加計学園問題、「総理の意向」なかった可能性…獣医学部設置は適切に認可か
加計学園問題をめぐり、文部科学省前事務次官の前川喜平氏は、「総理のご意向」などと書かれた文科省内部の文書を「本物です」と証言し、さらに和泉洋人・首相補佐官から「総理は自分の口から言えないから、私が代わって言う」などと圧力を受けたと明かし、波紋を呼んでいる。マスコミはこれらの発言を取り上げて、安倍晋三首相の関与、および不自然なかたちで同学園への獣医学部設置が認可された疑惑を追及している。前川喜平氏(写真:日刊スポーツ/アフロ)
しかし、一般国民の視点からみていると、本当に安倍首相が直接的に関与していたのか、していないとすれば、いったい官僚たちはなんの目的で、わざわざ疑いを持たれるような不可解な動きをしたのか、よくわからない。そこで今回は、本件の背景や問題の本質について考えてみたい。
「挙証責任」
結論からいえば、安倍政権を叩きたいマスコミが、よく調べずに一方からの話を垂れ流して印象操作をしているだけである。その意味で、マスコミ報道を見て上記のような疑念を持った方は、まんまとマスコミ戦術にはまっただけである。もっとも、マスコミが意図的に印象操作したのかどうかはわからない。安倍政権を叩きたいあまり、一方の話だけを真に受けて報道しているので、結果として的外れになっているだけかもしれない。
私たちが情報を正しく把握するためにまずすべきことは、全体像の把握である。裏を返せば、政府やマスコミが全体像を示さずに、個別の事実を示しながらある方向へ誘導していくのは、印象操作の常套手段である。全体像の把握は、客観的な情報により簡単に行うことができる。今回問題となっているのは、国家戦略特区で加計学園が獣医学部を新設する計画だが、特区は特区法に基づいた政策なので、法的手順が明確であるため、客観情報も事欠かない。
加計学園問題には長い経緯があるが、2015年6月の閣議決定まで振り返って情報を把握するべきだろう。この閣議決定は、前川氏が5月25日に記者会見を開き、そこでも言及されている。前川氏は、その条件が満たされないから「行政が歪められた」としている。
この閣議決定では、獣医学部新設の条件として、獣医師の需要見通しなど4条件を挙げている。当時、規制緩和を進めようとした内閣府に対し、文科省が抵抗したわけだが、この閣議決定にある「需要見通し」を文科省が出せなかった段階で、内閣府の勝ちである。新設が不要というなら、それを裏づける獣医師の需要見通しを示す「挙証責任」は、許認可権のある文科省にあるからだ。