書類には法律で保存期間が定められており、会社は法律に沿って書類を保存しなければならない義務があります。
会社では、履歴書、雇用保険などの社員に関する書類、労働組合、労使協定などの人事・労務に関する書類が多く存在し、厳重な管理をしなければなりません。
人事・労務関係書類は大きく「労働基準法」「雇用保険法」「健康保険法」の法律で決まっていていますが、中には法律の定めはないけれど保存したほうが望ましい書類もあり、どれくらい保存をすべきか悩ましいものもあります。
種類も保存期間も複雑な人事・総務関係の書類をどれくらい保存すべきかを期間や根拠法などを調べてまとめてみました。
*破棄にあたっては、必ず会社の税理士・弁護士等、その書類に関連する士業の方にご確認ください。
人事・労務関係書類の保存期間
永久
重要な人事に関する文書
書類 | 根拠 | 起算日 |
---|---|---|
定款 就業規則 社内規定 労働組合との協定書 雇用契約書など 人事・労務管理で最も重要な文書 |
法律などによる定めはなく、破棄をしても法律上罰則はありません。 ですが、例えば労使間で労働条件で重要な変更によるトラブルが発生した時、過去の変更点の提示を求められることもありえます。そのため、過去の文書も含め永久保存が望ましいです。 *労働基準法では3年保存とされていますが、文書の性格や上記の例の通り、永久保存が良いと考えられます。 |
完結した日から |
5年
社員の身元保証に関する文書
書類 | 根拠 | 起算日 |
---|---|---|
身元保証書、誓約書など |
*労働基準法では3年保存とされていますが、身元保証法第2条の内容を要約すると「身元保証契約は更新でき、その期間は最長5年」と定められているため、最長期間の5年を保存期間とし優先しています。 |
作成日から |
4年
雇用保険の被保険者に関する書類
書類 | 根拠 | 起算日 |
---|---|---|
雇用保険被保険者資格取得等確認通知書 資格喪失確認通知書(離職証明書の事業主控)など |
雇用保険法施行規則第143条「雇用保険に関する書類」 | 完結日(退職した日)から |
3年
社員・社員の賃金等に関する書類
書類 | 根拠 | 起算日 |
---|---|---|
雇入れ 解雇、退職に関する書類 |
退職、解雇、死亡した日から | |
賃金のその他労働関係の重要書類 (タイムカードなどの勤怠記録、残業命令書、残業報告書など) |
*賃金に関する書類で「賃金台帳」「給与明細」は労働基準法では3年保存とされていますが、国税法に定められている「源泉徴収簿、扶養・保険・配偶者特別控除に関わる書類」に該当するため7年保存となります。 |
退職、解雇、死亡した日から |
身体、知的、精神障害者であることを明らかにすることができる書類 (障害者手帳、診断書など) |
障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則第45条 | 退職、解雇、死亡の日から |
災害補償に関する書類 | 災害補償の終了日から | |
労災保険に関する書類( 各種療養・休業補償給付請求書、死傷病報告など) | 労働者災害補償保険法施行規則第51条 | 完結日(医師が治癒したと通告した日)から |
労働保険の徴収・納付等の関係書類 | 完結日(納付日など)から |
企画業務型裁量性に関する書類
書類 | 根拠 | 起算日 |
---|---|---|
企画業務型裁量労働制についての労使委員会の決議事項の記録 | 労働基準法施行規則第24条の二の三「第38条の4第1項、4〜7項(企画業務型裁量性の記述)」 | 有効期間の満了日から |
労使委員会議事録 | 労働基準法施行規則第24条の2の4 | 開催日から *企画業務型裁量労働制:事業の運営に関する企画、立案、調査及び分析の業務が対象の制度です(労働基準法第38条の4の1項に定められています) |
労働者派遣に関する書類
書類 | 根拠 | 起算日 |
---|---|---|
派遣元管理台帳 | 労働者派遣事業法第37条(派遣元管理台帳についての定め) | 契約完了日から |
派遣先管理台帳 | 労働者保険事業法第42条(派遣先管理台帳についての定め) | 契約完了日から |
2年
雇用保険に関する書類
書類 | 根拠 | 起算日 |
---|---|---|
雇用保険被保険者関係届出事務等代理人選任・解任届など | 雇用保険法施行規則第143条「雇用保険に関する書類」 | 完結した日から |
健康保険・厚生年金保険に関する書類
書類 | 根拠 | 起算日 |
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資格取得等確認通知書 資格喪失確認通知書 標準報酬月額決定通知書 算定基礎届など |
完結した日から |
まとめ
人事・労務に関する書類は個人情報も含まれているので、管理や保存期間を経過した後の処分も慎重に取り扱わなければなりません。
このように書類の保存期間や保存をしなければならない理由を法律と合わせて見ていくと、書類の管理など取扱いに対して意識の持ち方が変わるのではないでしょうか。