東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

公文書管理 意思決定が見えるよう

 学校法人加計学園をめぐる「文書」は怪文書扱いだった。森友学園への国有地売却の関連文書は財務省で廃棄されたという。役所での文書の扱いがあまりにずさんだ。公文書管理を見直すべきだ。

 公文書管理法という法律がある。第一条に崇高な目的が書かれている。まず公文書とは「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であると位置づける。だから、それに鑑み「現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的」としているのだ。

 さらに第四条でもこう記す。「行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程」をも合理的に後になって検証することができるように、文書を作成することを義務付けるのだ。

 つまり行政機関の意思決定のプロセスが現在・未来の国民にもよくわかるようにするために、この法で定めているわけだ。

 ところが、昨今、政権周辺で起きていることは、この精神をまったく踏みにじっている。むしろ国民に知らしめないために文書がなかったことにしているかのようだ。その典型例が陸上自衛隊の南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣をめぐる行政文書である。

 「戦闘」などの表現が入った日報の原本が削除されたのである。その後、写しファイルが別の部署で見つかったにもかかわらず公表せず、「情報隠し」と厳しく指摘される事態になった。

 大阪の学校法人「森友学園」に国有地が格安で払い下げられた問題では、財務省との交渉内容が焦点だ。だが、国会答弁で同省は「記録の保存期間は一年未満。速やかに廃棄した」とし、電子データも同様に削除したという。

 しかも、六月には財務省は省内システムを入れ替える。記録の復元が不可能になる恐れがある。八億円もの値引きに関わる証拠書類の保存期間は五年に該当するという指摘もある。恣意(しい)的な解釈で記録を廃棄した判断には違法性すら伴う可能性があろう。

 「総理のご意向」と書かれた加計学園をめぐる文書もそうだ。政府は「確認できない」とするが、前川喜平・文部科学省前事務次官が存在を認めている。同省内で作成されたことなどを極めて具体的に証言している。

 前川証言に基づけば、怪文書どころか立派な行政文書である。省内に残っているはずであり、国会などで意思決定がどう働いたか徹底追及してもらいたい。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】

PR情報