(cache) 転職先は「生産性」で選べ！　変わる有望企業の基準｜出世ナビ

転職先は「生産性」で選べ！　変わる有望企業の基準リクルートワークス研究所副所長　中尾隆一郎

2017/6/2

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　就職先や転職先を探す際にあまり語られることはないのですが、企業選びの重要な要素の一つに「生産性」という観点があります。なぜ生産性が重要なのか？　今回は、その理由に迫ってみました。

Q．あなたならどちらを選ぶ？
(1) 生産性が高い会社
(2) 生産性が低い会社

■日本企業の生産性はなぜ低い？

　「生産性の高い会社、低い会社のどちらを選ぶのか？」という質問に対して、「(2)生産性が低い会社」を選ぶ人は少ないと思います。生産性が低い会社は、業務にムダが多く、生産性が高い会社に早晩淘汰されるのではないか、と考えるのが一般的だからです。

　ただ、日本と欧米企業を比較すると、日本企業の生産性は低いという話もよく聞きます。もし本当にそうだとすると、日本企業に在籍している＝生産性が低い会社を選んでいることになり、判断と行動が矛盾している気もします。しかし、それ以前にそもそも問題を難しくしているのが、この「生産性とは何か？」という定義の問題です。

　一般的に生産性とは、何らかの成果を時間や投入コストや従業員数で割った数値であることは想像できます。例えば成果と労働時間の関係で考えると、仮に成果の量と質が同じであれば生産性を高めるためには、より労働時間を短くすることが生産性を高める正しい答えになります。

　ところが、日本企業では、長期間にわたり労働時間は減っていません。例えば、国内総生産（GDP）を国の成果だとして、国民一人あたり、あるいは労働時間あたりで割り、それを国の生産性だと仮定し、諸外国と比較すると、日本は先進国中で最下位となります。この主要因は労働時間が相対的に長いことに起因しています。

