商標 よくある誤解集
依頼人の皆様と商標に関するお話しをしていると、意外なところで、「知らなかった!!」という言葉を耳にすることがあります。
どうやら、我々弁理士にとっては「当たり前すぎる」ためか、特許事務所や弁理士から依頼人の皆様に、重要事項について十分な説明がなされていないといったケースがあるようです。
そこで、本ページでは、そのような事項をまとめてご紹介いたします。
便宜上、<商標制度編>と<特許事務所依頼編>に分けましたので、お役立ていただけましたら幸いです。
1.日本の商標登録の効果は、日本国内でのみ有効です。
2.商標登録を受ける商標には、新規性や創作性は必要ありません。
3.商標権の効力範囲は、願書に記載した商品やサービスに基づいて定められます。
4.商標登録を受けなくても、商標を使用することは「一応」は可能です(が、お勧めしません)。
5.他人の商標権を侵害した場合、怒られるだけでは済みません。
6.商標調査は100%が保証されるものではありません。
7.商標権は、特許権や意匠権と異なり、「更新」することが可能です。
8.台湾、香港、マカオについては、中国とは別の商標登録が必要です。
<特許事務所依頼編>
1.特許事務所の掲げる「商標調査」は、事務所ごとに調査手法や調査内容が異なることがほとんどです。
商標制度編 -最終更新:2017年1月26日-
1.日本の商標登録の効果は、日本国内でのみ有効です。
外国で安全に商標を使用するためには、原則として、その国でも商標登録を受ける必要がある点に注意が必要です。
日本で特許庁に商標を出願して無事に商標登録を受けると、商標権が発生します。
商標権があれば、その登録商標について自分だけが使用を独占することができ、所定の範囲における他人の使用を禁止することが認められます。
しかし、商標登録のシステムがあるのは日本だけではありません。
日本だけでなく、諸外国でも同様に登録制度が採用されており、その効果は、原則として各国ごとに生じることとなっているのです(属地主義)。
つまり、日本で商標登録を受けた場合、その商標権は日本全国に効力が及ぶものの、外国にまでは及ばないということになります。また、たとえ日本で商標登録を受けている場合であっても、日本以外の国では第三者によって、同じ商標がすでに登録されている可能性があるため、注意が必要です。
すなわち、他人の登録商標の存在を知らずに、その商標を使用した商品を当該国で販売したり、当該国へ日本や他の国から商品を輸入したりすると、商標権の侵害を問われる可能性があるということになります。
このような事態とならないように、日本だけでなく外国でも商標の使用予定がある場合には、事前に当該国において商標調査や商標出願を行なうことが肝要です。
2.商標登録を受ける商標には、新規性や創作性は必要ありません。
商標登録を受けようとする商標については、発明や意匠のように、新規性や進歩性(創作非容易性)は必要ありません。
同じ知的財産である発明や意匠とは異なり、商標は、使用されれば使用されるほど、そこに需要者の信用が蓄積しますので、そのような商標こそ商標登録によって保護する必要が高いからです。
基本的な点ではありますが、発明について特許を受けることを主な業務とされている方々の中には、たまに誤解があるようです。
ある発明について特許を受けたり、ある意匠について意匠登録を受けたりするためには、特許庁の審査において、新規性や進歩性(創作非容易性)が厳しくチェックされます。すなわち、出願された発明や意匠が、第三者に公開・公表されていないことや、それらの創作が容易でないことが、特許や意匠登録が認められるための要件となります。
一方で、商標登録を受けようとする商標も、発明や意匠と同じ知的財産の一種であり、特許庁で審査を受けるものですが、このような要件は課されません。したがって、登録を受けようとする商標がすでに世の中に知られていてもよいですし、その商標を構成する文字や図形が、今までに誰も発想しなかった造語やデザインである必要もありません。
これは、商標は、使用されれば使用されるほど、そこに需要者の信用が蓄積しますので、そのような商標こそ商標登録によって保護する価値があるという、他の知的財産とは異なる性質を有することが理由の一つとして挙げられます。(特許法や意匠法と、商標法の法目的が異なるという点も、もちろんあります。)
