華やかになるBitSummitと失われゆくアイデンティティ。不透明な選考が生んだ影
- 特集記事
- 2017年05月30日
5月20日から21日まで、京都のみやこめっせで行われたインディーゲーム博覧会BitSummit。
過去最高の入場者を記録したこのイベントは、多くのゲームが展示され、新しい出会いのある良いイベントだった。
しかしながら、華やかに見える影で問題も見えつつあるように感じられた。
BitSummitは「日本のゲームを世界に」という標語で始まったインディーゲームの博覧会である。
海外から選び抜かれた精鋭ゲームが展示され、それを体験するだけでも楽しい。普段遊んでいるゲームの開発者が来日して、ゲームの話を聞けるだけで素晴らしい。
ソニーと任天堂が同時に自社ハードで販売されるインディーゲームの出展をしていて、クオリティの高いゲームを先行体験できたのには驚いた。
また、ステージでは常に何かしらのトークセッションが行われていて、暗い会場は雰囲気もある。
行っても見ても楽しいイベントで、客としての満足度はあった。
実際、6,000人以上の来場者を記録したそうで、イベントとしての形も良くなっていれば、知名度も上がっているのは会場にいて感じられた。
ゲームキャストでも多くのゲームについて書いたので、ぜひ記事を見て雰囲気を感じて欲しい。
隠されたインディーゲーム7選。これから人気が出そうな作品たち
BitSummitスマホゲームまとめ
ただ、イベントが大きくなる一方でBitSummitはアイデンティティを喪失しかけているようにも見えた。
もともと日本インディーを海外にアピールするイベントだったはずだが、企業ブースが大きく任天堂ブースもソニーブースも海外ゲームが大半を占めていた。そこに加えて大きな海外インディーブースが存在するため、実質的に海外ゲームを日本に紹介する博覧会になっていた。
また、イベントに対する海外注目度も低くなっているように感じた。過去にはあった海外TVの取材もなかったようだし、海外記事をあさっても取りあげ方は小さかった。
▲海外で一番見たのははこれかも
日本のゲームの注目度は低く、IGNの「BitSummitで見つけた18の良いゲーム」特集でも日本のゲームはたった4作。しかも、BitSummitで初めて注目された作品は『ライジングアーチ』1作。
イベントが大きくなる中でBitSummitの存在意義を変更するか、それとも本道に立ち戻るのか考える時期にきているのではないかと感じた。
▲スマホは遅れるそうなので、今回ゲーキャスでは紹介していないが良い
また、外から見えづらいところでBitSummitはもう1つ課題を抱えている。それは「ゲーム審査・選考基準が不透明」ということだ。
5月21日、BitSummitと同じみやこめっせで行われていたゲーム展示・頒布イベントMegabit Convention(メガビット)の参加者は、もともとBitSummit応募者が多かった。
しかし、会場では「不透明な選考基準でBitSummitを落とされた」不満が多く聞かれ、そのためにメガビットに参加したことを明かすサークルも多かった。
メガビットは、BitSummitの不明瞭な審査基準が産み落とした弟とも言える存在だったのだ。
ただ、メガビットの存在自体は決してネガティブなものではなかった。
面白いゲームが山盛りで、「ここにしかないゲームを作る」ことをインディー魂とするなら、その志はBitSummitよりも濃く貫かれている。
▲確かに、ココにしかない!チョコ山さんのメガドライブでパワーグローブでうんこ!
— MEGABIT CONVENTION (@MEGABIT_CON) 2016年7月9日
うんこを体感せよ!! #megabitc pic.twitter.com/s041UHLGNm
BitSummit出展を落とされたサークルが多く参加していており、BitSummitに対するライバル意識で「俺たちの面白いゲームを見てくれ!」という団結感を感じた。
実際、落とされた作品は一様に強烈な個性を持っており、イベントとしてメガビットの個性を出すに至っていた。
BitSummitはオシャレな日本のインディーを扱い、メガビットは同人の流れを汲むゲームを扱い、この2つのイベントは同じインディーゲーム博覧会だが、補完的な展示を行って異なる個性を出していたのである。
実際、両イベントを見終わったときには全てのインディー欲が満たされ、フルコースを食べたあとのような満足感であった → 「メガビットコンベンション」のほぼ全て[前]
現在は呪われた双子のような立ち位置になってしまっているが、BitSummitとメガビットは切り離せない兄弟のような存在だ。今後はお互いの存在を認め、一緒に発展してくれることを願いたい。
来年のBitSummitは選考基準が明確化してアイデンティティを確立し、「お前はBitSummitとメガビット、どっちの寄りの作品を作る?」という会話が開発者の間で交わされ、会場では「BitSummitから帰る前にメガビットを見ようぜ!」という会話が見られることを期待したい。
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