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<INSERT code="1" id="DSXZZO1690529026052017000000" style="7"/>　就職先や転職先を探す際にあまり語られることはないのですが、企業選びの重要な要素の一つに「生産性」という観点があります。なぜ生産性が重要なのか？　今回は、その理由に迫ってみました。Q．あなたならどちらを選ぶ？ (1) 生産性が高い会社 (2) 生産性が低い会社■日本企業の生産性はなぜ低い？　「生産性の高い会社、低い会社のどちらを選ぶのか？」という質問に対して、「(2)生産性が低い会社」を選ぶ人は少ないと思います。生産性が低い会社は、業務にムダが多く、生産性が高い会社に早晩淘汰されるのではないか、と考えるのが一般的だからです。　ただ、日本と欧米企業を比較すると、日本企業の生産性は低いという話もよく聞きます。もし本当にそうだとすると、日本企業に在籍している＝生産性が低い会社を選んでいることになり、判断と行動が矛盾している気もします。しかし、それ以前にそもそも問題を難しくしているのが、この「生産性とは何か？」という定義の問題です。　一般的に生産性とは、何らかの成果を時間や投入コストや従業員数で割った数値であることは想像できます。例えば成果と労働時間の関係で考えると、仮に成果の量と質が同じであれば生産性を高めるためには、より労働時間を短くすることが生産性を高める正しい答えになります。　ところが、日本企業では、長期間にわたり労働時間は減っていません。例えば、国内総生産（GDP）を国の成果だとして、国民一人あたり、あるいは労働時間あたりで割り、それを国の生産性だと仮定し、諸外国と比較すると、日本は先進国中で最下位となります。この主要因は労働時間が相対的に長いことに起因しています。<PAGEBREAK/>　現在、働き方改革により労働時間を減らそうという機運が高まってきているので、今後は労働時間の減少が期待される可能性がありますが、労働時間を減らすと成果が小さくなると危惧する企業も多いと聞きます。労働時間が減った分だけ生産量も減るとすると、日本企業の生産性は相変わらず低いままということになります。■生産性が高まる大手企業の特徴　私が所属するリクルートワークス研究所は、隔年で東証1部上場企業に対して「人材マネジメント調査」を実施しています。2015年のアンケート調査の分析によって持続的に生産性を向上している大企業の特徴が分かりました（図表参照）。<INSERT code="1" id="DSXZZO1679457024052017000000" style="4"/>　図の中央に、労働生産性＝イノベーション／労働時間とあります。中長期の視点で新たな価値（分子にイノベーション）を効率的（分母に労働時間）に生み出している企業こそ労働生産性が高い組織だと考えたからです。　中央の労働生産性の周囲に4つ項目があります。イノベーションを増加させる2つの項目、「ダイバーシティ＆インクルージョン」と「プロフェッショナル人材育成」。労働時間を減少させる2つの項目、「働き方改革」と「アサインメント改革」。この4つの項目を強化させることで、労働生産性が高まることが分かったのです。では、もう少し詳細に説明していきます。■イノベーション創出に寄与する2つの道筋●ダイバーシティ＆インクルージョン　→　0.306＊＊（回帰係数）→イノベーション　ダイバーシティ＆インクルージョンに積極的に取り組んでいる大手企業は、イノベーションの創出に寄与していることが判明しました。0.306という数字は回帰係数を示し、＊＊は誤差が5％水準、つまり20社中19社であてはまるという事です。＊の数が多い方が、より精度が高いことを示しています。<PAGEBREAK/>　特に、「女性活躍推進」「外国人活用」「シニア人材活用」のそれぞれの指標を目標に設定している場合、イノベーションが進みやすいという因果関係があることがわかりました。自社の顧客と同様の属性の人材を採用し、多様な顧客ニーズを理解・共感し、商品開発、接客を行うことで生産性を高めているわけです。●プロフェッショナル人材育成　→　0.850＊＊＊（回帰係数）→イノベーション　社外に誇れる専門家・プロフェッショナルが2、3年前と比べて育っているかという質問の回答が、イノベーションの創出に対して誤差1％以内、つまり100社のうち99社は因果関係があることがわかりました。ダイバーシティ＆インクルージョンという多様な人材の活用に加えて、プロフェッショナル人材の育成を重視する企業でこそ、イノベーションが進むことは理解しやすいと思います。　日本企業はこれまでゼネラリスト育成の優先順位が高かったのですが、今後はプロフェッショナル人材の育成システムを整備する企業が増加するのではないかと思われます。■労働時間削減に寄与する2つの道筋●働き方改革　→　―2.17＊＊（回帰係数）→　労働時間　時間あたり生産性を意識した働き方の浸透や、業務プロセスの見直しなどの働き方改革に取り組んだ場合、当たり前ですが労働時間を減らす効果があることが分かりました。●アサインメント改革　→　―1.72＊（回帰係数）→　労働時間　社員には一人ひとりの能力に見合った仕事が与えられているという適材適所の実現や、上司による個人の能力・強みに応じたジョブアサインメントが行われているときに、仕事の効率化が進み、労働時間は削減されることも分かりました。　4つの人事戦略相互も正の相関性があることが分かりました。一見、バラバラに見える戦略要素も実は見えないところで連動しているといってもいいかもしれません。●ダイバーシティ＆インクルージョン　⇔　0.254＊＊＊（相関係数） 働き方改革●働き方改革　⇔　0.357＊＊＊（相関係数） アサインメント改革●アサインメント改革　⇔　0.424＊＊＊（相関係数） プロフェッショナル人材育成■これから労働生産性が高まる企業を選択する　上述の「人材マネジメント調査」の結果分析により、大企業で労働生産性が高い企業の特徴がわかってきました。イノベーションを起こせる会社は「ダイバーシティ＆インクルージョン」、つまり様々な人材がその個性を生かせるように働けている会社であり、加えてプロフェッショナル人材の育成に積極的に取り組んでいる会社です。　また、労働時間を減らせる企業は、働き方改革に積極的で、管理職のアサインメント改革に取り組んでいる会社なのです。また、この4項目は相互に相関があります。つまり、どれか一つに取り組めば、遅かれ早かれ他の項目にも取り組む必要性が出てくるはずです。冒頭にQ．あなたならどちらを選ぶ？ (1) 生産性が高い会社 (2) 生産性が低い会社と書きましたが、第三の選択肢がありそうです。(3) 生産性が高まり続ける会社です。　「ダイバーシティ＆インクルージョン」「プロフェッショナル人材の育成」「働き方改革」「アサインメント改革」の4項目への取り組み度合いを確認することで、今後、飛躍的に生産性を高め続けられる可能性が高い会社が分かります。あなたの会社はいかがですか？もし、転職を考えられるなら、この4項目をチェックされてはいかがでしょうか。※「<a href="http://style.nikkei.com/career/DF180320167080" class="m-inline_text">次世代リーダーの転職学</a>」は金曜更新です。次回は6月9日の予定です。<a href="http://style.nikkei.com/career/DF180320167080" class="m-inline_text">連載</a>は3人が交代で執筆します。中尾隆一郎 　<INSERT code="1" id="DSXZZO1525557013042017000002" style="2"/>リクルートワークス研究所副所長・主幹研究員。リクルートで営業部門、企画部門等の責任者を歴任、リクルートテクノロジーズ社長などを経て現職。著書に「転職できる営業マンには理由がある」(東洋経済新報社)、「リクルート流仕事ができる人の原理原則」(全日出版)など。

Q．あなたならどちらを選ぶ？
(1) 生産性が高い会社
(2) 生産性が低い会社

■日本企業の生産性はなぜ低い？

　現在、働き方改革により労働時間を減らそうという機運が高まってきているので、今後は労働時間の減少が期待される可能性がありますが、労働時間を減らすと成果が小さくなると危惧する企業も多いと聞きます。労働時間が減った分だけ生産量も減るとすると、日本企業の生産性は相変わらず低いままということになります。