ですので、皆様がすでに広く商品やサービスに使用されている商標については、新規性がないために商標登録を受けられないということは全くなく、むしろ早期に商標登録をされた方が良いと言えるものですので、この点十分にご留意ください。
なお、特許庁の審査において商標の新規性や進歩性(創作非容易性)がチェックされないとはいえ、この商標が他人の著作権等の他の権利と抵触するものである場合には、たとえ商標登録を受けたとしても、商標法によりその商標の使用が禁止されます。
3.商標権の効力範囲は、願書に記載した商品やサービスに
基づいて定められます。
商標登録は、商品や役務(サービス)ごとに行われるものであり、商標権もこれに基づいて発生します。
たとえ、登録を受けた商標と同一・類似の商標を第三者が使用していたとしても、その使用の全てに対して商標権の効力が及ぶわけではなく、商品や役務(サービス)の関連性が必要となる点に注意が必要です。
ご存じのとおり、ある商標について商標登録を受けると、商標権が発生します。
商標権は強力な独占排他権ですので、登録商標やこれと類似する商標を使用する第三者に対して、使用の差止めを請求したり、損害賠償請求をしたりすることができます。つまり、自分だけが登録商標の使用を独占できるわけですね。
しかし、注意しなければならないのが、この商標権は、商標登録を受けた商品やサービスに基づいて発生するという点です。すなわち、商標権の効力範囲は、原則として、出願の際に願書に記載した商品・役務(指定商品・指定役務)の一定範囲内に限られます。
たとえば、A社が指定商品を「電子計算機用プログラム」として、商標「シオン」の登録を受けた場合に、関係のないB社が商品「菓子」について、同じ商標「シオン」を使用して販売しているのを見付けたとします。
A社としては、このB社の「シオン」の使用をやめさせたいと考えるかもしれませんが、A社の商標権の効力は、あくまで「電子計算機用プログラム」とそれに類似する一定の商品範囲までに限られ、「菓子」の使用にまでは及ばないのです。
つまり、このようなケースでは、A社がこの商標権に基づいてB社にクレームを行なえば、その使用をやめさせる法的根拠がないどころか、立派な「言いがかり」となってしまいます。
ですので、ある商標について商標登録を受けようとする場合には、出願の際に、願書にどのような指定商品・指定役務を記載するのかが肝となります。
そのためには、「現在において、独占的使用と保護が必要な商品・役務は何か」、「将来的に参入可能性がある商品・役務の分野は何か」、「当面使用予定はないが、業務の関連性から他人に使用をさせたくない商品・役務の分野は何か」等、様々な観点より、戦略的な願書記載の検討が必要となります。
商標登録を受けて安心していると、トラブルが生じた時になって、「権利が欲しい眼目の商品やサービスについて、実は商標権が取れていなかった」、「知らぬ間に他人が眼目の商品・サービスに商標登録を受けてしまった」ことに気付くケースも多々見られます。特に、後者のように至った場合は、その後の自己の使用が他人の商標権の侵害となってしまいますので一大事です。
このような願書への商品・役務の記載は、経験と実績が物を言います。
単に「願書を書くだけ」なら誰にでもできます。上記を考慮した、しっかりとした権利内容とするためにも、経験豊かな商標専門家(商標弁理士)にご依頼されることを強くお勧めいたします。
4.商標登録を受けなくても、商標を使用することは「一応」は
可能です(が、お勧めしません)。
商品やサービスに使用する商標を採択した際に、必ずしもその商標について商標登録を受けなければならないという義務はありません。しかし、商標登録を受ければ、少なくとも他の誰かが保有している商標権を侵害することはないという点を確認できますので、その商標を安心して使用することができます。
ある商標について商標登録を受けるかどうかは、法律上の義務はなく、その商標の使用者の判断となります。ただし、その商標の使用に効力が及ぶ商標権を第三者が有している可能性がある点には、十分に注意しなければなりません。安易に商標の使用を開始して、商標権侵害訴訟などを提起されると、事業に壊滅的なダメージを受けること必至です。
その点、ある程度の費用や時間は要するものの、商標登録を受けておけば、国(特許庁)からその商標を独占的に使用できることの「お墨付き」を得たことになりますので、少なくとも、それと同じ態様で商標を使用する限りでは、第三者の保有する商標権を侵害するということはありません。商標登録を受けることで、使用の安全性も手に入れられるということですね。
