しばしば勘違いされていることですし、企業が戦略的にその勘違いを狙っている部分もあるのですが、商標登録は「自他商品の識別標識」の独占を認めるものであって「言葉」としての使用自体の独占を認めるものではありません。
例えば、「マリカー」と発言した人を指差して罰金を徴収できるようなものではありません。そうでないとこのコラムを書いた私も、Twitterなどで「マリカー」と発言している人も全員、罰金を支払わないといけませんが、そんなことはありません。
言葉か有名かどうかと、商標として著名かは別問題
ですから、「言葉が有名だから」というのは商標の登録を認めない理由にはなりません。
この点が決め手の1つになったのが、「マリカー」の商標登録に対する任天堂の異議申し立て(異議2016-900309)です。
しかしながら、申立人は、引用商標の略称を表すものとして、「マリカー」の文字が、申立人商品を表すものとして広く知られていると主張するが、その根拠として提出する証拠には、「マリオカート/MARIOKART」のゲームソフトウェアのタイトルとともにその説明文中に表示されたり、個人のブログ中に表示されているのみで、「マリカー」の文字が単独で使用され、申立人商品を表すものとして広く知られていることを認めるに足りる証拠もないことから、「マリカー」についての著名性の程度を推し量ることができない。
(中略)
申立人が提出した証拠のみをもってしては、引用商標を構成する「MARIOKART」及び「マリオカート」の文字が本件商標の登録出願時において申立人商品を表示する商標としてその需要者の間で相当程度知られていることは認め得るとしても、「マリカー」の文字が、申立人商品及び引用商標の略称を表示するものとして、本件商標の登録出願日前より我が国の一般の需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
「マリカー」という言葉自体は有名?
私見ですが一般的に考えられているように「マリカー」という「言葉」自体はゲームファンの間では「マリオカート」の略称として有名だったと考えています。審判官合議体の判断をよく読むと、「マリカー」という言葉自体の著名性は肯定も否定もしていません。そもそも特許庁の審判官は「商標」の著名性を判断する立場ですが、「言葉」の著名性を判断する立場ではありません。
しかしながら「商標登録」という土台で考えたときに、「マリカー」が商標として使用されている事実が確認できないため(審判官合議体はそう判断しています)、異議申し立てに関しては任天堂が敗北する形となりました。
任天堂は「マリカー」が商標として使用されている、もっと端的に言えば「『マリカー』は任天堂の商標である」と証明できる証拠を用意しなければいけませんでした。用意はしてあったけど裁判に備えて温存した、その可能性は十分にあります。