■生産性が高まる大手企業の特徴

　私が所属するリクルートワークス研究所は、隔年で東証1部上場企業に対して「人材マネジメント調査」を実施しています。2015年のアンケート調査の分析によって持続的に生産性を向上している大企業の特徴が分かりました（図表参照）。

　図の中央に、労働生産性＝イノベーション／労働時間とあります。中長期の視点で新たな価値（分子にイノベーション）を効率的（分母に労働時間）に生み出している企業こそ労働生産性が高い組織だと考えたからです。

　中央の労働生産性の周囲に4つ項目があります。イノベーションを増加させる2つの項目、「ダイバーシティ＆インクルージョン」と「プロフェッショナル人材育成」。労働時間を減少させる2つの項目、「働き方改革」と「アサインメント改革」。この4つの項目を強化させることで、労働生産性が高まることが分かったのです。では、もう少し詳細に説明していきます。

■イノベーション創出に寄与する2つの道筋

●ダイバーシティ＆インクルージョン　→　0.306＊＊（回帰係数）→イノベーション

　ダイバーシティ＆インクルージョンに積極的に取り組んでいる大手企業は、イノベーションの創出に寄与していることが判明しました。0.306という数字は回帰係数を示し、＊＊は誤差が5％水準、つまり20社中19社であてはまるという事です。＊の数が多い方が、より精度が高いことを示しています。

　特に、「女性活躍推進」「外国人活用」「シニア人材活用」のそれぞれの指標を目標に設定している場合、イノベーションが進みやすいという因果関係があることがわかりました。自社の顧客と同様の属性の人材を採用し、多様な顧客ニーズを理解・共感し、商品開発、接客を行うことで生産性を高めているわけです。

●プロフェッショナル人材育成　→　0.850＊＊＊（回帰係数）→イノベーション

　社外に誇れる専門家・プロフェッショナルが2、3年前と比べて育っているかという質問の回答が、イノベーションの創出に対して誤差1％以内、つまり100社のうち99社は因果関係があることがわかりました。ダイバーシティ＆インクルージョンという多様な人材の活用に加えて、プロフェッショナル人材の育成を重視する企業でこそ、イノベーションが進むことは理解しやすいと思います。

　日本企業はこれまでゼネラリスト育成の優先順位が高かったのですが、今後はプロフェッショナル人材の育成システムを整備する企業が増加するのではないかと思われます。

■労働時間削減に寄与する2つの道筋

●働き方改革　→　―2.17＊＊（回帰係数）→　労働時間

　時間あたり生産性を意識した働き方の浸透や、業務プロセスの見直しなどの働き方改革に取り組んだ場合、当たり前ですが労働時間を減らす効果があることが分かりました。

●アサインメント改革　→　―1.72＊（回帰係数）→　労働時間

　社員には一人ひとりの能力に見合った仕事が与えられているという適材適所の実現や、上司による個人の能力・強みに応じたジョブアサインメントが行われているときに、仕事の効率化が進み、労働時間は削減されることも分かりました。

　4つの人事戦略相互も正の相関性があることが分かりました。一見、バラバラに見える戦略要素も実は見えないところで連動しているといってもいいかもしれません。

●ダイバーシティ＆インクルージョン　⇔　0.254＊＊＊（相関係数）働き方改革

●働き方改革　⇔　0.357＊＊＊（相関係数）アサインメント改革

●アサインメント改革　⇔　0.424＊＊＊（相関係数）プロフェッショナル人材育成

■これから労働生産性が高まる企業を選択する

　上述の「人材マネジメント調査」の結果分析により、大企業で労働生産性が高い企業の特徴がわかってきました。イノベーションを起こせる会社は「ダイバーシティ＆インクルージョン」、つまり様々な人材がその個性を生かせるように働けている会社であり、加えてプロフェッショナル人材の育成に積極的に取り組んでいる会社です。

　また、労働時間を減らせる企業は、働き方改革に積極的で、管理職のアサインメント改革に取り組んでいる会社なのです。また、この4項目は相互に相関があります。つまり、どれか一つに取り組めば、遅かれ早かれ他の項目にも取り組む必要性が出てくるはずです。

冒頭に

Q．あなたならどちらを選ぶ？
(1) 生産性が高い会社
(2) 生産性が低い会社

と書きましたが、第三の選択肢がありそうです。

(3) 生産性が高まり続ける会社

です。

　「ダイバーシティ＆インクルージョン」「プロフェッショナル人材の育成」「働き方改革」「アサインメント改革」の4項目への取り組み度合いを確認することで、今後、飛躍的に生産性を高め続けられる可能性が高い会社が分かります。あなたの会社はいかがですか？

もし、転職を考えられるなら、この4項目をチェックされてはいかがでしょうか。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は6月9日の予定です。連載は3人が交代で執筆します。

中尾隆一郎
　

リクルートワークス研究所副所長・主幹研究員。リクルートで営業部門、企画部門等の責任者を歴任、リクルートテクノロジーズ社長などを経て現職。著書に「転職できる営業マンには理由がある」(東洋経済新報社)、「リクルート流仕事ができる人の原理原則」(全日出版)など。

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