国連安保理 北朝鮮に追加の制裁決議採択 中国やロシアも賛成

国連安保理 北朝鮮に追加の制裁決議採択 中国やロシアも賛成
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北朝鮮のたび重なる弾道ミサイル発射を受けて、国連の安全保障理事会では、日本時間の3日朝、北朝鮮の核やミサイルの開発に関わる個人や団体を制裁対象に追加する新たな制裁決議を全会一致で採択しました。北朝鮮に対して国際社会が結束して圧力を強める姿勢を示したものですが、さらなる挑発行動を食い止めることにつながるのか予断を許さない状況です。
北朝鮮が先月、3週連続で弾道ミサイルを発射した事態を受けて、国連の安保理ではアメリカや中国、日本が中心となり、追加の制裁決議に向けた協議を続けてきました。

その結果、2日午後5時前(日本時間の3日午前6時前)、新たな制裁決議が全会一致で採択されました。

決議は、核とミサイルの開発資金を断ち切るため新たに北朝鮮の14の個人と4つの団体について海外への渡航の禁止や資産の凍結を定めています。

このうち個人については、諜報活動や原子力に関わる国家機関の幹部やミサイル関連部品の取引を扱う商業銀行の代表などが、団体については核開発や石炭や金属の輸出に関係する複数の企業が、それぞれ含まれています。

安保理で北朝鮮に対する制裁決議が採択されたのは、去年9月の北朝鮮による5度目の核実験を受けて、11月に北朝鮮からの石炭の輸入制限を含む制裁決議が採択されて以来です。

決議には北朝鮮と関係が深い中国やロシアも賛成し、国際社会が結束して北朝鮮に圧力をかける姿勢を示すものとなりました。

一方で、北朝鮮が短時間のうちにミサイルの発射を繰り返す中、追加制裁をめぐる交渉は限られた時間の中で行われ、結果として新たな決議は制裁対象を広げるものにとどまったことから、北朝鮮によるさらなる挑発行為を食い止めることにつながるのか予断を許さない状況です。

北朝鮮は核放棄に応じない立場を強調

北朝鮮国営の朝鮮中央通信は2日夜、みずからの核・ミサイル開発を正当化する論評を伝えました。

この中で、「われわれの核保有は、アメリカによる核の脅しと敵視政策がもたらした当然の帰結だ」と主張したうえで、「わが国の核は、核の脅威があるかぎり、一瞬たりとも放棄できないわれわれの生命であり、最高の利益だ」として、アメリカに対抗するため、核開発の放棄には応じないとする立場を強調しました。

そして、「アメリカが制裁と圧迫を強めれば強めるほど、核武力の多様化、高度化を最大の速度で実現していく」として、制裁が強化される中でも、核・ミサイル開発を加速させる姿勢を示しました。

また、論評では、「核大国だと威張っているずうたいの大きい国々がアメリカの核の恐喝に萎縮し、伝統的な友好関係まで壊してしまっている」とも伝えていて、名指しはしないものの、北朝鮮の核・ミサイル開発に反対の立場をとる中国を暗に批判したものと見られます。

安倍首相「決議の着実な履行を」

安倍総理大臣は、国連の安全保障理事会が北朝鮮に対する新たな制裁決議を採択したことを受けてコメントを発表し、「全会一致で採択されたことを評価する」としています。

そして、「北朝鮮が国際社会のたび重なる警告を無視して挑発を続けていることは、断じて容認できない。日本政府は北朝鮮に対し、国際社会の声を真摯(しんし)に受け止め、今般採択された制裁決議を始めとする一連の決議を厳格かつ全面的に実施し、さらなる核実験や弾道ミサイル発射などの挑発行動を行わないよう強く求める」としています。

そのうえで、「北朝鮮に対する圧力をさらに強化すべく、この安保理決議を着実に履行し、その実効性を確保することを含め、引き続き関係国と緊密に協力していく」としています。

別所国連大使「現状では圧力強化以外に選択肢ない」

安保理の会合で日本の別所国連大使は「決議の全会一致での採択を歓迎したい。北朝鮮による挑発行為は意味のある対話を再開するにはまだ道のりが遠いことを示している。現状では圧力を強化する以外に選択肢はない。北朝鮮が誠実に非核化に取り組むまで圧力をかけ続けなければならない」と述べました。

