金融庁と個人投資家の意見交換会で感じた利害の一致

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先日、金融庁と個人投資家の意見交換会に行ってきました。そこで感じたことを書きます。

イベントは、金融庁が積立NISAについて30分程度説明をして、あとは参加者からの質問をうけるという形で行われました。

積立NISAの説明は、日本の家計資産が現預金に偏重していること、現行NISAの非稼働率が高いこと、積立・分散投資の有効性、積立NISAの概要、対象商品の要件などについてでした。追加で、投資教育を促進するアイディアが提案されました。

参加者からの質問と金融庁からの回答は長時間かつ多岐にわたったため、個人的に興味深かった部分について書き残しておきます。

  • (金融庁)個人投資家のエントリーも、金融機関のエントリーも、同じ10月から
  • (金融庁)既存NISAの制度は平成35年に終わる絵になっているが、租税特別措置は延長されるケースも多い
  • (iDeCoの申込みが煩雑すぎるという意見に対して金融庁)iDeCoさんに言っておく
  • (金融機関にメリットがなさすぎではないかという意見に対して金融庁)900兆円の1割が投信に流れ込めば信託報酬が50bpでも年間4,500億が入ってくる世界でも稀なビッグビジネスになり得る
  • (金融庁)積立NISAの対象商品には厳しい条件をつけたうえで、途中で運用をやめるようなことはないように指導しているので、運用会社もNISA目当てで投信を乱造することはできないだろう
  • (金融庁)積立NISAの対象指数にMSCI KOKUSAIは入っていないが、但し書きの適用で対象指数になる
  • (参加者)金融庁には立派な金融教育プログラムはあるが、もっと手軽な家庭で使えるようなものがほしい
  • (参加者)金融機関を通じて投資教育をさせるのは間違いで、カモ養成にしかならないのではないか。NHKのEテレで教育するのがよいのではないか
  • (子供1人育てるのに20年かかるので積立NISAの非課税期間20年では足りないという意見に対して金融庁)僕の目には20年以降も先まで続いて見える(会場爆笑)
  • (金融庁)こういうとおこがましいが、GPIFの4兆円マイナスで大騒ぎするようなメディアを啓発する必要はあるかもしれない
  • (参加者)最近の若者はテレビを見ないので、本日のような金融庁の本音ベースの話を動画配信すればよいのではないか
  • (参加者)労働組合の職場委員や彼らが企画する勉強会で、社員に投資の話を伝えていってはどうか

  • (水瀬のメモベースなので細かいニュアンスは再現できていない場合がありますがご容赦ください)

参加者からも金融庁からもたくさんの本音ベースの話が飛び出て、とてもおもしろかったし、なかには「その発想はなかった」と唸らされる意見もあったように思います。

参加者側の意見をどれくらい金融庁がすくい上げてくれるかわかりませんが、金融庁側もかなり突っ込んだ意見をしていたところをみると、間違いなく「刺激」にはなったであろうと思います。

金融庁の話を聞いていて私が感じたのは、私がこのブログで、金融機関や金融商品は「こうあってほしい」「こうあるべきだ」と主張してきたことと驚くほど齟齬(そご)がないということです。

まるで個人と金融庁の利害が一致しているかのような感覚にとらわれました。じつに頼もしい。

一方でこれは、かつて「護送船団方式」と呼ばれ金融庁が金融業界全体を守ってコントロールしていた頃や、私がインデックス投資をはじめた10数年前に金融庁が銀行や郵便局に投信窓販を解禁した頃とは、まったく違った金融行政の態度です。

ある意味では(たとえば金融機関側から見たら)、金融行政の「変節」でもあるといえるかもしれません。これを「変節」と受けとめるか、「改善」と受けとめるかは、立場によって違うでしょう。

とはいえ、世界の潮流は、スチュワードシップコードやフィデューシャリー・デューティーのようなソフト・ロー的なものにより、金融機関が情報格差を利用して、投資家から暴利を貪ることを排除する方向にあるように思います。

積立NISAの対象商品にこんな厳しい条件をつけては、「金融業界が立ち行かなくなる」とか「投資家もろとも共倒れだ」とか、そういった言説を散見します。一見ごもっともな感じはします。

しかしながら、金融の歴史をよく調べてみると、日本においても、投資のプロ(機関投資家)の間では10年以上前からこの条件と同等程度の超・低コストインデックス運用が資金運用の中心でした。個人向けのまともなインデックスファンドがほとんどなかった(できてもすぐにつぶされた)時代から、機関投資家の間では超・低コストインデックス運用が中心でした。

積立NISAの対象商品の条件は、機関投資家と同じ金融サービスレベルを個人向けにも提供するようになっただけのこと、つまり、一物二価の解消というきわめてシンプルな金融行政の「改善」だと私は思います。

今後は、現在の3種類あるNISA(NISA、ジュニアNISA、積立NISA)を初心者でもわかるようにシンプルに一本化して、もっとも投資家の使い勝手がよいものにしていただきたい。そして、積立NISAに限らず、日本の投信も米国のように「長期・分散・低コスト」運用に向いたものが増えていくといいなと期待します。

最後に、いまは結果的に個人と金融庁の利害が一致していますが、前述のとおり、金融庁もずっと同じ態度でいるとは限りません。せっかく個人の方を向いてくれた金融庁に、「やっぱり個人投資家はバカだな。意見を聞く必要などなかったのだ」と翻意されないように、個人側も最低限のことは学んでいきたい。

参加者と金融庁のやりとりを聞いていると、時代は移り変わっていくのだなとしみじみ思うと同時に、一生勉強だなと思いました。うわ、すげえ爺くさいことを書いてしまいました。反省。


<関連が深い過去記事>
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