借金玉という発達障害のブロガーさんがいらっしゃる。僕は彼の書く文章が好きです。彼のtwitterも見ています。理論的で知性的で読ませる文体だし、フォロワーもたくさんです。
発達障害だろうと、心身健康な僕よりもうまい文章を書く人がいる。
偏見ではありますが、発達障害は何かしらの能力的なハンディを持っていると思っていたところのある自分は、少なくとも論理的文章を書くことに関しては、あまり関係ないんだなあと感じました。
僕は定型発達者だと思っているし多分そうでしょう。昨今の発達障害判定ブームで僕自身本当に定型発達者か?と思うことはあるのだけれど、発達障害っぽい人々や過去の精神疾患を患っていた同僚のことを振り返ると、僕はそこまで世の中に苦労していないと思うので、定型発達者の領域にいると思います。
借金玉氏がtwitterで激怒している。アルファツイッタラーにありがちですが、アンチな人にリプを投げられ、それに怒り心頭で法的に訴えることも辞さない構えです。彼が激怒したツイートはこれです。
このまえ「うつヌケ」を読んだら、うつ病になるパターンとして一番多いのは「自分に向いてない仕事を無理して続けて自己嫌悪に陥ること」って書いてあって、これが正しいならまさに借金玉がやってることはただでさえ不安定な発達障害者をそういう状況に追い込み、うつ病にして殺すことだなと笑った()
— くろぺ (@mononoke7424) 2017年6月2日
その後はいろいろツイートがあって、以下につながる
僕の主張、極限まで要約すると「生きてくれ」なんですよね。そこの部分を否定され、殺すとまで言われるのは本当に耐え難い。
— 借金玉 (@syakkin_dama) 2017年6月2日
このツイートを読んで昨今の「通常ではない」人々(あえてこのように書きたい)がブログ、SNSで経験を書き、サバイブのためのハウツーを展開していることについてふと思ったことがあります。
それが今記事のタイトルです。
さて僕は定型発達者として、昨今の発達障害やADHD、あるいは鬱や統合失調症などの情報の洪水にモヤッとしたものを感じています。今まではうまく言語化できなかったのです。
借金玉氏に限らず、様々な精神的問題を抱えている人が情報発信をしているのだが、そこに書かれたことを本当に信じていいのだろうか、ということです。
なぜか?
極端な例を出してみましょう。
「僕は統合失調症だ。でも、金の延べ棒で頭をなでると症状がでないよ。みんなも試して欲しい。」
というようなブログなりツイートがあったとします。
僕は100%、こいつは頭がイカれていてヤバイ奴だ、と解釈するでしょう。
僕は上記の様なことを言う人から目を背けるだろうが、もしリプライを送るとすれば
「そんなアドバイスは馬鹿げている。病院に行くべきだ」
というような内容になると思います。
だがもし
「お前は医者なのか?僕は統合失調症であり、経験者なんだぞ。実体験からのアドバイスだ。」
と言われれば反論の余地はありません。
僕は医者ではないからです。
該当の疾患経験がある、という点が僕よりも疾患者の意見に重みを与えるような気がします。だが統合失調症(発達障害、ADHD、癌でもいい)を緩和するのに金の延べ棒は不要だということについてはほとんどの人が同意するでしょう。
上の例は極端なのだが、数ある精神問題を抱えた人達のハウツーは本当に当人以外に有効だろうか、という疑問が生じる理由がわかってもらえるかと思う。
現実はもっとグレーゾーンだ。僕があげた例え話は誰から見てもおかしいものだが、SNSで拡散されているハウツーはもっと実用的に見える。
僕が言いたいのはつまり、精神問題を抱えた人が拡散しているアドバイスは、冷静で専門家も納得する状態で書かれているとは限らないのではないか。そして僕ら定型発達者はどの程度真に受けるべきか判断できません。
この疑問を強くするのは本物の医者がネット上で詳細で個別なアドバイスを控えるという点にある。
医者はプロフェッショナルだから、顔もわからない人かつスムーズなコミュニケーションが難しいネット上の患者に対してはほとんど何も言わない。2,3の可能性を示した上でお近くの病院で受診してみては、程度のことを言うに留まるのだ。
だが患者を食い物にしたい人はもっと端的なアドバイスをする。この食べ物を買うべきですよみたいな類いのものです。
僕は今まで定型発達者らしく、精神問題に対して警戒がありました。ADHDの人が我々に特別な対応を求める際、それが有効でないなら僕らにとってはカスタマイズされた個別負担になるからです。昨今の精神疾患ブームで本人たちがどのようなサバイブをするかは、端的に言えば自己責任で済ませられるが、他者に対してある種の特権待遇を求めるなら話は違うでしょう。
不平等だ!ズルい!負担だ!という感情がないかといえば嘘になる。
