AWS Summitの最終日は「イノベーション」をテーマに 講演やセッション(セミナー)が構成された。
特別講演にガイド役で登場したアマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社の代表取締役社長 長崎忠雄氏は「Amazonの成長の源泉は”イノベーション”であり、AWS Summitの来場者の方々には”イノベーションの種”を持ち帰って欲しい」と語った。
まずプレスリリースを作ってみる
Amazonでは新技術に取り組む前に、その時点で「プレスリリースを作成してみる」という手法をとっている。プレスリリースを作ってみることで、新しい技術やサービスを顧客がどう受け止めるかをイメージすることができ、これから取り組むことが実現したとき、それは顧客にとってインパクトがあるものなのかを検討できる機会になると言う。
また、同社にある「ツー・ピッツア・ルール」を紹介した。新技術に取り組むチームは2枚のピザで収まる程度の人数、約10人程度で編成する。それより多人数でチームを組むと、メンバーで一番の上司、もしくは一番声が大きい人の意見にアイディアが偏ってしまい、良い成果に繋がらない。
そして、いよいよ特別講演のメインテーマの「イノベーション」へと話はうつる。
アマゾンの3つの重要なイノベーションとして「アマゾン・ダッシュ」「アマゾン・アレクサ」「物流ロボティクス(キバシステム)」をあげた。米国から招集された各部門を担当するエヴァンジェリストや担当者から技術やしくみが解説された。
Amazon DashとIoT
Kris Davies氏はAmazon Dash Replenishment ServiceのSr. Manager、Product Management担当者だ。
「アマゾン ダッシュ」は、ボタンを押すだけでWi-Fiからインターネットを通じて、押したボタンの商品の注文ができるというシステム。既に日本でもサービス提供が始まっている。Amazonではこのダッシュを大きな変革をもたらす「IoT」のひとつのデバイスと捉えている。大きな変革とはクリックやタップといったインタフェースはトークやチャット、プッシュやタッチに変わり、アプリはスキルやボットとなり、アルゴリズムは機械学習が主流になっていく等の変革をさす。
ユーザーの声にきちんと耳を傾けることが企業にとって重要で、IoTによって製品は使えば使うほどスマートになり、ユーザーは毎日の活動がより簡単になるとしている。
IoTの進化によって、買い物はゼロクリック(クリックすらしない)になる、そんな構想を抱いている。
接続された製品やサービス自身が顧客の代わりに注文するようになる、という意味だ。例えば、掃除機に内蔵したゴミ袋センサーがごみパックの状況をクラウドに通知することで、掃除機内のごみパックがいっぱいになったり、ごみパックの補填が必要な場合は自動で注文が行われる・・このような購買環境が実現する。IoTによって顧客はごみパックの買い置きを気にする必要すらなくなるということだ。
Amazon Alexa
Amazon AlexaはAIスマートスピーカーである「Amazon Echo」の音声会話をバッググラウンドで支えている技術だ。Amazon.comのAlexa Evangelist、Jeff Blankenburg氏が登壇してAmazon Alexaについて解説した。
「VOICE WILL BE EVERYWHERE」、音声はどこででも様々な接続端末に話しかけることができるインタフェースと言える、Jeff Blankenburg氏はそう語り始めた。
Amazonが音声市場へ参入したことへのインパクトについて、「どこででもリクエストに対して数秒で理解し、処理し、返答する」「相互交流で使えば使うほど賢くなっていく」「Amazon Alexaをオープンな開発環境と体験を普及させる活動をすること」などを説明した。
サーモスタットやクルマ、キッチン等で、ユーザーが様々なデバイスに話しかける時代を思い描く。
Amazon Echoなどのデバイスはスマートホームをコントロールするハブにもなる。既に米AmazonはAmazon Alexaを搭載した商品して、Amazon EchoやEcho Dotなどに加えて、Fire TVもラインアップしている。
スマートホームのイメージはこうだ。
起床したときにユーザーはAmazon Alexaに今日のスケジュールをたずね、天気予報を聞き、音楽をかけたり、ペーパータオルの注文を指示する・・こんな光景をイメージ動画で紹介した。
また、Amazon Alexa上で利用できるアプリ「スキル」は、個人の開発者やシステム開発会社が開発して顧客に提供したり、ビジネスにすることができることも紹介した。イメージ動画が語ったスマートホームの未来像は開発者の提供するスキルによってより豊かなものに昇華する。
また、Amazon Alexa対応の機器すら誰にでも作れる。ラズベリーパイのコンピュータボードを買ってきて、マイクとスピーカーを接続するなどして、趣味の範囲内ででもAmazon Alexa対応のデバイスを組み上げることも可能だ。Amazonのエコシステムが、ハード、ソフト、サービスの枠を超えて考えられていることを感じる点だ。
後半は、Amazon Alexaの開発についてはどのように音声とユーザーの意思を結びつけるのか、そのしくみが解説された。このしくみは別途、当日開催された個別のセッションの中でも詳しく紹介されている。
アマゾン ロボティクス
最後に紹介されたイノベーションは物流を支える「Amazonロボティクス」の技術、Kiva Systemだ。
Amazon RoboticsのSoftware Development Manager, Robotic Integration & OptimizationのAndy Pollock氏が登壇した。
このシステムの最大の特徴は、例えば、大きな図書館に行って「ハリーポッター賢者の石」の本を借りたいと思ったときに、ズラリと並んだ本棚から一冊の本を探さなくてはならないのが今までの現実だが、私達が開発したのは図書館で「探しているハリーポッターの本がまるで空から振ってくるように提供されること」だ。つまり、必要な品物の方が手元にやってくる。
このシステムの最大の特徴は発送を担当するスタッフの元に、ロボティクスが品物が入った棚ごと運んできてくれる。
このロボティクスがどのような商品と、商品が入っている棚をチョイスし、どのような手順でスタッフの手元まで効率的に運ぶのか、そのしくみも解説された。
このシステムは日本では川崎の倉庫で実践投入されている。
Amazonのイノベーションに具体的に知ることができた特別講演。
今後の発展に期待したい。
それにしても「Amazon Echo」、いつ日本で発売になるのだろうか?
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。