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時間管理への執着は真綿で自分の首を締めるようなもの:研究結果

時間管理への執着は真綿で自分の首を締めるようなもの:研究結果

Inc.:忙しい人生で、良い生活も、人生を楽しむ時間も、両方手に入れたいと考えた場合、まず思いつくのが時間管理ではないでしょうか。大事な仕事をやり遂げ、さらにのんびりくつろぐ時間を確保するためには、時間の使い方を分刻みで管理したり科学的に分析したりするのが最強の方法のように思えます。

大半の人が、ストレスレベルを下げるために時間管理をしているのですが、実は、時間を気にしすぎるのは逆に不安を増強させると主張する専門家が最近増えているのです。ビジネス心理学者Tony Crabbeをはじめとする人々が、分刻みで時間を数えるとそれに翻弄されることになる、と強調しています。

彼らの洞察は、このほどスタンフォード大学の新たな研究で、科学的、生物学的データによって証明されました。時は金なりと考えて行動しても、やりくり上手にもデキる人にもなれない。それどころか、健康を害するほどの身体的なストレスを受けることがわかったのです。

時計ばかり気にするのは体に悪い

この研究の試験デザインはきわめて単純で、104人のボランティア被験者に、仮想の会社の有給の仕事を2時間させるというものでした。被験者を、ある小さな違いをもった2つの集団に分けます。全員が同じ報酬で同じ作業をする前提なのですが、片方のグループは、その報酬額を1分あたりの“分給”で伝えられたのです。ベンジャミン・フランクリンの名言「時は金なり」を、具体的な数字で実感させるためでした。

同じ給与額の計算単位が違うくらいでストレスレベルに影響が出るわけがないと思いますよね。ところが、被験者の唾液中コルチゾール値を測定したところ、毎分の経済価値を意識するよう促されたグループは、ストレスレベルがなんと25%も上がっていたのです。コルチゾールは、ストレスのバイオマーカーで、長期にわたって過剰に分泌されると、多くの深刻な健康障害につながるのです。

「25%近い上昇は健康への深刻な影響と言える」と、論文の共同執筆者でスタンフォード経営大学院のJeffrey Pfeffer教授は述べています。しかし、時計ばかり気にすることの健康被害は、過剰な時間管理の予期せぬ弊害の一部で、さらに、あなたの幸福を奪うという悪影響もあると、教授は警告しています。

「自分の時間の経済的価値を常に計算している人が多いですが、この研究実験は、時間とお金のことを考えていると人生を楽しめないことを示しています。焦燥感に駆られ、音楽を楽しむことも夕日を楽しむこともできないのです。子どものサッカーの試合をコーチする自分の時給はいくらか、などと計算していては、幸せを感じることができません」とPfeffer教授は述べています。

時は金…だけではなく、人生でもある

さて、ここから何が学べるのでしょうか? ランチに何時間もかけたり、昼寝をしたりして1日をダラダラと過ごす余裕があるのなら、そうしたほうが、いざ働いたときにはより有意義な仕事ができると、歴史的にも科学的にも証明されているのです。さらにこの研究では、そのほうが健康にもよいことがわかりました。しかし残念なことに、そのような「怠け」と受け取られるような行動は、顧客や上司には認めてもらえそうにありません。それなら、せめてできることは、ほどほど主義を採ることではないでしょうか。よく考えて日々の計画を立てることが有益でないわけはありません。ただし、やりすぎは禁物ということです。短い休憩をこまめにとり(できれば携帯と机から離れて)、一分一秒を気にすることから自分を開放すれば、毎分の経済的価値に執念を抱くよりも、幸福感も生産性も増すでしょう。

Your Obsession With Time Management Is Slowly Killing You, Science Says|Inc.

Jessica Stillman(訳:和田美樹)

Photo by Getty Images.

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