東京都議選(6月23日告示)に向けて、「小池新党」とも呼ばれる「都民ファーストの会」に注目が集まっています。
いったい、どんな地域政党なんでしょう。
BuzzFeed Newsでは、公約やこれまでの報道、取材を踏まえ、9つのポイントにまとめてみました。
1. ねらいは知事支持派で過半数
都民ファーストは、小池百合子知事が塾長を務める政治塾「希望の塾」を主宰する団体として、2016年9月に設立されました。
都議選を見据えて、地域政党として活動を始めたのは2017年1月。都議会での現有勢力は5議席です。
都議選における都民ファーストのねらいは、定数127の都議会において、小池知事支持派で過半数を得ることにあります。
2. もともと代表は小池知事じゃなかった
小池知事本人は「公務多忙」を理由に、4月末から「特別顧問」についていました。代わりに代表をしていたのが、知事の特別秘書を務める野田数氏です。
2009年から12年まで都議だった野田氏。自民党を離党後、新会派「東京維新の会」を立ち上げました。同会は都議会で「大日本帝国憲法」の復活を求める請願に賛同し、物議を醸しました。
ただ、党内からは小池知事に代表就任を待望する声も大きく、5月30日、小池知事は6月1日の決起大会で代表に就く考えを示しました。
3. 綱領が話題に
4月に発表された「都民ファーストの会綱領」は、その書き出しの壮大さから注目を浴びていました。
宇宙から夜の地球を見た時、世界は大きな闇と、偏在する灯りの塊に見える。その灯りの塊の最も大きなものが、東京を中心とした輝きである。
その輝きは、東京という大都市の力であり、経済の大きさであるが、同時に、そこにある一つひとつの灯りの下に、人々の生活があり、営みがあることを政治は想像できなければいけない。
都議団の音喜多駿幹事長は自身のブログで「やや情緒的だと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、こうした個性・らしさが大切」と説明しています。
綱領のなかでは、党の大原則は「都民ファースト」「情報公開」「賢い支出(ワイズスペンディング)」の3点だと記しています。
4. 目指すものは「東京大改革」
都民ファーストは「東京大改革」を旗印に掲げています。どういう意味なのでしょうか。綱領にはこう書かれています。
首都東京を、将来にわたって、経済・福祉・環境などあらゆる分野で持続可能な社会となりえるよう、新しい東京へと再構築すること。東京の魅力ある資産を磨き直し、国際競争力を向上させること。
都民一人ひとりが活躍できる、安心できる社会にステージアップすること
5. 議会の透明化や情報公開が主な政策
その改革の具体策として、5月23日に発表された基本政策は全13項目でした。
議会改革条例の制定や、「のり弁」と言われる黒塗り公文書をやめて情報公開を徹底化するなど、既存政治からの脱却が目玉政策になっています。
また、公共施設や飲食店の原則禁煙に加え、「子どもを守る」ために家庭内などでの規制を含めた「受動喫煙防止条例」の制定も掲げています。
# 忖度だらけの古い都議会を新しく
# 「のり弁」をやめます
# 利権を一掃します
# 待機児童対策を加速します
# 教育の機会を増やし、質を高めます
# 命を守る、頼れる東京
# 健康・長寿を誇る首都・東京へ
# ライフ・ワーク・バランスの徹底
# 成長し続ける都市・東京へ
# オリンピック・パラリンピックを成功へ導く
# 都民ファーストの視点で行政改革を徹底します
# 「多摩格差」を解消し、島しょ地域の魅力を世界へ発信します
# 都民の食の安全と安心を守ります
6. 市場問題については「知事を尊重」
築地市場の豊洲移転をめぐり、大きな混乱が続いています。自民・公明は移転に賛成、民進は条件付きで賛成、共産党は反対と、立場を明確にしています。
都民ファーストの会は基本政策の13個目で「都民の食の安全と安心を守ります」と市場問題に触れていますが、移転についての立場は明らかにしていません。
あくまで、「持続可能な市場の確立を総合的に判断し、知事の立場を尊重します」としているのみ。
そもそも小池知事は、豊洲から環境基準以上の汚染物質が検出されたために移転の決定を延期しましたが、その後、築地からも検出されています。
混乱は長引き、維持費ばかりがかかる状態に。自民党都連からは「早く移転を決断するべき」(下村博文会長)との批判もあがっています。
7. 自民、民進から移った議員も。
8. 公明や生活者ネットと選挙協力
支持勢力である「友党」は公明党と地域政党「生活者ネット」。
ともに政策協定を結び、都民ファーストは公明の全候補(23人)やネットの候補1人にも推薦を出しています。
また、民進党の支持組織である連合東京と政策合意をしました。
市場の移転問題などにおいて立場が違う政党との協力について、小池知事自身は「全く違った方向を向いているとは思わない」(朝日新聞のインタビュー)などと答えています。
9. というか何が都民ファーストなの?
先出の音喜多・都議団幹事長はBuzzFeed Newsの取材にこう説明します。
「いままでの都議会自民党がやってきた政治は、予算を一部の方々に差配するもの。税金の使い道が都民のほうを向いていなかった」
「そこを改め、いわゆる既得権をリセットして、本当に都民が必要としていることにお金を当てる政治をすることです」
音喜多幹事長は、「いままでの政治か否か」が争点だと指摘。小池知事のこれまでの成果として、「市場問題や予算編成過程で情報公開を徹底した」「政党復活予算を廃止した」ことなどを挙げ、その信任を争点化したい考えです。
そのうえで、都民ファーストは「既存勢力」である自民党都連との対決姿勢を強めています。ただ、知名度の低さが課題。小池都政における五輪費用の負担や市場問題をめぐる混乱の影響も必至です。
共同通信の最新の世論調査(5月26〜27日)では、投票先は自民党が17%、都民ファーストのが11%。「まだ決めていない」は49%と半数を占めており、この票の行方が今後の情勢を決めることになります。
Kota Hatachiに連絡する メールアドレス:Kota.Hatachi@buzzfeed.com.
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