また、商標登録を受けずに商標を使用している場合、現時点での商標の使用が第三者の商標権を侵害していなくても、将来的に別の第三者がその商標について出願をし、商標登録を受けてしまうというリスクが考えられます。この場合、たとえその出願より先に商標を使用していたとしても、当該商標が周知・著名に至っているといったような特別な理由がない限り、その第三者の商標権を侵害することになりますので要注意です。
以上のような事情がありますので、末永く使用する商標であればあるほど、商標登録を受けられることをお勧めいたします。商標登録は、「使用を開始した順」ではなく、「特許庁に出願した順」に認められますので、一日も早く出願したほうが得策です。
なお、季節ものの商品など、一定のごく短い期間のみの使用となる場合には、商標登録を受けるまでもないかもしれませんが、この場合でも商標調査を行ない、障害となる他人の商標登録が存在していないことを最低限確認されるのがよろしいでしょう。
起業家・中小企業経営者必見! 知っておきたい商標リスク
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5.他人の商標権を侵害した場合、怒られるだけでは済みません。
商標登録を受けずに商標を使用していると、他人の保有する商標権を侵害するリスクがあります。この場合、注意されたり、怒られたりするだけで済むと楽観的に考えている方をたまに見かけますが、商標権侵害行為には強烈な制裁がなされますので、くれぐれも注意が必要です。
上記「4」のとおり、商標登録を受けなくても、商標を使用すること自体は一応可能ですが、この場合、他人の保有する商標権を侵害するリスクを負うことになります。
このリスクの程度については、一般的に知られていないようで、「注意されたり、怒られたりした後で考えよう」と楽観視している方も、たまに見受けられます。
しかしながら、他人の商標権を侵害した場合には、以下のような強烈な制裁がなされる可能性があるため、くれぐれも注意する必要があります。
(1)民事的制裁
商標権侵害訴訟を提起され、商標の使用の差止請求や、損害賠償請求などを求められるリスクがあります。原則として、「商標権を侵害していることを知らなかった」という言い訳は通用しませんので注意が必要です。
差止請求が認められた場合、現在の商標について使用の中止をする必要があり、商品パッケージ、商品カタログ、ウェブサイト広告等の変更を余儀なくされます。場合によっては、商品自体や関連設備の廃棄もしなければならないこともあるでしょう。これらに必要となる金銭的負担は甚大だと言えます。
また、損害賠償請求が認められた場合には、商標権者に賠償金を支払う必要があります。賠償額については、事件によってケースバイケースですが、数十万円程度で済むケースもあれば、数千万円、数億円と裁判所に認定されたケースも実際にありますので、楽観視はできません。
これらに加えて、訴訟を進めていく上では弁護士費用も必要となりますし、判決が出るまでには早くても1年程度の時間がかかると思われますので、費用面だけでなく、労力や精神的負担も甚大です。
(2)刑事的制裁
商標権侵害行為には刑事罰が科されます。
商標権侵害罪は、「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(法人の場合は、3億円以下の罰金)」とされています。暴行罪が「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」といった具合ですので、かなり重い罪と言うことができるでしょう。
(3)社会的制裁
他人の商標権を侵害した場合、上記(1)や(2)の制裁のように金銭的な負担を負うだけではなく、これらに加えて社会的制裁も受けることになるでしょう。
たとえば、上記(1)の商標権侵害訴訟を起こされたことがテレビや新聞等のメディアで報道されれば、たとえ最終的に商標権侵害が認められなかった場合であっても、世間の印象や企業イメージの低下は免れないでしょう。上記(2)の刑事罰が科されるに至ってしまえば、社会的信用を取り戻すことはほとんど不可能であると言えます。「信用」はお金では買えませんので、この社会的制裁が場合によっては一番ダメージが大きいとも言えるかもしれません。
以上のように、実際に商標権侵害のトラブルに巻き込まれた場合、様々な制裁を受ける可能性があり、その結果、回復不能な深刻なダメージを負うことも考えられます。
