TEDにも登壇した「今もっとも注目を集める公務員」がもつ「圧倒的当事者意識」とは?
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Mugendaiより抜粋・編集:地方創生・官民協働…社会課題解決のため、イノベーション創出の重要性が叫ばれているが、実効性を持った解決の切り札はなかなか見えていません。
そんな中、「地方が抱える課題は複雑化・多様化している」と語るのは、長野県・塩尻市職員の山田崇さん。同市シティプロモーション係の係長だが、「TEDxSaku」に登壇し、精力的に全国各地を飛び回り、地方創生に関する講演活動を行うなど、いまもっとも注目を集める公務員として知られています。
不確実性が増すこの時代、「まだ見ぬ新しい価値を創出すること」が課題である点は、企業も変わりません。先進的な民間企業のメンバーと共に地方の課題について、行政施策立案を続ける山田氏に、地方再生へのアプローチやイノベーション思考の重要性について話をうかがいました。
公の立場から民とともに、地方の問題を解決する上で重要な「ATI」という考え方
山田:今、官民協働フォーラム「MICHIKARA」(ミチカラ)というプロジェクトに取り組んでいます。これは、行政だけではすぐに解決が難しい、雇用や子育てに関する諸問題についての取り組みです。官民協働で本気で取り組む覚悟のある自治体と、民間企業のリーダーをリアルに結びつける場を提供しています。そこで企業の方が盛んに言っていたのが、「ATI」という言葉です。
「圧倒的(A)」「当事者(T)」「意識(I)」の略で、課題を持つ現場の「声なき声」に応えているのかという問いかけです。課題解決は、ただ傷口に絆創膏を貼るような対症療法では根本的解決には至りません。本質的課題に光を当てるためには、まずはメンバー全員が当事者になることが大事です。これをしないと、まったく違う解決策を導いてしまうかもしれない。そんなことを、民間企業の皆さんと協働する中で気づかされました。
山田さんは2009年頃から、地元の人々の視点を理解すべく、独自の活動を重ねてきました。
山田:あるとき市の職員として、準備室の市民活動支援の会議に補助金、交付金を運用する側として出席することになりました。その際、NPO法人代表の方と議論になり、「市民活動もしたことがなく、ましてや税金で給料をもらっている市職員の自分が、本業とは違うことに自分の時間を割いて取り組んでおられる市民活動を支援できるのか」ということに気づきました。
そこで、まず自分も市民活動に取り組んでみようと考え、アートをキーワードにしたワークショップの実行委員会を立ち上げました。
その後、2011年から手がけた空き家プロジェクト「nanoda(なのだ)」を実践する中で、行政が見落としがちな「当事者にとっての課題」を自力で発見します。
山田:最初に空き家を借るときの内見の際、「土足で上がっていい」と言われました。「掃除をしていないから」という理由でしたが、そこで「もしかしたら、空き家の掃除に悩んでいる人が多いのでは」と感じて、掃除をして回りました。
行政は、シャッターが閉まった商店街のシャッターを開けるため、家賃補助や改修費用負担など、「借り手」視点で施策を考えがちです。しかし、問題はそれ以前にあります。中が「貸せる状態」になっていない、あるいは、貸すつもりがあるのかどうかという問題です。
私たちは、掃除をさせていただいたあと、大家さんたちとともに食事会をして、「空き家って何だろう」と話をしました。「どうして空き家になったのか?」「昔の商店街はどんな様子だったのか?」「どんな商売していたのか?」「これからどんな街になってほしいか?」、そして、最後に「この空き家をどうするか?」ということを聞きます。
「nanoda」では、2名の空き家コーディネーターが、地域の空き家がどうなっているか、現地の物件を見て回ることに取り組んでいます。こうした取り組みは、大家さんに改修補助金を出すことだけでなく、片づけや、場合によっては取り壊しに関する補助金を出す施策につながっているのだそうです。自発的な行動が山田さんの視野を広げた結果です。
山田さんは地方でのイノベーションに必要なものとしてあるものを挙げています。それには「nanoda」を始めたころに受けた「市職員が何をやっているんだ」という反応が反映されているようです。
続きは以下のリンク先から。
圧倒的当事者意識を持つ公務員の挑戦――地方再生には「寄り添う覚悟」が必要 | Mugendai(無限大)
(ライフハッカー[日本版]編集部)