加計学園の獣医学部新設をめぐる疑惑について、文部科学省前事務次官である前川喜平氏の発言が大きな波紋を呼んでいる。
加計学園は、愛媛県今治市に獣医学部を新設しようと15回も申請したが、却下され続けた。ところが、第二次安倍内閣発足後に風向きが変わる。今治市が国家戦略特区に指定され、獣医学部の新設が決まった。
問題は、そのプロセスだ。加計学園の理事長は、安倍晋三首相と非常に仲がいいと言われ、獣医学部開設において安倍首相が特別な配慮をしたのではないかという疑惑が持ち上がった。安倍首相自身、過去に同学園の役員を務めていたことも明らかになった。
文科省は当初から、「加計学園を特別扱いするのはよくない」と獣医学部開設に反対する姿勢を強めていたという。ところが、特区を担当する内閣府は「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」と言い、文科省に強い圧力をかけたとする記録文書が出てきた。
この文書は各新聞社にリークされ、朝日新聞が5月17日に1面トップで取りあげたことで大きな話題となった。
政府は、「こんな記録は誰がどう書いたか分からない」「文科省大臣もこの記録について調査をしたが、確認が取れなかった」と言い、怪文書の類いとして片付けようとした。しかし、当時の文科省の事務方トップだった前川氏が、「週刊文春」(17年6月1日号)で「この文書は本物である」と認めたのだった。
また、前川氏は5月25日の記者会見で1時間20分にわたり、次のように述べた。
「加計学園の獣医学部新設問題は、自分が事務次官を務めていた時に進められたことだ。安倍首相の意向により、根拠なく赤信号を青にさせられた。それに抵抗できなかった自分は、非常に情けない」