2017年5月7日、次期フランス大統領にエマニュエル・マクロンが選出された。
昨年のBrexit、アメリカ大統領選に続いて、マリーヌ・ル・ペンによるポピュリズムの台頭が懸念された今回のフランス大統領選は、4月23日に行われた投票で過半数を獲得できた候補者が1人もいなかったため、規定通り、上位2名のマクロンとル・ペンによる決選投票に持ち越された。
5月7日の決選投票日直前になって、アメリカ大統領選におけるヒラリー・クリントン陣営のように、マクロン陣営を、これもまたロシアが関与したと噂されるハッキングが襲ったことで一瞬ヒヤリとさせられたものの、結果は投票総数の66%をマクロンが獲得し圧勝した。
ル・ペンは残る34%を得たに留まった。だが、ル・ペンが決選投票に残りそこで34%「も」の票を得た、という見方ももちろん可能だ。引き続きヨーロッパではポピュリズムの嵐が吹き荒れている。
それにしても、これほどまでに人口に膾炙した「ポピュリズム」とは本当のところ、何のことなのか。
今ひとつ釈然としない状況に対して、一つの明確な解釈を与える本が翻訳された。ヤン=ヴェルナー・ミュラーによる、その名も『ポピュリズムとは何か』である。
この本の意義をよく理解するためにも、もう少しだけ今回のフランス大統領選を振り返っておこう。
39歳のマクロンは今回の大統領選が初めての出馬であった。だが、既存政党に属さず中道左派として立候補し、見事、当選を果たした。
投資銀行に務めるバンカーであったが、その経歴はSciences-Po(シアンスポ:パリ政治学院)を経てENA(エナ:国立行政学院)を卒業するという、フランスにおけるエリートコースの最高峰の出身であった。
フランスに限らず、ヨーロッパ各国の要人が直前まで恐れたのは、ル・ペンの当選によって、フランスもEU離脱を示唆する、保護主義的で自国第一主義的な方向に政治の舵が切られてしまうことだった。
まさかのトランプ勝利、ヒラリー敗退という、去年のアメリカ大統領選を教訓にしたのか、選挙前には数多くのヨーロッパの政治家が、中道のマクロンを応援する発言をしていた。イギリスに続いてフランスまでEUから離脱するようなら、EUの存続自体が危ぶまれてしまうのは必至だったためだ。
だからマクロンの勝利に、多くの欧州要人がホッと一息つけたのが現実だろう。これでEU分裂というシナリオをまずは取り下げることができる。
EUにとっての次の関門は、9月に行われるドイツの総選挙に移った。