「Nintendo Switch」は、待ちに待った任天堂復活の起爆剤
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Inc:任天堂の株価に火がついています。その原動力は、最新の家庭用ゲーム機「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」と、そのデザインに内在するプラットフォームとしての商機への注力です。この注力は、任天堂に大きな見返りをもたらしてくれるでしょう。
任天堂の株価はこの数カ月で記録的な高値にまで上昇しましたが、その急騰ぶりは2016年夏の『ポケモンGo』フィーバーをも凌ぐものです。
Switch本体の売上は好調が続いており、任天堂は今期、1000万台の製造および販売を計画しています。これとは対照的に、同社の前機種「Wii U」は厳しい非難にさらされ、発売以来の全販売台数はわずか1300万台ほどです。
2016年10月、Switchの発売を大々的に発表した任天堂ですが、その直後、予想に反して株価は7パーセント下落しました。それでも任天堂は計画を推し進め、ユーザーからの注目を獲得しようとするスマホとの厳しい争いに直面しながらも、新たなゲーマーを顧客として獲得しようと努力してきました。
大ヒットの要因
2017年3月3日の販売開始から1カ月以内に、任天堂はSwitch本体を約300万台を出荷し、完売させました。家庭用ゲーム機メーカーにとって3月は売れ行きが落ちる月であることを考慮すると、この数字は特筆すべきです。
この成功にはいくつかの要因が考えられます。まず、Switchは大ヒットが見込めるタイトル『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』と同時発売されたということ。評論家から「ゼルダの伝説シリーズを刷新する待望の一作」「最高のクオリティ」などと評価される本作の売上が、Switchへの注目を後押ししました。
Switchを購入したほぼ全員が『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』も購入しました。このゲームがSwitchとのバンドルではなかったことを考えると、この点は注目に値します(バンドルは、ローンチ時やホリデーシーズンなどにゲーム機本体の売上を伸ばすためによく用いられる販売手法です)。この数字は、今後発売されるSwitch用ソフトの明るい見通しを示唆するものです。
次に、Wii Uの発売以降に市場が変化したということ。ゲーマーの平均年齢は、2004~2011年にかけて29歳から37歳に跳ね上がりましたが、その後もこの数字は著しく下がってはいないでしょう。通常、こうした平均年齢の上昇が意味するのは、可処分所得の増加であり、新しい家庭用ゲーム機を買う見込みの高い顧客の増加です。
最後に、プラットフォーム企業であることを思い出した任天堂が、正しい判断のもと、持って生まれた潜在能力に目を向けつつあることも、Switchが成功した要因と言えるでしょう。
結論:勝つのはプラットフォーム
日本のSwitchユーザーの皆さんは胸を躍らせていることでしょう。あのモンスターハンターシリーズの最新作『モンスターハンターダブルクロス』が2017年8月、Switchに登場することを、カプコンが発表しました。
この発表には、きっと任天堂も喜んでいるはずです。Switch向けのタイトルをリリースするサードパーティのゲーム制作会社が増えれば、それはつまりSwitch本体を購入して、この革新的なハードウェアでゲームをプレイする人が増えるということなのです。
プラットフォームとは、このようにして成り立ちます。消費者向けの最終製品はサードパーティが開発し、全体の所有者(この場合はSwitch)は製品価値の消費を支援するというわけです。Switchは、(理想としては)任天堂以外のメーカーがつくったゲームをプレイヤーが楽しむための一種の器なのです。
Switchが成功と成長を続けるためには、任天堂は今後、家庭用ゲーム機の売上が低コストで自然な成長を実現できるよう、サードパーティの開発者や制作会社の要望を優先する必要が出てくるでしょう。
またSwitchは、ゲーム中のソーシャルな交流を促すようにデザインされており、対面での人間同士のやりとりが特徴的です(モノの形や動きなどを判別できる「モーションIRカメラ」を搭載しており、画面を見ずにプレイ相手の“目”を見て遊ぶ新感覚の対面ゲームなどが提供されている)。対面でのやりとりは、プラットフォームに成功をもたらす最も古くからの要因です。ほかの家庭用ゲーム機がオンラインのマルチプレイヤーゲームに続々と移行している一方で、任天堂は以前から、対面型のマルチプレイヤーゲーム(協力プレイであれ、対戦プレイであれ)を重視してきました。
任天堂は、今後さらに対面型のマルチプレイヤーゲームをサポートする新たな機能やゲームを模索し、そこに的を絞ったマーケティングを継続すべきでしょう。
任天堂の成長にはワクワクさせられますが、その地位は不安定なものです。ソニーやMicrosoftなどのライバル会社と違って、任天堂は家庭用ゲーム機とゲームの売上を頼みの綱にしています。ゲーム業界が冬の時代を迎えれば、任天堂はその痛手をまともに受けることになります。ソニーやMicrosoftなら、ほかの部門の売上でそれを補えるのですが。
さらに任天堂は、モバイルゲームやプロパティのライセンス供与が不得意です。ポケモンGoは大きな成功を収めましたが、それをさらに効果的に新しい売上につなげることには失敗しました。新しいトレンドを社内文化として受け入れられるようになるまで長い時間がかかったのです。
任天堂さん、頼むから、自分自身のためにも外部のイノベーションやアイデアを歓迎してください。勝つのはオープンシステムなのです。嘘だと思うなら、GoogleやMicrosoftに聞いてみると良いでしょう。
How the Nintendo Switch & Platform Thinking Saved the Company|Inc.
Alex Moazed(訳:阪本博希/ガリレオ)
Photo by PIXTA.