トランプ大統領 パリ協定脱退の方針を発表

トランプ大統領 パリ協定脱退の方針を発表
アメリカのトランプ大統領は地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から脱退する方針を決定したと発表しました。脱退の手続きには時間がかかるものの、世界第2位の温室効果ガスの排出国であるアメリカの温暖化対策が後退し、世界全体の機運にも大きな影響が出ることが予想されます。
「パリ協定」は地球温暖化対策の国際的な枠組みで、2050年以降に世界の温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにすることを目標に掲げています。アメリカのトランプ大統領は日本時間の2日午前4時半ごろからホワイトハウスで「私は国民との約束を守る」と述べ、パリ協定から脱退する方針を決定したと発表しました。

パリ協定からの脱退の手続きには時間がかかるものの、世界第2位の温室効果ガスの排出国であるアメリカの温暖化対策が後退し、世界全体の機運にも大きな影響が出ることが予想されます。

トランプ大統領は去年の選挙中、地球温暖化について「でっち上げだ」などと否定的な立場をとり、パリ協定から脱退すると主張していました。このため公約を守り、アメリカ第一主義のもと環境問題よりも経済成長や雇用創出を優先する姿勢を鮮明にする狙いがあるものと見られます。

ただ国際社会がパリ協定にとどまるよう求めるなか応じなかった形で、反発が強まる可能性もあります。

パリ協定とは

「パリ協定」は、地球温暖化対策の国際的な枠組みで、世界全体の温室効果ガスの排出量をできるだけ早く減少に転じさせ、2050年以降に実質的にゼロにすることを目標に掲げています。

おととし12月にフランスのパリで開かれた国連の会議「COP21」で採択され、去年9月、世界1位と2位の排出国の、中国とアメリカがそろって締結を発表したことで、各国が次々と締結し、去年11月に発効しました。
今月1日の時点で締結した国は、日本を含む146か国にのぼり、世界全体の温室効果ガスの排出量の8割以上を占めています。

パリ協定では、先進国だけに温室効果ガスの排出削減を義務づけた「京都議定書」と異なり、発展途上国を含むすべての国がそれぞれ目標を立てて対策に取り組むことが定められ、日本を含む多くの国がすでに2020年以降の削減目標を国連に提出しています。

アメリカは、オバマ前政権のもとで2025年までに温室効果ガスの排出量を2005年に比べて26%から28%、削減するという目標を提出し、日本は2030年までに2013年と比べて26%、排出量を削減するとしています。
ただ、現在の削減目標では、すべての国が目標を達成したとしても、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑えるという、協定の目標は達成できない見込みです。

このため、各国は、国連に提出する削減目標を5年ごとに更新しさらなる削減を行うことが求められていて、目標をどう引き上げ、協定に実効性を持たせるかが課題となっています。

現在は、各国の削減目標の達成度合いを評価・検証するための具体的なルールなどを、来年12月に開かれる会議までに定めようと、交渉が重ねられています。

トランプ大統領の環境政策

アメリカのトランプ大統領は去年の大統領選挙中、地球温暖化について「でっち上げだ」などと述べ、否定的な立場をとり、パリ協定から脱退すると主張していました。
そして、大統領就任後すぐに、オバマ前政権では環境保護の観点などから認められていなかった原油パイプラインの建設計画を推進するよう指示するなど、環境問題よりも雇用の創出を優先する姿勢を鮮明にしました。

さらに、地球温暖化対策を推進してきた環境保護局の長官に、オバマ前政権の温暖化対策を強く批判してきたスコット・プルイット氏を起用したうえ、ことし10月から始まる2018年度予算の政府案では、環境保護局の予算をおよそ30%削減するほか、発展途上国の温暖化対策を支援する基金への拠出をやめる方針を示しました。

また、3月28日にはオバマ前政権が進めてきた地球温暖化対策を全面的に見直すための大統領令に署名しました。この大統領令は、アメリカ国内のエネルギー生産を妨げる規制や政策を見直すよう関係省庁に求めるもので、オバマ前大統領が温暖化対策の柱としておととし打ち出した、全米の火力発電所からの二酸化炭素の排出を規制する「クリーン・パワー・プラン」も見直しの対象に含まれています。
さらに、大統領令ではオバマ前政権が禁止した国有地での石炭の採掘について規制を廃止するとしています。

こうした、トランプ政権発足後の対応から世界第2位の温室効果ガスの排出国であるアメリカの温暖化対策が大きく後退するのではないかと懸念されています。

トランプ大統領は就任100日となる4月29日に東部ペンシルベニア州で演説し、パリ協定について、「中国やロシア、それにインドが何も貢献しないのに、アメリカは何十億ドルも払う一方的な協定だ。合意を完全に履行すれば最終的にアメリカのGDP=国内総生産が縮小する可能性がある」と述べ、負担が重いと非難しました。

また、トランプ大統領は、先にイタリアで行われたG7サミット=主要7か国首脳会議で「自然環境はとても重要だ。私は非常に気にしている」とする一方、雇用の創出を重視する姿勢も示し、「問題を理解し、正しい決定をしたい」と述べ、各国からパリ協定にとどまるよう求められていました。そして、パリ協定から脱退するかどうかについて近く結論を出す考えを示し、トランプ大統領の判断が注目されていました。