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【国際】古浄瑠璃 英へ舞い戻る 江戸期に消えた台本… 発見の地 喝采
◆公演実現 キーンさん尽力【ロンドン=鈴木伸幸】江戸時代に台本が日本から持ち出され、五十五年前にロンドンで発見された古浄瑠璃「弘知法印御伝記(こうちほういんごでんき)」のロンドン公演(本社後援)が二日夜、大英図書館のホールで行われ、約二百五十人の観客が、英語の字幕を見ながら、約一時間の三味線の弾き語りと人形芝居に歓声を上げた。 公演は日本文学研究者のドナルド・キーンさん(94)が、台本発見の地ロンドンでの「里帰り公演」を働き掛け、実現した。公演の実行委員長のキーンさんは「演者の感情が外国人にも伝わったと思う」と話した。 御伝記は、道楽好きな男が妻の死を契機に出家し、修行の末に即身仏になる、新潟県柏崎市が舞台の物語。日本に関連資料はほとんど残っておらず、「幻の浄瑠璃」とも呼ばれる。 公演では、キーンさんの養子で文楽の元三味線弾きの誠己さん(66)が情感たっぷりに弾き語り、それに合わせて古浄瑠璃に属する文弥節の人形の遣い手、西橋八郎兵衛さん(69)ら五人が人形をテンポよく操った。 古浄瑠璃は、素朴な力強さや宗教色が強いことが特徴。観劇した主婦のキャサリン・トンプソンさん(61)は「オオカミや魔王が出てくる意外なところが面白かった。ストーリーの根底に仏教の精神を感じた」と、夫のニックさん(61)と、盛んに拍手を送った。
御伝記の台本は一六九二年に長崎から持ち出されたとされ、大英博物館の図書館(現大英図書館)が保管。それを、一九六二年に鳥越文蔵・早稲田大学名誉教授(85)が見つけた。キーンさんの勧めで、誠己さんらが二〇〇九年に柏崎市で約三百年ぶりに復活公演。その後、キーンさんがロンドン公演を模索していた。 観劇した鳥越さんは「御伝記を見つけた時には、ロンドンで復活公演なんて考えもしなかった。感激です」と目を潤ませた。 ◆台本と対面「状態とても良い」【ロンドン=鈴木伸幸】古浄瑠璃「弘知法印御伝記(こうちほういんごでんき)」の公演でロンドンに滞在中のキーンさんは二日、大英図書館に重要文書として保管されている御伝記の台本を初めて手に取って読み、「とてもいい状態が保たれていて、驚いた」などと感想を述べた。 同図書館には、五十五年前に台本を発見した鳥越文蔵さんも同行。十七世紀に長崎から持ち出され、当時の大英博物館の図書館(現大英図書館)に日本語を読める学芸員が不在で「中国関連の文書」として保管されていた台本を、鳥越さんが見いだしたことを「人類にとって歴史的な発見」と高く評価した。 一九四八年から五年間、英ケンブリッジ大で教員を務めたキーンさんが、同大の教員として鳥越さんを推薦。ケンブリッジ大に向かう途中に立ち寄ったロンドンで、鳥越さんが依頼されて台本を調べたところ、御伝記だと気付いた。鳥越さんは「私が見つけたのではなく、御伝記が私を呼び寄せたように感じている」と話した。 PR情報
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