望む。
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<ことば> ヒロズキンバエ
キンバエの一種で日本国内にも生息する。野外に出ても生態系に問題は起こらないという。ハウス内では餌となる動物性タンパク質がないことなどから、羽化して10日程度で死んでしまうとみられる。
2017年05月30日
「冷やし」「洋風」・・・ 変わり種みそ汁続々 女性や若者に支持拡大 メーカー、外食
「冷やし」や「洋風」など、みそ汁の変わり種商品が増えている。メーカーが従来になかった飲み方を提案し、女性や若者に支持を広げている。みそ消費のてこ入れに期待が高まる中で、専門店を展開する外食事業者も出てきた。
飲料大手の伊藤園は冷やして味わう缶入り飲料「冷やしみそ汁」(185グラム・希望小売価格130円)を4月から売り出した。麦みそを加えた独自ブレンドみそに、いりこやさば節を加えて飲みやすく仕上げた。具材のナメコの食感も楽しめる。
同社は「おしるこなど従来温めて楽しむ食品で、“冷やし”うたって受けている商品が増えてきた」と着想。小腹を満たせる商品として、社会人や学生をターゲットにする。
大手みそメーカーのマルコメは、即席みそ汁の新商品「パンと合うみそスープ」(170円)を3月上旬に発売した。ベースはトマトの酸味を利かせた西洋スープのミネストローネ風で、具材はズッキーニやキャベツを用いている。
同社は「栄養バランスの良い和食を取りたいと思いながらも、手軽なパン派が増えている」として、ハンバーガーチェーンのフレッシュネスと共同開発した。全国のコンビニエンスストアなどで販売。サンドイッチや味の濃い総菜パンとの相性が良く、好評という。
みそ汁人気の高まりから、専門店も登場する。2月、横浜市に開業した和食ビュッフェ「MISOY(ミソイ)」は、シジミやアサリなどの定番に加え、オクラやサツマイモといった青果系、パクチー(コリアンダー)を入れたアジア風など、約10種のみそ汁を提供する。素材のみそは長野、京都、九州から取り寄せている。
女性客を中心に利用を広げ、1日50杯以上出るメニューもある。同店は「2019年にフランチャイズ展開をしていく」と話す。
2017年05月30日
カレー、スイーツ、カクテル・・・ 豆腐の楽しみ方提案 東京・銀座に美のビアガーデン
豆腐の新しい楽しみ方を提案するイベントが、東京都中央区の百貨店、松屋銀座で始まった。料理やスイーツ、カクテルなど豆腐をふんだんに使ったコースメニューを提供する。豆腐メーカーが「消費の伸びしろが見込める若い人に、豆腐の魅力を伝えたい」と素材供給で協力し、実現した。
「美しくなるビアガーデン」と銘打つイベントで、主役はビールでなく豆腐だ。松屋銀座は「健康意識の高い女性の支持を獲得しようと、ヘルシー食品に注目した」と狙いを話す。
看板メニューの豆腐フルコース料理(飲み放題付き、5500円)は、豆腐のグリーンカレー、エスニック風豆腐ステーキなど、豆腐をたっぷり使用。豆腐のかき氷やカクテルなど珍しいサイドメニューも充実する。
素材の供給で協力するのは豆腐メーカーの相模屋食料(前橋市)。消費が伸び悩む中、販路拡大で若者をターゲットにしたイベントに着目。自社で手掛けるスイーツ風の「ナチュラルとうふ」や、ドリンク感覚で食用できる「のむとうふ」などを供給する。
「おしゃれ、ヘルシーといった豆腐のイメージが広まってきた。女性の感性に合わせた新しい食べ方を提案していく」(同社)と、市場開拓に意欲的だ。
ビアガーデンは10月9日まで。
2017年05月28日
国内外で市場開拓 秋にもノングルテン認証 日本米粉協会設立
米粉の需要拡大に向け、農業団体や製粉業、消費者団体、料理研究家ら一体で「日本米粉協会」を25日に設立した。用途別に米粉を区分けする新基準を普及させ、米粉製品の開発を後押しする。小麦アレルギーの原因物質のグルテンを含まないことを指す「ノングルテン」を製品に表示する認証制度を秋にも実行に移す。国内外で米粉の市場を開拓し、需要を拡大基調に乗せる“米粉新時代”の創造を目指す。
同日に東京都内で設立総会を開いた。設立準備を進めてきたJA全中や全農、全国穀類工業協同組合、NPO法人・国内産米粉促進ネットワークなどをはじめ、会員には計44の団体・個人が名を連ねた。会長に就いた料理研究家の服部幸應氏は、米粉の年間需要量が近年2万トン程度で停滞しているとして、「この数年で10万トン、できればその倍にしたい」と述べた。
同日に決めた事業計画では、農水省が定めた米粉を菓子、パン、麺の三つの用途に分ける新基準を製粉業やJA、食業界などに普及させるため、全国8カ所で説明会を開くとした。同省は、「ノングルテン」を米粉製品に表示する基準も定めたが、同協会に設けた学識者らによる専門委員会で、基準を満たすと認証する第三者機関の設立準備や認証マークの作成などを進める。秋にも製品へのマークの表示ができるようにする。
「ノングルテン」需要が見込まれる欧州に米粉製品を売り込むため、10月にはフランスやドイツなど4カ国での販売イベントも実施。輸出を実践する国内事業者らによるセミナーも開く。米粉の使用が遅れている麺類に向く米品種の普及に向けた対策も検討する。
設立総会には全中の田波俊明副会長や同省の奥原正明事務次官らも出席した。
2017年05月26日
飲むヨーグルト増産 メーカー 製造ライン拡充 機能性うたい手軽さ人気
乳飲料メーカーが、ヨーグルト飲料の増産に乗り出している。工場の新設や製造ラインの拡充で、生産能力を向上する。健康志向の高まりから機能性をうたった商品を投入し、手軽に飲めることから幅広い世代に支持を広げている。民間の調査会社によると2017年の市場規模は1700億円に達する見込み。各社は増産で拡大する需要を確実に取り込みたい考えだ。
雪印メグミルクは京都府南丹市で新工場の建設を進めており、18年度上期の稼働を目指す。内臓脂肪を減らす効果が期待できる機能性表示食品の「恵megumiガセリ菌SP株ヨーグルト ドリンクタイプ(100グラム)」の製造量を2倍に増やす。
現在は神奈川県の海老名工場だけで生産しているが、需要拡大をにらみ、新工場で西日本向けの生産を補う。
今年1~3月の同商品の売り上げは、前年同期の倍以上に増えた。
同社は「小型ボトルで飲み切れる点が受けている」(広報担当)と分析する。
飲料メーカーの日清ヨークは今月中旬から、埼玉県羽生市の新工場を稼働させた。旧工場を建て替え、生産能力をこれまでより1.5倍に高めた。「十勝のむヨーグルト」などをメインに製造する。同社は「簡便さから今後も市場拡大が見込める」と期待する。
明治ホールディングスは昨年末、埼玉県戸田市の工場のラインを新設し、乳酸菌の働きが強いプロバイオティクスを使ったシリーズ「明治プロビオヨーグルト」の飲料タイプを1割ほど増産に踏み切った。
調査会社の富士経済によると、16年のヨーグルト飲料市場は前年比9%増の1605億円となり、5年前と比べて2.2倍に拡大。17年はさらに6%増えると予測する。
2017年05月23日