需要は安く使えるシニア 「有効求人倍率改善」のトリック
■若年層へのニーズ薄
経済のプロも指摘する。
「25~29歳の若者に対する求人数はほとんど増えていないのが実情です。リーマン・ショック以前の06年と比べ、現在の求人数は7割にとどまっています。それなのに全体の有効求人倍率は回復してきた。どういうことかというと、50~59歳の求人数が極端に跳ね上がっているのです。間違いではないかと思い、何回も統計数値を見直しましたが、結果は変わりませんでした」(第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏)
25~29歳の有効求人倍率は、95年以降、0・8倍前後に張り付いている。一方、0・4倍付近をウロウロしていた50~59歳は、ここへきて一気に0・9倍前後まで伸び、若者を追い抜いた。60~64歳も09年の0・4倍前後から0・7倍近くにハネ上がっている。
「企業が欲しい人材はパートやアルバイト、シニア層、リタイア組と人件費を低く抑えられる人たちばかりです。将来の日本経済を背負う若者には目もくれない。近ごろの企業業績の好転も、円安効果と低賃金の労働者増加による人件費抑制に過ぎません。これでは本格的な景気回復は期待できない」(株式評論家の倉多慎之助氏)
安倍政権の経済政策は、法人税減税や株価対策など目先の効果を狙うものばかり。このままでは日本経済の先行きは真っ暗だ。