このようなリスクを回避するためにも、ご使用になる商標については、しっかり商標登録を受けることをお勧めいたします。
6.商標調査は100%が保証されるものではありません。
皆様からのご依頼をいただき、特許事務所で弁理士が実施する「商標調査」は、その商標の登録可能性や使用可能性について、高い精度で予見するものではありますが、結論が100%保証されるものではありません。あくまでも、皆様の商標戦略を手助けする補助的(ではあるが有効)な情報とお考えください。
まず誤解しないでいただきたいことは、特許事務所で掲げる「商標調査」とは、その特許事務所の弁理士が実施するものであり、実際に商標登録の可否を判断する特許庁の審査官や審判官が行なうものではないという点です。
また、商標調査の内容の中心になるのは、
(1)その商標と同一・類似の先行商標がすでに存在しているか、
(2)その商標が商標として機能し得るか(識別力を有しているか)
という点ですが、
残念ながら、絶対の判断基準というのは存在しておりません。
これらについては、「商標審査基準」という、特許庁で作成された一応の基準は存在しております。しかし、商標には無限のバリエーションがありますので、全てのケースで画一的に適用できるわけではありません。これらの判断においては、時代の変遷や、当業界の具体的な実情といった点についても、考慮する必要があります。
以上のような事情がありますので、商標調査を行なった弁理士と、実際に商標登録の可否を判断する特許庁の審査官や審判官の判断が異なるということも、あり得ることです。
もちろん、弁理士は、過去の審査例、審決例や裁判例、審査・審判の最近の動向を踏まえた上で、特許庁や裁判所でどのような判断がされるであろうかといった点を予測・分析し、商標調査の結論を出します。したがって、判断が難しいケースであればあるほど商標調査には時間を要しますし、商標調査の質(精度)というのは、これを実施する弁理士の経験や知識に大いに影響されると言えます。
しかしながら、弁理士も、特許庁の審査官や審判官も、個性ある「人」ですから、考え方・感じ方が異なる場合がもちろんあり、経験のあるベテラン弁理士による調査結果が、審査結果と異なる場合もあり得ることになります。商標調査を特許事務所に依頼される際には、このような点につき、予めご理解いただければと存じます。(ただし、依頼した商標調査の結果が「○」という結論だったにもかかわらず、実際の特許庁による審査の結果、最終的に拒絶査定となったというご経験が頻繁にある場合は、担当弁理士の調査能力を疑った方がよいかもしれません。)
なお、このような理由とは別に、商標調査について100%保証できない理由があります。それは、商標調査で用いる商標データベースには、データの更新に1~2か月のタイムラグがあるという点です。
わかりやすく言いますと、たとえば11月1日に商標調査を実施した場合、調査対象となる商標データのうち、9月1日~10月31日までに出願されたものが含まれていない可能性がある、ということです。
つまり、この時点で商標調査を行なって、8月31日までに出願された商標の中には類似する商標がなかったため、調査結果は「○」となったが、実は10月1日に第三者が同じ商標を出願していたという可能性も考えられるのです。この場合、たとえ調査を実施した翌日の11月2日に急いで商標出願をしたとしても、原則として商標登録を受けることはできないということになります。
調査を実施する側の理想としては、毎日のデータ更新を望むものではありますが、特許庁には毎日300~400件もの商標出願がされておりますので、現実的には難しいのでしょう。このようなデータベースの事情に起因するやむを得ない理由もあることを、依頼人の皆様に予めご理解いただければ幸いです。
7.商標権は、特許権や意匠権と異なり、「更新」することが可能です。
知的財産権のうち、特許権や意匠権は、有効期限(存続期間)が定められており、その期間が経過すると原則として消滅します。
一方で、商標権については、「更新」が認められており、所定の期限までに申請手続を行なうことによって、さらに10年間(または5年間)の存続期間を得ることができます。すなわち、更新手続を行なうことで、半永久的に権利を維持することができるということになります。
このような特徴がありますので、登録後の商標管理が非常に重要となります。
なお、更新の際に、登録時に発行された登録証は再発行されませんので、大切に保管しておくようお気を付け下さい。
