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深刻化する日本の「情報隠蔽体質」ーー共謀罪と公安の恐ろしい裏側とは

[2017年06月03日]

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権力が「邪魔だ」と考える人物を除去するのが目的ならば、共謀罪は絶大な威力を持つ、と語る青木理氏(右)と山田健太氏

「携帯はあなたの情報を政府に知らせています」――ギョッとする帯文が目に飛び込む、『スノーデン 日本への警告』(集英社新書)が話題を集めている。

エドワード・スノーデン氏は、2013年にアメリカ政府が全世界の一般市民を対象に大規模な監視体制を構築していた事実を暴露した「スノーデン・リーク」で世界を震撼させた元情報局員。

本書は、第一章でスノーデン氏が日本人に向けて深刻な監視社会の実情を解説し、第二章は国内外のジャーナリストらによるディスカッションという構成となっている。折しも、日本では政府が「共謀罪」の成立を急いでおり、アメリカのような監視社会はもはや対岸の火事とは言えなくなってきた。

出版を記念し、共著者のひとりであるジャーナリストの青木理氏、そして専修大学人文・ジャーナリズム学科教授の山田健太氏によるトークイベントが行なわれた。前編記事(「共謀罪成立で限りなく違法に近い公安活動が一般化する!」)に続き、メディアを萎縮させる特定秘密保護法など、深刻化する日本の「情報隠蔽体質」に迫る――。

***

山田 これまで、情報機関が本気で情報収集したらどういうことが起きうるのかというお話をしていただきました。では、その一歩手前、身柄を拘束できる権限についてはどうか。やはり、これが大きいと思うんです。

つまり、これまでは「違法行為をしたから」という理由で身柄を拘束できたわけですが、共謀罪が成立すれば「やるかもしれないから」という理由で捕まえられるようになる。身柄を拘束したあと、起訴をするのか、裁判までもっていくのかという以前に「世の中にいると邪魔だ」と思う人物がいたら拘束して留置できる。それが非常に容易になることを私は怖れるわけです。

もうひとつ、スノーデン氏はこの本で、いわゆる「内部告発」を取り巻く状況についての警告も発しています。彼は「民主主義というのは、内部告発が情報源の秘匿などの権利によって担保されていないと壊れてしまう」と言っています。内部告発の受け皿としてのジャーナリストの役割というのを彼は非常に重視している。青木さんも取材活動を通じて、内部告発の重要性は十分に認識していらっしゃると思います。

青木 もちろん政治権力や行政権力が「邪魔だ」と考える人物を除去するのが目的であれば、共謀罪は絶大な威力を持つでしょう。実際に動くのは警察、なかでも公安警察になるわけですが、その絡みで言うと、これもオウム真理教事件の際、印象に残る話を聞きました。

公安警察がようやく捜査を本格化させ、ありとあらゆる法令を駆使して信者を片っ端から捕まえていったわけですが、公安部の幹部は当時、「過激派に比べればラクだったよ」と言ってました。そうして幹部信者のあらかたを捕まえ、最後に教祖の麻原彰晃を捕まえる段階になった時のことです。麻原の所在を必死に調べ、おそらくは第7サティアンにいるだろうということがわかった。さて、どうするか。刑事部と公安部の意見が対立したんです。

どういうことかと言うと、刑事部はこう主張するんです。「麻原を捕まえるんだったら、地下鉄サリン事件か、それに匹敵する逮捕状で捕まえたい」と。一方の公安部はこう訴えた。「公務執行妨害でもなんでもいいから、とにかく踏み込んで拘束すればいいんだ」と。

ここに公安警察と刑事警察の根本的な発想の違いがよく表れています。刑事警察というのは、裁判での立証なども見据え、きっちり捜査をしたいという考えが根底にある。一方の公安警察は違う。極端に言えば、容疑なんてなんでもいい。捕まえることにこそ意味があると考える。

冗談のような話ですが、公安警察には「転び公妨」という手法があります。誰かを捕まえたいとするなら、その人物の周囲を公安警察官が取り囲み、そのうちのひとりが「あぁっ、痛い痛い!」といって勝手に転ぶ。そして「お前、押しただろう。公務執行妨害だ」といって逮捕してしまう。はっきり言って違法行為ですし、裁判で立証などほとんどできないのですが、これならいつでもどこでも誰だろうが逮捕できてしまう。

しかし、とりあえず逮捕し、その後に強制捜査でもしておけば、たとえ裁判で有罪にできなくても、さらに言うなら起訴すらできなかったとしても、情報収集という点でいえば勝ちなんです。対象人物や組織にダメージを与えることもできる。それが情報警察である公安警察の本能と言ってもいいでしょう。だから、それに強力な武器を与えることになる共謀罪は恐ろしいのです。


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