世界投資へのパスポート
2017年5月29日公開(2017年5月29日更新)
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「世界投資へのパスポート」

著者・コラム紹介

世界投資へのパスポート

広瀬隆雄 ひろせ・たかお
三洋証券、S.G.ウォーバーグ証券(現UBS証券)、ハンブレクト&クィスト証券(現J.P.モルガン証券)を経て、2003年、投資顧問会社・コンテクスチュアル・インベストメンツLLCを設立。長年、外国株式関連業務に携わっており、特にBRICsをはじめとした新興国市場に詳しい。米国カリフォルニア州在住。

広瀬 隆雄

長らく停滞していた新興国経済に、復活の兆しが!
新興国と関係の深く、直近の好業績で注目を集める
「キャタピラー」と「ディーア」の決算内容を解説!

2018年は4.8%の成長見込みと
新興国経済が調子を取り戻している

 新興国経済が調子を取り戻しています。国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」によると新興国経済は2017年が4.5%、2018年が4.8%で成長すると見られています。

 新興国経済は2003年頃から、いわゆるBRICs(=ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字をとったもの)ブームで高度成長しました。

 しかし、その後ブームが一巡したことに加え、新興国の経済成長と密接な関係がある世界の貿易量の成長が伸び悩んだことなどから、2011年以降はモタモタした展開でした。

 しかし下の表のように、ここへきて世界の貿易量は力強くリバウンドする兆候を見せています。

 ドナルド・トランプが大統領に当選したとき、「これでアメリカの経済成長は加速し、ドルも強くなる」と考えた投資家が多かったです。しかし、トランプ大統領は議会と協調することが下手で、彼の打ち出した成長戦略は、これまでのところことごとく法案成立までこぎつけることができず、不発に終わっています。それを受けて、貿易加重ドル指数も軟調です。

 一般に、ドル安の局面では米国の投資資金は新興国に向かいやすいですし、海外からの資金流入は新興国経済の安定に寄与します。

 大統領就任時、「新興国に対して厳しい態度を取るに違いない」と予想されていたトランプ政権ですが、実際に政権が始動してみると驚くほど弱腰で、新興国各国首脳や実業界はホッと胸をなでおろしています。

 これらのことは、実業界や投資家の関心が再び新興国へと向かう可能性があることを示唆しています。

 実際、先の第1四半期決算発表シーズンでも、新興国と関係の深い2つの機械メーカー、すなわちキャタピラー(ティッカーシンボル:CAT)ディーア(ティッカーシンボル:DE)が、久しぶりに良い決算を出し、投資家の注目を浴びました。

 そこで今日はこれらの2銘柄を紹介します。

【キャタピラー】
新興国での売上げが増大した世界最大の建設機械メーカー

 キャタピラーは、1925年に創業された世界最大の建設機械メーカーです。同社の2016年の売上高は385億ドルでした。

 同社は建設、鉱業、石油・天然ガス産業向け機械を作っているほか、ディーゼル・エンジン、ガス・タービン、ディーゼル兼電気機関車なども作っています。

 同社の売上高の57%は、海外です。

 ここ数年の同社の業績は、中国経済の減速とそれに伴う資源の消費の鈍化で、鉱業を中心とした新規投資の絞り込みの影響をモロに受け、低迷していました。

 しかし、4月末に発表された第1四半期決算では、EPSが予想63セントに対し1.28ドル、売上高が予想92.7億ドルに対し98.2億ドル、売上高成長率は前年比+3.8%と、ひさしぶりに予想を大きく上回りました。

 売上高が伸びた原因は、販売数量の伸びです。なかでも、鉱山会社へのアフターマーケット部品の販売が好調でした。一方、エネルギー&運輸は微増、建設は横ばいでした。

 地域別の売上高を見ると、アジア太平洋は、中国が好調で+12%でした。オーストラリアのアフターマーケット部品も好調でした。南米は+14%でした。北米は横ばいでした。つまり、新興国での成長が、好業績の大きな要因となっているのです。

 2017年のEPSは予想3.26ドルに対し、新ガイダンス3.75ドルが提示されました。売上高は予想382.4億ドルに対し、新ガイダンス380から410億ドルが提示されました。

【ディーア】
世界最大の農業機械メーカーは、南米市場の売上げが回復

 ディーアは、1837年に創業された世界最大の農業機械メーカーです。農業機械に加えて建設機械、芝刈り機なども作っています。2016年(同社の決算は10月末〆です)の売上高は266億ドルでした。

 部門別売上高構成は、次の通りです。

 上のパイチャートの中で「金融サービス」というのは、農業機械を割賦で販売するサービスを指します。一般に米国の農家は事業規模が大きく、資産の面からもキャッシュフローの面からも余裕のある農家が多いです。このためディーアの金融サービス部門の債権は、きわめて健全であると考えられています。

 同社の売上高のうち、米国ならびにカナダが占める割合は63%です。

 同社の過去3年の業績は、穀物市況の低迷で農家が農業機械の買い替えを見合わせたこと、南米を中心とする新興国経済の低迷などの影響でじり貧でした。しかしここへきて、同社の業績は持ち直す兆候を見せています。

 先に発表された第2四半期(4月期)決算では、EPSが予想1.69ドルに対し2.14ドル、売上高が予想72.7億ドルに対し72.6億ドル、売上高成長率は前年比+2.2%でした。

 地域別に見ると、米国カナダ売上高は-5%、海外は+14%でした。中でも、南米市場の回復が著しかったです。実質販売価格は+2%でした。一方、部門別売上構成では、建設機械が+7%でした。

 第3四半期売上高は予想62.4億ドルに対し、新ガイダンス69.2億ドルが提示されました。

【今週のまとめ】
新興国関連で業績を伸ばす機械メーカーに要注目!

 建設機械、農業機械の銘柄は、新興国経済の成長鈍化で長く低迷していました。しかしここへきて新興国経済は再加速する様相を呈しており、それに伴いこれらの機械メーカーの株も脚光を浴びています。

 中でも、新興国と関係の深い機械メーカーで、先の決算でも好業績を発表したキャタピラーディーアには注目です。

■キャタピラー(CAT)チャート/日足・6カ月 ※クリックで詳細ページへ
キャタピラー(CAT)チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)
※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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■ディーア(DE)チャート/日足・6カ月 ※クリックで詳細ページへ
ディーア(DE)チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)
※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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