今回は確率別の収束速度について解説させて頂きます。大数の法則によって確率は収束しますが、確率によって収束するスピードは異なるはずです。
つまり確率1/2(50%)と1/100(1%)とでは収束するのに必要な試行回数(収束速度)が違うという事です。大数の法則の詳細についてはこちらの記事をご参照下さい。
確率が収束するのに必要となる試行回数nを求める
確率分母kが誤差±r%以内に収束するのに必要となる試行回数n(危険率5%)は以下の計算式で求めることが出来ます。
n=試行回数 z=(今回は危険率5%で1.96) k=確率分母 r=誤差
※危険率=計算を間違える確率
試行回数n = 1.96^2 × ( 確率分母k – 1 ) ÷ 誤差r^2
この計算式を使って、勝率50%(確率分母2)システムの勝率が誤差±10%以内に収束するのに必要となる試行回数nを求めてみますと、
■n = 1.96^2 × ( 2 – 1 ) ÷ 10%^2 = 384回 となります。
以上の事から、勝率50%システムの勝率が誤差±10%以内(45~55%)に収束するのには、95%の確率で試行回数が384回以上必要という事が分かりました。
※なぜこの計算式になるのかはこちらのサイト様が解説して下さっています。
http://www.dwdem.com/math/lec/page21_1.html
確率別の収束速度一覧
以下の表が確率別の収束に必要となる試行回数の一覧となります。危険率は5%で、誤差は±10%で求めています。
確率%
必要試行回数(α=5%)
誤差範囲(±10%)
90%
43回
81% ~ 99%
80%
96回
72% ~ 88%
70%
165回
63% ~ 77%
60%
256回
54% ~ 66%
50%
384回
45% ~ 55%
40%
576回
36% ~ 44%
30%
896回
27% ~ 33%
20%
1537回
18% ~ 22%
確率が低くなればなるほど、収束するのに必要となる試行回数が増えていっているのが分かります。勝率30%のシステムが誤差±10%の確率に収束するには95%の確率で取引回数896回以上が必要となる事が分かります。
つまり取引回数が896回未満で勝率が30%のバックテスト結果があったとしても、その成績はまだシステム本来の勝率に収束していない、あてにならない成績である確率が高い事が分かります。
ribadorikun 総取引回数:1,432回 PF:1.33 勝率67%
nobasukun 総取引回数:2,556回 PF:1.26 勝率28%
バックテストの成績を見る際は、取引回数と勝率をチェックして、システム本来の勝率に収束しているかを確認する事がきわめて重要となります。
ではエクセルで上記表の勝率となるシステムを作成し、確率の収束具合を目視で確認してみたいと思います。
試行回数1000回を超えればどの勝率のシステムでも大方確率が収束している事が分かります。では乱数を変えてどうなるか見てみましょう。
このように何度乱数を変えても上記表の試行回数以上になれば、95%の確率で誤差範囲内に入っている事が確認できます。おおざっぱに見ても1000回程度を超えればあらかた確率が収束している様にも見えます。
低確率の場合の収束速度一覧
システムトレードでの勝率は低くても20%(1/5)程度ですが、たとえばパチンコの様な低確率の場合収束するのに必要となる試行回数がどうなるかを表したのが以下の表です。危険率は5%で、誤差は±10%で求めています。
確率
必要試行回数(α=5%)
誤差範囲(±10%)
1/50
18,823回
1/45 ~ 1/56
1/100
38,030回
1/91 ~ 1/111
1/150
57,238回
1/136 ~ 1/167
1/200
76,445回
1/182 ~ 1/222
パチンコの当選確率が1/100だった場合、38,030回転以上させないと誤差±10%以内の確率(1/91 ~ 1/111)に収束しない事が分かります。パチプロは1日2000回転させますので、約20日分です。つまりパチプロが1か月フル稼働させてやっと誤差±10%以内の確率に収束するという事が分かります。
パチンコの勝ち方についてはこちらの記事を参照下さい。
この様に大数の法則によって確率は収束するのですが、確率が低ければ低い程収束するのに必要な試行回数が増えていくことが分かりました。テスターレポートをおおざっぱに確認する場合、バックテストの取引回数が1000回以上あり優秀な成績を出しているシステムであれば一安心でしょう。