この詐欺グループのポイントは、メンバー全員が首都圏の「名門校の生徒」であること。そして全員が違う学校の生徒であることだ。また被害者役の子は、いかにも大人しそうな顔をした女の子が担う。髪はもちろん黒髪だ。ちなみに当時はガングロなる女子も巷にはびこっていて、女子高生といえば日サロで焼いた黒い肌に茶髪、ルーズソックスが定番だった。そんな時代に、名門校の制服を着た、しかも黒髪の少女が、まさか詐欺グループの一員だとは誰も思わない。そして、全員が違う制服を着た女子高生たちが、実はグルであることも分からない。たまたま現場に居合わせた義侠心のある女子高生にしか見えないからだ。

 もちろん、駅員室に行って駅員や警察官から学校名や名前を聞かれても、堂々と生徒手帳を見せる。これで大人はすっかり女子高生たちの言うことを信じてしまう。大人は名門校の女子生徒には甘いのだ。そして警察も検察も裁判官も、そんな大人の信頼厚い女子高生たちが言うことを、「信頼できる第三者の証言」として取り扱う。餌食にされた男性からすれば、どこの誰とも知れない女子高生たちがグルであることを立証するなど、まず不可能だ。

 かくして冤罪詐欺事件は成立する。駅員室に行く前に示談が成立すればセーフだが、駅員室まで行くことになっても駅員も警察官も女子高生の言うことをすっかり信用するから、男性は起訴まで持って行かれる。起訴されたら実刑がつくことが怖いので、裁判で有利になるようにほとんどの被疑者は示談交渉してくる。また、逮捕・拘留されても、起訴される前に示談できれば起訴猶予の可能性もある。いずれにせよ、被疑者は結局示談を持ちかける。これで女子高生たちは何がしかの金品を、ターゲット男性から巻き上げることになる。

 彼女たちのグループにはお嬢様校の生徒もいるが、高偏差値の進学校の生徒もいる。グループのメンバーの中には、全国模試で3位という女の子までいた。賢い女の子たちなので、防御策も完璧だ。彼女たちいわく「顧問弁護士がちゃんとついていて、恐喝にならないような交渉のやり方をしっかりとレクチャーされている」とのこと。もしターゲット男性との示談交渉になったとしても、しっかりとその顧問弁護士がサポートしてくれるという。「私たちの愛読書は携帯六法なんですよ(笑)。みんな、持ち歩いてますから」と屈託なく笑う彼女たちの笑顔に、話を聞いていた僕も、何とも複雑な心境になってしまった。

 今でもこのようなグループが存在するかどうかは分からない。ただ12年くらい前に、このような手口の被害に遭った男性がいるという情報も得ている。その男性は会社を辞め、今は海外で暮らしているという。彼は痴漢冤罪詐欺グループによって、人生をすっかり変えられてしまったのだ。今でも同様のグループが跋扈して、被害男性を生み出している可能性は否定できない。

 基本的に、僕は性犯罪の厳罰化を支持する立場だ。しかし厳罰化によって、この女子高生たちのように、巧妙に冤罪詐欺を仕掛ける犯罪グループが増えることも考えられる。男性諸君は、ますます自身の危機管理能力が問われる時代になるかもしれない。結局のところ、痴漢冤罪からもレイプ冤罪からも身を守るためには、自分でどうにかするしか方策はない。とりあえず、満員電車の中ですり寄ってくる女性にはご用心である。

ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソーシャルプランニング代表 竹井善昭)