「∞(むげん)プチプチ」などのヒット商品を生み出した高橋晋平氏は「TEDxTokyo」に登壇するなど、企画・アイデア発想の名手としても知られる。その高橋氏が世の中で話題となっている“トンガリ商品”をピックアップし、開発者に直撃。企画の源泉とアイデアの“転がし方”を探っていく。

 今回の対談相手は、「大人のための数学教室 和(なごみ)」を運営する和から(わから)の堀口智之社長。開校以来、生徒数はじわじわと増え続け、今は約400人ほどの生徒が通っているという。いったい誰がどんな目的で大人の数学教室に通うのか。高橋氏が迫る。

和から(わから) 堀口智之社長(写真右)。新潟県南魚沼市出身。2010年に自己資金10万円で社会人向けの数学個別指導塾「大人のための数学教室 和(なごみ)」を設立。2011年3月に法人化。現在は渋谷・新橋・大阪などで教室を展開し、月間400人以上の生徒が通う。他にもやわらか数学ゼミやロマンティック数学ナイトなどの数学事業を企画している
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微分・積分とか、実生活でどう役立てるのか分からない

高橋晋平氏(以下、高橋): 大人のための数学教室と聞いたとき、「こんなに数学を学びたい大人がいるんだ」ということに驚いたんですよ。僕は学生時代、わりと数学は得意だったんですけど、理論をちゃんと理解していたわけでなく解けるから解いていたんですよね。二次関数とか行列とか微分・積分とか、実生活でどう役立てるのか、いまだに分からないです。どういう人が通っていて、どんなことを教えてもらえるんでしょうか。

堀口智之氏(以下、堀口): まずは仕事の上で必要に迫られて来る方が多いですね。例えば、経理だけど数字が苦手という方は、数字を好きになるための話から始めます。例えば、株価の話。株が10%上がってから10%ダウンします。そうすると株価はどのくらいになりますか、という問題なんですけど。

高橋: なるほど、面白いですね。

堀口: 普通に考えたら、10%上がってから10%ダウンしたら元に戻りますよね。だけど、計算してみると99%になっている。

高橋: そうですよね。

堀口: あとは、「1億円の売り上げの店舗が1万店あります。売り上げの合計はいくらでしょうか」というような、大きな数字の掛け算をより早くやる方法を身につけたいという方もいます。授業のカリキュラムはなく、即興で行う形式。今まで「数学の先生にこれを聞いたら怒られる」というイメージを持っていた人もいるかもしれませんが、どんな質問でもばかにされるようなことはありませんし、気になることがあれば何でも聞いてくださいというスタイルでやっています。

高橋: エンジニアとかアナリストみたいな方も来ますか?

堀口: そういう方もいます。ビッグデータ関連もありますし、最近は機械学習もはやりなので、実用面だけでなく数学的理論から根本的に学習したいという人も多いです。例えば、数学で言うと「線形代数」という分野なんですけど。

高橋: 線形代数、全然覚えてないな……。数学を必死に勉強したのはやっぱり大学受験のときなんですよね。だから、完全に受験型の詰め込み式で勉強して。数学に関しての一番の思い出は、初めて微分・積分を学んだとき。まったく分からなかったんです、意味が。

堀口: うんうん。

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高橋: それまでは何となく問題を解いていたんだけど、微分・積分は「何でここに2乗がついているんだ」とか急激にめちゃくちゃなことが起きたなと思って、全然理解できなかったんですよ。自分なりに参考書を使って勉強して、積分はどうやらこのグラフの、この積み上がったやつで、その逆が微分だというところまでは分かったんですけど、結局、何に使うかまったく分からないままなんですよ。

堀口: なるほど。

高橋: だからこの機会に、微分・積分って何なのかって教えてもらえますか(笑)。

堀口: めちゃくちゃ簡単ですよ、実は。難しそうに聞こえるだけで、すごく簡単なことを言っているんですよ。それが分かるコツというのは、「自分の中にイメージを作っていけるかどうか」というところなんです。じゃあ、ちょっと簡単に授業をやってみましょうか。

高橋: お願いします。