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登録されている“万引容疑者”と入店客の顔が似ていると判断されると保安員にメールが送られる(画像の一部を加工しています)=神戸市中央区三宮町1、ジュンク堂書店三宮店(撮影・後藤亮平)
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登録されている“万引容疑者”と入店客の顔が似ていると判断されると保安員にメールが送られる(画像の一部を加工しています)=神戸市中央区三宮町1、ジュンク堂書店三宮店(撮影・後藤亮平)

 “万引容疑者”の顔データを店側が登録し、カメラで似ている客を検知する-。そんな「顔認証システム」を使った万引対策が大型書店や商業施設で広がっている。兵庫県内で導入しているのは50カ所以上とされるが、多くは使用を公表せず客にも知らせていない。こうした顔データは30日施行の改正個人情報保護法で個人情報として規定される中、店側にもプライバシーを侵害する事態がないよう配慮が求められている。(石川 翠)

 神戸・三宮のジュンク堂書店三宮店で、男性保安員のスマートフォンが振動した。メールで届いたのは2枚の顔写真。1枚は過去に万引で逮捕された男、もう1枚は男に似ている客で、数秒前に入店してきた。

 保安員が同一人物の可能性が高いと判断すれば警戒し、万引が確認されれば警察に引き渡すなどする。

 全国に約90店を構える「丸善ジュンク堂書店」は2014年から全店で顔認証システムを導入している。過去に万引をしたり、不審な動きを繰り返したりした数百人をデータベースに登録。客の顔から100カ所の特徴点を抽出、照合して類似度を導くが、判定レベルは調整できる。開発業者によると、費用はカメラ2台で約220万円(設置工事費は除く)という。

 店内に「防犯カメラ作動中」との張り紙があるが、同店は「顔データの取得には不快感を示す客もいるため、店内で積極的な周知はしていない」として、問い合わせがあれば説明しているという。

 改正個人情報保護法では顔データは指紋などとともに「個人識別符号」と定義され、個人情報として扱われる。政府の個人情報保護委員会は「カメラ設置の告知をしていれば、顔データ取得の説明はあえてする必要はない」との見解を示している。

 ただ、顔データがどのように取得され、使われているか不安に感じる市民もいる。同店にはこんな質問も寄せられているという。

 「どんな行動で容疑者扱いされるのか」「データが流出する危険は」-。

 同店は「万引犯と登録する際には細心の注意を払っており、確信できない限りは登録せず、データにアクセスできる職員は厳選している。あくまで予防に向けた措置だ」と理解を求めている。

■万引き被害4600億円、死活問題

 顔認証システムについて、NPO法人「全国万引犯罪防止機構」(東京)が2015年、全国の小売業約600社を対象に行った調査で「導入した」「検討している」との回答は14・8%に上った。背景には万引被害が各店で死活問題になっている実態があり、被害総額は全国で約4600億円を超えるとの試算もある。

 書店の場合、本1冊を販売して得られるのは、代金の約2割。千円の本だと200円の実入りしかないため、1冊を万引されると5冊を販売しないと補えない被害になる。警察庁によると、15年の全国の万引認知件数は約11万7千件だった。

 今年2月には、神戸市内のコンビニ店が複数の客を万引容疑者と判断し、防犯カメラで撮った客の顔写真を数カ月間店内に掲示。被害を防ぐのが狙いだったが、冤罪(えんざい)による差別を招きかねないとしてプライバシーの侵害が問題になった。

 一方、千葉県のビル経営会社「市川ビル」は、入居する大型スーパーなどで「顔認証システム」を導入し、万引行為が裏付けられた本人に「顔データを登録する」と通告している。同ビルの担当者は「他の対策もしているが、導入後、被害は半減した」とする。

■「顔認証」店内で周知すべき

【個人情報保護に詳しい国立情報学研究所の佐藤一郎教授の話】一般的な感覚では、防犯カメラだと思っていたのに、気付かずに顔データを採取されていたら市民は戸惑うのではないか。それならば「顔認証をしている」と店内で周知すべきだ。常習犯を遠ざける「抑止力」にもなるだろう。

 また容疑者と顔が似ているというだけで罪人のように扱われ、不利益を被った人がいた場合、どう対処するか。システムの運用で想定される事態に対して今後、ルール作りが欠かせない。

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