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2017年5月22日(月)

ツバメ 巣作りに人気の物件は?

今、子育て真っ最中のツバメ。
今年(2017年)も、東南アジアから日本各地にやってきました。
泥や枯れ草を積み重ねて巣を作り、卵を産み、ちょうどヒナがかえって、親鳥が一生懸命エサを運んで育てています。

「大きくなってくるのが分かると、本当にかわいいですよね。」

「『いつツバメが来るかね』『来た来た!』と言って、みんな喜んでいます。」

栃木県のこちらのお宅では…。

毎年この時期、大にぎわい!
今年も14組が“間借り”しています。
40年間、ツバメを見守り続けているんです。

「元気に育って、また来年戻ってきてくれればなと。」

高瀬
「ふだんは気づきませんでしたけど、あんなにいるんですね!」

和久田
「なんだかほっとしますね。」

佐藤
「こちらは今年最初にツバメが観測された日をまとめた地図です。

気象庁が毎年全国で観測を続けていて、例えば東京では今年4月17日に初めて飛んでいるのが確認されました。
東南アジアからやってきて、日本でヒナを育てて帰るツバメ。
その子育ての拠点が、時代と共に変化してきているんです。」

巣作りに人気の物件は?

東京・原宿のど真ん中に立つファッションビル。
駐車場の奥に、毎年ツバメがやってきています。

佐藤
「ありましたね!ツバメの巣。」

ライトの上の巣で、ヒナがすくすく育っていました。
新宿の高架下のトンネルの中にも…。

ひっそりと巣がありました。
実は、大都会のあちこちにツバメが巣を作っているんです。

ツバメの研究を行っている神山和夫(こうやま・かずお)さんです。
10年以上、全国各地のツバメを調査しています。

NPO法人 バードリサーチ 神山和夫さん
「ツバメは昔から人と一緒に暮らしてきた野鳥なので、街なかでも小さい自然があれば、エサをとって生きていけるんですよ。」

最近、都会のツバメに人気なのが「駅」。
のぞいてみると…。

内側に巣が見つかりました。

佐藤
「人通りが多いですけど、こういうところに作るものなんですね。」

NPO法人 バードリサーチ 神山和夫さん
「(ツバメの)天敵はカラスなので、人がいるとカラスが寄ってこない。
わざわざ人が多いところを選んでツバメは巣を作るんです。」

毎年、ツバメを楽しみにしている人もいます。

いました、いました!
こちらのクリーニング店では、10年以上前からツバメの子育てを見守っています。

クリーニング店 横山美樹さん
「みんなのアイドル。
今の時期、(衣がえで)繁忙期でお待たせしてしまうことがあるんですけど、ツバメさんたちがいるおかげで、(お客さんも)和んですごく助かっています。」

巣の下に落ちていた卵の殻も大事にとっています。

クリーニング店 横山美樹さん
「わが子のように無事に育ってほしいなって思っているんですけど、全部巣立ってしまうと寂しいな~って。」

親鳥だけでなく、地域の人の愛情にも支えられているんですね。

道の駅 サービスエリア… 工夫でツバメ優しく見守る

カワイイツバメですが、ちょっと困るのが、フン。
掃除するのも大変ですよね。

山口県のタクシー会社では、車庫の天井一面にビニール傘をつるしてフンをブロック。
車両が通る地面にヒナが落ちるのも防いでいるんです。

このフン害に苦労しているという場所をたずねました。
茨城県にある道の駅です。
実は道の駅や高速道路のサービスエリアは、最近ツバメに人気の物件なんです。
24時間、人の出入りがあり、しかも周辺にはエサ場となる自然も多いからです。
ちょっと問題なのが、多くの人が利用するトイレの周りにできた巣。

床には、やはりフンが…。

道の駅 ごか 竹政敏明さん
「フンがかかってクレームになったこともあるんですけど、毎年楽しみに見に来るお客さんもいて、その辺が難しいです。」

そこで、神山さんからこんなアイデアが…。

NPO法人 バードリサーチ 神山和夫さん
「こういうものを使って受けることにしています。」

これは、「フン受け」です。
段ボールなどでも簡単に作れます。
組み立てて、巣の下にテープでとめて使います。

佐藤
「これをつけるだけで、フンの被害を解消できる?」

NPO法人 バードリサーチ 神山和夫さん
「ツバメはヒナが巣の縁にお尻を出して真下にフンを落とす。
ここに置いておけばまっすぐ落ちてきて、全部この上にのっかります。」

さらに、こんな対策もあります。
神奈川県西部のパーキングエリアです。
ここで使っているのが…。

パーキング施設管理 芹沢哲也さん
「これが人工巣。」

コルクや粘土などを使い、本物そっくりに作った人工の巣です。
ツバメは子育てが成功すると、翌年も同じ場所に戻ってくる習性があります。
そこで、どうしても作られると困る場所はふさぎ、その近くに人工の巣をつけて誘います。

こうすることで、人にフンがかかりにくくなるという作戦です。
試しに今年、人工巣を設置したところ、無事、ツバメが入居。
中に卵を産みました。

巣の中に泥やワラを運んで、自分好みにカスタマイズしています。
このパーキングエリアでは、今後数年かけて対策を進めていく予定です。

パーキング施設管理 芹沢哲也さん
「やはりお客様第一なので、お客様を不快にして(ツバメが)入るようなことは避けたい。
ちょっとでも気持ちよく帰っていただきたい。」

NPO法人 バードリサーチ 神山和夫さん
「ツバメが生きていくために必要な緑や水辺は、人が快適に暮らしていくためにも必要。
ツバメが好きな人も、ちょっと迷惑と思う人も、優しく子育てを見守ってほしい。」

工夫で優しく見守る

和久田
「あの手この手で工夫して見守っているんですね。」

高瀬
「なんだか、なごみましたね~。」

佐藤
「まだあります。
ツバメのために、こんな粋なはからいもあるんです。
こちら、東京・多摩市の博物館が地元の人たちと作った人口の巣。
その下には…。」

和久田
「“入居者募集中”!
おもしろいですね。」

佐藤
「ちょっと不動産屋さんのような、ツバメ向けの看板です。」

高瀬
「で、入居者は見つかったんでしょうか?」

佐藤
「えー、大変残念ながら…まだ入居者ゼロでございます。
学芸員の仙仁さんは、『駅近・エサ場まですぐの好物件』ということで、ぜひ見に来てほしいと。」

高瀬
「新築ですしね!」

佐藤
「今なら大変お得かもしれません。
VTRでもご紹介した『フン受け』ですが、つけ方にポイントがあります。

巣ができてすぐにつけるとツバメが警戒してしまうということで、卵を温めるようになったあと、巣から30センチ以上離してつけるのがいいということです。
さあ、ツバメたちはこれからどう過ごすのか、一例をまとめました。

今月(5月)の末から来月(6月)にかけて、徐々に巣立ちはじめます。
巣を出てからもしばらくは近くで親からエサをもらって、飛ぶのに慣れていき、8月ごろには東南アジアに向けて出発する予定です。」