それでも配慮したいとは思うが、この記事のタイトル通りの疑問が拭えない。
彼らはそれぞれ汎用的ではなく、カスタマイズされた要望を我々健常者に突きつけているとすれば、僕には恐怖である。それが思い込みであったりするならなおさら。
さて、そんな警戒している僕でも、借金玉氏の書く記事は論理的で真摯、そして信頼にたると思っていた。つい先程までは。
見てるか見てないかわかんないんだけど、通常インターネットで激おこするにはまずツイッターを訴えて、それからプロバイダを訴えなくちゃいけなくて、ここまで安くて30万かかるんだけど、それショートカットできちゃう状態であれやるのさすがにあれでは。
— 借金玉 (@syakkin_dama) 2017年6月2日
さてこのツイートの前に、様々な激おこツイートがあったわけだが、今は削除されている。内容は法人登記を調べればリプを飛ばしたアンチの住所を突き止められるぞ的な内容。その流れで上のツイートにつながります。
朝っぱらから激おこツイートを眺めていて、怒る理由はわかるけれど、恫喝じみたツイートをバンバン飛ばしている姿は狂気そのもだなあと思いました。削除できるだけの理性はあるとも言えるし、怒りに任せてヤバイ投稿をしてしまう人とも言える。
怒りに任せて追い込むぞツイートをする姿は自分の母親と重なって悲しくなりました。
私事ですが実のところ僕の母は発達障害的なところがあるんじゃないかと疑っていました。怒りに任せてツイートしまくるという姿が、過去の母によく見た姿のようなのです。
僕の母は子供への愛情深い人ですが、理不尽な要求や悪口に対して我慢できないタイプの人です。しかも、語学力、表現力がないため怒りに任せて暴言を吐く、怒鳴ることしかできず、本人もそれを自覚していて悔しい思いをしているのがわかるからつらい。我慢しろといっても、感情が爆発するとどうにも制御できないようです。
そのおかげで明らかに不利益を被ってきました。彼女の人生の内の苦労のほとんどは、理不尽な要望や悪口に対して、やり返さないと気がすまないという点にあったかもしれない。
もしそんな母が、精神疾患に対してのアドバイスなんかしていたとすれば、僕は絶対に信じないでしょう。彼女はインターネットをしませんが。
とはいってもあと掴めてない情報、本名の漢字くらいでこれもあと3時間ちょいでわかるんですけど、念には念をね。
正直、まさかここまで掘れるとは思わなかった。お住まいのお家賃までわかったよ。3万ちょいだ。
— 借金玉 (@syakkin_dama) 2017年6月2日
2006年より前に法人登記をしているから、大分人生の先輩だなぁ。
— 借金玉 (@syakkin_dama) 2017年6月2日
借金玉さんのタイムラインを見ながらコレを書いてる。リアルタイムでヤバいツイートしたり削除したりをしている姿が、暴言をはいたり、その後つめられて後悔している母と重なって胸が痛い。
率直に言うと、定型発達者はここまで怒りを露骨に吐露しない、それは悪手だとわかるから。借金玉氏が訴訟する権利はあるけれど、このように恫喝じみたツイートは定型発達者は支持しないだろう。僕も支持しない。クレバーとは思えない。
法的に問題あるか僕にはわからない。弁護士ではないから。
怒りを抑えきれない人と「冷静にとりあえず酒でも飲むか、寝るか」と言えるだろう自分との断絶を感じてしんどい。冷静になれずポンポン暴言を吐くようになっている状態の母を見ているようで胸が痛む。
知的水準が高い方でしょうから、合法と言えるラインを狙ってやっているとしても、それは「正常な状態」の人々がやることじゃあない気がする。大半の人はいくらキレても、レスバトルは中々できない。現実の言い合いはできるだろうけど、ネット上に残ることなんかはとても怖くて。
まだやりたいみたいなんで念のため追加しておきますけど、僕の文章が「発達障害者を鬱に追い込んで殺す行為だ」と断ぜられたことについて、僕は怒りを表明しています。それ以上でも以下でもありません。
— 借金玉 (@syakkin_dama) 2017年6月2日
そうでしょう。プライドをかけた戦いをしていると思います。
それを炎上上等で追い込む姿を見せるのは支持されない。
(全部終わった後の報告ならスマートです)
でも彼はきっとそんなこと気にしないでしょう。
僕もここまでにしておきます。
なにがあったとしても借金玉氏の文章の緻密さや論理性は失われません。
ですが僕は例えば発達障害の人々に出会ったとしても彼のブログを引用しないでしょう。
もしかしたら理性的でない状態で書かれた思い込みを緻密さによって信頼性を担保できているとしたら、それは恐ろしいことかもしれません。精神問題を抱えた人も医者とは限らないんだから、何を言っても正しいかどうかはわからないよねと理解させてくれた朝でした。
精神問題については、お医者さんを訪ねてみるのが一番なんでしょう。