文部科学省初等中等教育局長といえば義務教育行政のボス。泣く子もいずれはお世話になる義務教育行政のトップある。シリーズ20回目は、文部科学省初等中等教育局局長の前川氏をゲストに迎えて、日本における教育の現状と改革を語っていただく。「授業のスタイルをこう変えちゃったらどうですか」、果敢に切り込む元中学校校長である藤原氏の大胆な発言に、慎重に言葉を選びつつも、徐々に乗ってくる前川氏、二人による丁々発止のやりとりも見逃せない。
前川氏は1979年東大卒業後、現文科省に入庁。総括審議官を経て、2013年現職に就任。 出会いは2000年。藤原和博氏は、文科省詰め凄腕NHK記者の紹介で、文科省の有望出世株5人と会う。その中の一人が前川氏で、ほかに今回の東京オリンピック誘致に奔走した藤原誠氏がいた。同氏は今年10月より前川局長を代行する官房審議官に就任している。 安倍内閣は、下村大臣下でスピードを上げた教育改革推進に向け、教育再生会議とは別に、それを実行するための教育再生実行会議を設置した。会議は、いじめ対策について、基本理念や体制を整備する法律の制定を提言。それに応じた与野党6党は、学校側の義務と自治体の責任を明確にした「いじめ防止対策推進法」を提出、今年6月21日国会で成立、9月28日に施行している。会議は、併せて道徳の教科化も示唆。教条的な押し付けではなく、解が一つではない事象の議論を通して、自ら考えさせる展開を提言している。 文科省の指導において、グローバル人材創出にも関連する小学校英語はどうか。現行は5、6年生に週1回外国語活動の時間がある。文科省は教育課程特例校制度を使ったこま数の増加、学年の前倒しを推奨しているが、いずれは中学校英語が下りてくる方向に進むだろう。コミュニケーションツールとしての英語に力点が置かれれば、中学校も含めて、業者外注の外国人教師が主で日本人教諭が従となる授業シーンが普通になるかもしれない。 佐賀県武雄市はこの反転構図を科目に取り入れ、多彩な授業アプリを搭載したiPadを全小中学校の児童・生徒に配布し、知識習得は端末で、個別学習、理科の実験や課題の討論などは集合学習、先生は理解未熟な部分のフォローと、部分最適の取り組みを始めている。 前川氏は、文科省の学習指導要領は、何を教えるかは書いてあるが、どう教えるかは担当教諭に委ねているので、いま小中学校の教育方針に欠けているのは、指導の方法論であると結んだ。