韓国外務省「国際社会の断固たる意志を評価」

国連の安全保障理事会が北朝鮮への新たな制裁決議を全会一致で採択したことについて、韓国外務省のチョ・ジュンヒョク報道官は論評を発表し、「国際社会が北の非核化のための断固たる意志を示したことを評価する」として歓迎しました。

そのうえで、「韓国政府は国際社会と協力して決議を忠実に履行しながら、制裁と対話などあらゆる手段を使って非核化のための努力をしていく。北が国際社会の責任ある一員として発展していくことを期待する」としています。

中国・劉国連大使「冷静に対処すべき」

中国の劉結一大使は北朝鮮のミサイル発射に関わる活動に反対するとしたうえで、「朝鮮半島の情勢は複雑で敏感だ。朝鮮半島の核問題は、対話によって解決すべきで関係するすべての国が冷静に対処すべきだ」と述べました。

また、「北朝鮮は核開発をやめ、同時にアメリカと韓国も大規模な軍事演習をやめるべきだ。各国は、対話と協議を進め、6か国協議の取り決めの下、問題を解決するべきだ」と述べました。

米・ヘイリー国連大使「あらゆる選択肢をテーブルに」

アメリカのヘイリー国連大使は「安保理は、きょう北朝鮮に対して明確なメッセージを送った。北朝鮮のミサイルは国際社会の平和と安全にとっての脅威であり、国際社会はそれに対応しなければならない。これまでも言ってきたとおり北朝鮮のさらなる挑発行動に対処するためあらゆる選択肢をテーブルに置いている」と述べました。

制裁決議は今回を含め7回採択

国連の安全保障理事会による北朝鮮に対する制裁決議は、2006年10月に北朝鮮が初めて核実験を行って以降、今回を含めて7回採択されています。

前回の決議は去年9月に北朝鮮が5回目の核実験を強行したあと、去年11月末に採択されました。前回の決議では、北朝鮮の主要な収入源である石炭について、各国が輸入する北朝鮮の石炭の量を年間750万トン以下か、金額にして4億ドル以下のいずれか低いほうで制限すると定めるなど、かつてない厳しい内容となりました。

北朝鮮からの石炭輸入については、中国がことしいっぱいの輸入を停止すると発表していることから、決議が定めた上限を大きく下回るものと見られています。

このほか、去年3月に採択された制裁決議でも、金やチタン、レアアースなどの輸入を禁止したのに続いて、銅、ニッケル、銀、亜鉛の輸入も禁止されており、北朝鮮の年間収入を1億ドル減らす効果があると見られています。

ただ、制裁の実施状況を調べている安保理の制裁パネルでは、北朝鮮と外交関係をもつアフリカや東南アジアの国々の中には制裁に消極的な国も多く、国際社会が結束して決議を着実に実施していけるかどうかが、引き続き問われます。

決議の背景に中国への強い働きかけ

今回の決議が採択された背景には、北朝鮮が先月、3週連続してミサイルを発射したことを受けて、アメリカが、日本や韓国、それに常任理事国のイギリス、フランスとも連携し、北朝鮮の後ろ盾になってきた中国に強く働きかけたことがあります。

先月14日のミサイル発射を受け開かれた安保理の緊急会合に参加した日本の別所国連大使は「さまざまな外交努力の可能性について議論があった」と述べ、この時点で新たな制裁決議の見通しは立っていませんでした。

その1週間後の21日の発射のあと再び開かれた緊急会合でも、各国はこれまでの制裁決議の履行では一致したものの新たな制裁については意見がまとまらず、議長を務めるロセリ国連大使も「先週と状況はほとんど変わっていない」と述べていました。

しかし、29日の3度目の発射のあと、アメリカのヘイリー国連大使は記者団に、「中国と協議しながら最善と考える形で週内にも対応を決めたい」と述べ、安保理がこれ以上無策でいることは許されないとして、中国との協議を加速していることを明らかにしました。

その結果、新たな決議案は限られた時間の中でまとめられることになり、これまでにない種類の制裁は追加されず、制裁対象の個人や企業のリストを広げるものにとどまりました。

こうした経緯について、日本の国連外交筋は「3度目の発射で、中国も対応を迫られた。日本は制裁内容についてアメリカと逐一協議してきた。決議は現時点で評価できる内容だ」としています。