先日、現実の犯罪と(特に性犯罪が絡むもの)を元ネタにした漫画(特に性的なもの)について、議論が起こっていました。
この議論においては、色々な問題が一緒くたにして論じられているような気がします。
個人的な好き嫌い
特定の種類の漫画を個人的に好きか嫌いかという意見の表明の場合。
これは、本人が言うのであれば、真偽や当否は問題とならないでしょう。
ただし、そこから一足飛びに「規制すべき」にはつながりません。
また、あらゆる種類のフィクションについて、その種類のフィクションを嫌いな人間が存在し得る、というのは気をつけておきたいところです。
規制をすべきか否か
こちらの問題は、個人的な好き嫌いとは大きく異なります。
表現の自由なども関わってくるでしょう。
規制をすべきであるという立場については、様々なバリエーションが考えられます。
①私が気に入らない漫画は全て規制すべき
②現実の犯罪(性犯罪)を元ネタにした漫画は全て規制すべき
③現実の犯罪(性犯罪)を元ネタにしており、かつ、それが肯定的に描かれている漫画は規制すべき
④犯罪の参考になるような漫画は規制すべき
⑤犯罪の原因となるような漫画は規制すべき
例えば、上記のような感じでしょうか。
①については、賛同は得られないでしょう。
②もかなり極端な立場ですが、漫画と小説を区別すべき理由もないでしょうから、三島由紀夫の「金閣寺」なんかも規制対象に含まれそうです。
③はありそうな立場ですが、「肯定的」かどうかを判断するのが難しそうです。
単に、作中で犯罪者が裁かれてないことだけをもって肯定的に描かれているとはいえないでしょう。
④については、推理小説・漫画の大部分が規制対象にかかってしまいそう。
名探偵コナンなんかは、わざと実現不可能なトリックを使っているとも聞いたことがありますが、それでも参考にはなってしまい得るでしょう。
⑤については、現在において、因果関係が証明されているか、という問題があります。
また、仮に因果関係があるとしても、その強度によっては表現の自由を優先すべきという考えもあり得るでしょう。
また、上記では、公的な規制を念頭においていますが、規制といっても、ゾーニング、業界団体による自主規制、出版社による自主規制など色々な形もあり得ます。
こんな風に、この辺りの議論は、様々なレベルの話が混在しています。
そこを切り分けて話さないと、議論が迷走すると思うのでした。
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