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専門家が鈴の効果に警鐘 音に耐性、警戒心薄れる?

秋田県内で発見された親子とみられるクマ=東北地方環境事務所提供
今年発生したクマに襲われたとみられる主な被害

 クマに殺傷される事故が昨年相次いだ東北地方で、今年も人的被害が続発している。秋田県仙北市では5月下旬、被害を防ぐ定番とされてきた「クマよけ」用の鈴を身につけていた61歳の女性が襲われ、失血死した。専門家は、クマに音への耐性がついていたり、逆に音がクマをおびき寄せたりしている恐れを指摘する。「鈴やラジオなど人工的な音を出せばクマは寄ってこない」という常識は、通用しなくなりつつあるのか--。

 秋田県警によると、女性は5月27日早朝、タケノコ(ネマガリダケ)を採るため友人と入山。途中で別れた後、山懐を走る国道から約30メートル離れた樹林内でクマに襲われたらしい。女性には頭や顔、左腕などにひっかき傷やかまれた痕があった。

 女性は鈴を2個身につけていた。しかし、クマの生態に詳しい秋田県立大の星崎和彦准教授(森林生態学)は、鈴をつけていてもクマと遭遇した例がいくつもあるといい、「そもそも鈴の音が聞こえる範囲には限りがある」と指摘。県警の担当者も「山菜を採るためしゃがんでいれば鳴らない」と鈴への過信に警鐘を鳴らす。

 秋田では5~6月、ネマガリダケ採りが盛んで、鈴のほか大音量のラジオを流しながら山に入る人も多い。しかし、星崎准教授は「近年はクマが車のエンジン音など人工音を聞く機会が増えている」と語り、音への警戒心が薄れている可能性を指摘。一方、NPO法人「日本ツキノワグマ研究所」(広島県廿日市市)の米田(まいた)一彦理事長は「ラジオの音に気付いたクマが人間に寄ってきたという事例が複数ある」と警告。音を聞いたクマが、餌となる物があると考え、おびき寄せられている可能性があるというのだ。

 環境省によると、昨年ツキノワグマやヒグマなどに襲われたとみられる死傷者は全国で105人で、5割超が東北地方に集中。うち秋田県は昨年5~6月に鹿角市で男女4人が死亡するなど、岩手県と並ぶ全国最悪の19人で、目撃件数も872件と10年前と比べて8倍以上に増えた。今年も仙北市で死亡した女性のほか、青森、岩手、宮城、北海道などで負傷者が相次ぐ。

 米田理事長によると、東北地方の今年の傾向として、2013年と15年に母グマの餌となるブナやドングリの実が豊作だったため、生まれた子グマが順調に成長し、個体数が増えた可能性がある。今はちょうど子グマが独り立ちし活発に活動する時期で「遭遇する可能性は高い」とみる。

 仙北市は死亡事故を受け、入山許可に当たる入山料の徴収をやめ、入山自粛を訴える。星崎准教授は「入山するならば、必ず複数人で離れず、声を出しながら行動して」と呼びかけている。【川村咲平】

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