感染するとどうなる?ハンセン病が原因で起こる症状

更新日:2016/12/09 公開日:2016/11/17

ハンセン病の基礎知識

病原性抗酸菌のらい菌が原因で発症する慢性細胞性感染症・ハンセン病になると、どのような症状が現れるのでしょうか。初期症状から後遺症をはじめ、診察や治療方法などについてドクター監修のもと解説します。

ハンセン病の症状

らい菌による感染が原因となって発症するハンセン病は、主に皮膚と末梢神経に症状が現れる細胞性感染症です。初期症状は、皮膚に斑紋(はんもん)が現れたり、エンドウ豆以上の大きさの発疹が生じたりします。治療せずに放置すると運動障害や目の障害が現れ、顔や手、足が変形するなどの後遺症を生じることがあります。また、ハンセン病患者によって、症状の現れ方が違ってくるという特徴があります。詳しくは、『らい菌による感染症、ハンセン病とは?』をご覧ください。

・皮膚の斑紋(はんもん)

皮膚に白色や赤色、もしくは赤褐色の斑点が見られます。患部の感覚がなくなるため、無痛でかゆくもなく、触ってもわからない知覚麻痺が起こります。そのため、知らない間にヤケドやケガをすることがあります。

・皮膚萎縮による発汗障害

知覚麻痺に加えて皮膚が萎縮することもあります。皮膚が萎縮すると発汗障害が生じて乾燥による皮膚障害を引き起こします。

・顔の障害

顔面の表情筋に分布する顔面神経や、口に入れたものを噛むために主にあごを動かす神経に関係する三叉(さんさ)神経が麻痺することがあります。そのため、顔の変形や目を閉じることが困難になったり、口が閉じにくくなる、流涎(りゅうぜん)などの障害が生じることがあります。

・目の障害

目が閉じにくくなることから目が乾燥して角膜乾燥を引き起こしたり、傷つけたり、緑内障や虹彩の癒着などが起きることもあります。

・運動麻痺

場合によっては、運動麻痺や筋が萎縮する筋萎縮を起こすことがあります。運動麻痺が進むと、後遺症として顔や手、足が変形します。この他の後遺症には、男性の女性化乳房などもあります。

ハンセン病は治るのか

1943年、アメリカのハンセン病療養所で、治療効果のある注射薬が報告されて以来、次々に新薬が発見されたことで、現在は早期発見と早期治療で治ります。治療方法については『ハンセン病はどのように感染する?感染経路と世界の現状』をご覧ください。

ハンセン病の診断方法とは

ハンセン病を診断する際は、皮膚や神経に関する症状を確認し、皮膚スメア検査を行います。その結果から、らい菌が感染しているか否かを診断します。

・皮膚スメア検査

痛みを感じないなどの症状が現れている皮膚の部位にメスを刺します。メスに付着した皮膚の組織液を染色し、顕微鏡でらい菌に感染しているか否かを確認する検査です。皮膚にできた皮疹が6個以上で検査の結果が陽性の場合は多菌型、皮膚の皮疹が1~5個で検査の結果が陰性の場合は少菌型に分類します。各型に相応しい治療方法を行います。多菌型、少菌型については、『らい菌による感染症、ハンセン病とは?』をご覧ください。

日本人にハンセン病の新規患者はどれだけいるのか

ハンセン病の原因となるらい菌は感染力が弱い上に、治療法も確立されているため、日本国内での日本人の新規患者の増加は、毎年、数名程度です。

・日本人の患者の特徴

新規患者は高齢者が多く、過去にらい菌に感染し、高齢になり免疫力が低下したことで発症すると考えられます。

・在日外国人の患者の特徴

在日外国人の患者は20代、30代が多いとされています。その理由は、日本の新規患者がほとんど増えていないのに対して、世界には未だにハンセン病の新規患者が増えている国があり、乳幼児期のらい菌の潜伏期に来日して、成人後、発症すると考えられます。新規患者数が増えている国に関して、詳しくは『ハンセン病はどのように感染する?感染経路と世界の現状』をご覧ください。