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決断力なき我々は〆切に頼る

2017年6月2日(金)

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 加計学園グループの問題で世間が騒然とするなか、5月31日、2020年の東京五輪・パラリンピックの開催経費を巡り、東京都と国、大会組織委員会、都外の開催自治体のトップらが総額1兆3850億円の分担について大筋で合意したというニュースが流れてきた。

 NHKのNEWS WEBのサイトは、このニュースを
《東京五輪費用負担 都・組織委・政府が正式合意》
 というヘッドラインで伝えている(こちら)。

 ニュースを見た視聴者は、
「いよいよ、五輪に向けた体制が本格的に動き出した」
 という感想を抱くことだろう。
 NHKの放送原稿は、そういうふうに書かれている。

 ニュースは小池百合子都知事の、
「地は固まった。大会を3年後に控えて準備を急がないといけない。まとまってよかった」
 という記者団への言葉と、森喜朗東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の
「一歩どころか、数歩、前に進んだ。鍵がかかっていた、その施錠が外れたということだと思う。各県の準備が加速すればもっといろんなことができるんじゃないか」
 という発言を伝え、さらに神奈川、埼玉、千葉、の各県知事のいずれも前向きなコメントを紹介している。

 以下、参考までにNHKが伝えた各自治体のリーダーの言葉を列挙しておく(上記ウェブより筆者が抜粋)。

●黒岩祐治・神奈川県知事:「もともと申し上げていたのは、立候補ファイルの原理原則を忠実に実行してほしいというただ一点だった。今回の合意は、輸送や警備の分野でも自治体が通常行っている行政サービスの枠を超える部分は負担しなくてもいいということで、ほぼパーフェクトに近いと感じている。前を向いて明るい気持ちでオリンピックの成功に向けて全力を注ぎたい」

●上田清司・埼玉県知事:「立候補ファイルなど原理原則を踏まえて負担するということが確認できてよかった。紛れもなく日本のオリンピックなので、遅れた分、東京都を全力で応援していきたい」

●森田健作・千葉県知事:「いろいろな混乱があったが、やっと元に戻ってスタート台に立ったという感じだ。これからは、小池都知事にしっかりとリーダーシップをとってもらい私たちもしっかり協力していく」

●熊谷俊人・千葉市長:「今後は、実務的にスピードアップし、とにかく時間がないので、成功に向けて、東京都や組織委員会と一緒になって取り組んでいきたい」

 朝日新聞の伝え方は、少しニュアンスが違う。31日の朝日新聞の朝刊の見出しは
《五輪経費分担、大枠で合意 都外自治体の負担額は先送り》(こちら
 と、合意があくまでも「大枠」にとどまっている点を示唆し、あわせて一部経費の扱いが先送りになっている旨を併記している。

 毎日新聞は、6月1日の社説で
《五輪経費で「大筋合意」 司令塔不在の不安が残る》(こちら
 として、はっきりと先行きの不透明さを指摘している。
 本文中で、社説子は、

《--略-- 国の担当者である丸川珠代五輪担当相は協議会に先立って、国と組織委、都の3者合意として「自治体が400億円負担」で固まったと発表した。これに対し、埼玉県の上田清司知事や神奈川県の黒岩祐治知事らが不快感を表明した。
 金額はその後、50億円圧縮されたが、頭越しの手法に、都以外の知事が反発したのは当然だ。
 五輪という国家プロジェクトに関する合意形成の進め方が拙劣と言わざるを得ない。 --略--》

 と、予算の決定過程およびリーダーシップの欠如に苦言を呈し、最後は、
 「責任の押し付け合いをしている場合ではない」
 という一文で社説を締めくくっている。

 私の感想は、毎日の社説が述べているところに近い。

 というよりも、このニュースについて私が最も強い印象を抱いたのは、一連の報道の中に、舛添要一前都知事が組織委員会に対して求めていた「法的根拠に基づいた支出の説明」がまったく示されていなかったことだった。

 われら都民は、理由や根拠を説明されないまま、支出だけを求められている。
 しかも、こうした状況について、都民のリーダーたる都知事ご本人が、「前進」であるかのようにコメントしている。

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「決断力なき我々は〆切に頼る」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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