8.台湾、香港、マカオについては、中国とは別の商標登録が必要です。
商標権は、原則として国ごとに発生するものであり、各国それぞれの商標登録制度が存在しています。したがって、外国で商標の保護を受けたい場合には、その商標について日本で登録を受けるだけでは足りず、当該国においても、あらためて商標登録を受ける必要があります。
そのような事情もあり、グローバル化が進んでいる近年においては、模倣品対策等の観点から、特に中国で商標登録を受けようとする企業が多く見受けられます。
ここで、我々日本人には、中国で商標登録を受ければ、当然に台湾、香港、マカオにおいても効果が及ぶと考えがちですが、これらの地域では中国とは別個独立した商標登録制度がありますので、注意が必要です。(※商標制度の内容も、それぞれ異なります。)
すなわち、これらの地域で商標の保護を受けるためには、それぞれ商標登録を受けることが必要となります。全てをカバーしたい場合、中国、台湾、香港、マカオの4つの商標出願手続を行なわなければなりません。
この点、当然ながら、それぞれ手続方法や審査期間が異なってきますし、その分費用もかかりますので、当初から皆様の事業計画に適した商標戦略を行なっていくことが重要となってくるでしょう。
特許事務所依頼編 -最終更新:2017年1月26日-
1.特許事務所の掲げる「商標調査」は、事務所ごとに
調査手法や調査内容が異なることがほとんどです。
皆様は「商標調査」という言葉をよく耳にするかと思います。商標を取り扱っている特許事務所のウェブサイトでは、必ずと言っていいほど、その重要性が説かれているでしょう。「商標調査無料」を掲げている特許事務所も少なくないようです。
しかしながら、「商標調査」とは、決まった1つの手法があるわけではなく、調査を担当する弁理士の調査方法や知識・経験によって、その内容が変わってくるものです。担当の弁理士によって、調査結果の「結論が異なる」ということも、決して珍しいことではありません。つまり、「商標調査」の質には、担当する弁理士の経験やノウハウが問われることになります。
また、「商標調査」は、「どこまで調査をするか」といったルールや決まりは基本的になく、この調査内容は特許事務所や担当する弁理士の裁量次第となります。
たとえば、ある商標について、
(1)1つのデータベースを用いて、同一商標の存在を調べた場合(5分)も、
(2)1つのデータベースを用いて、類似商標の存在までを調べた場合(1時間)も、
(3)2つのデータベースを用いて、類似商標の存在までを調べた場合(2時間)も、
(4)2つのデータベースを用いて、類似と思われる商標が存在しているか、存在していた場合には過去の審査・審決例において似たような判断事例はあるか、過去に実際の拒絶例はあるか、併存登録例はあるか、その商標がインターネット上で使用されている形跡はあるかを調べた場合(4時間)も、すべて「商標調査」と言われています。
つまり、(1)だけしかやらなくても、(4)までやっても、特許事務所は等しく「商標調査」と言っているのです。特許事務所によって「商標調査」の料金がピンキリなのは、これが理由の一つです。
きちんとした経験のある商標専門弁理士による商標調査の場合、上記の(1)や(2)だけということはまずありません。たとえば、利用するのが特許庁のデータベースだけでは、結果に漏れが生じる可能性があることを経験上わかっているからです。少なくとも、(3)くらいまでは行なうのが普通でしょう。(ただし、特許庁のデータベースだけでも、漏れが生じ得るパターンもカバーした検索手法を用いれば、精度の高い調査は可能です。もっとも、その場合には、当該データベースの「癖」まで熟知している程の経験と知識が必要なのは言うまでもありません。)
皆様が特許事務所に依頼している「商標調査」が、どこまでをその内容としているかについて、依頼時にご確認されることを強くお勧めします。特に、「無料調査」では、通常(3)までは行なっていないと思われます(併用するデータベースは、通常は専門民間企業が有料で提供するものを利用するからです)ので、心配であれば、別途(3)(4)を内容とする調査を依頼したほうがよろしいかと思います。
どの特許事務所に商標調査を依頼しても、調査内容や結果が必ずしも同じとはならないという点に、くれぐれもご留意ください。
※上記の「特許庁のデータベース」とは、正確には「独立行政法人 工業所有権情報・研修館」が提供する「J-PlatPat」を指します。