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226.悪魔のささやき
くじ引き五巻発売中、よろしくお願いいたします。

朝、裸の女達に囲まれながら、シーマを腕の中に抱いていた。
シーマは昨夜おれを誘った、誘惑した時の雰囲気とはまるで別人で、従順な犬っころのようにおれに体を寄せていた。
「こんなの初めてよ……」
「満足できたか?」
「満足なんてものじゃない、もう……あなたがいないとダメな体になってしまったわ」
「そうか、満足したのならいい」
シーマを更に抱き寄せる。
嫋やかな体があっちこっち柔らかくて、情事の余熱で火照ったままだ。
「あなた何者? わたしたちが十人がかりでもまるで歯が立たない男は初めて。それにあの強さ……あの剣」
「知ってるのか?」
「エレノアにそっくり。でもあなたはロドトスじゃない」
「いろいろあってな。ロドトスの帝国を倒すつもりで動いてる男だ」
この時代のエレノアが人間の姿になったことはまだ増えておくことにした。
「帝国を倒す……スキロス・カランバと関係があるの?」
「知ってるのか」
「前に協力をしてくれって来たことがあったの。メルクーリの名を貸してくれって」
「メルクーリの?」
「数百年前に神聖メルクーリ帝国というものがあった、わたし達はその生き残りよ」
「なるほど、だから名前をか」
数百年前の帝国……まさか?
(われが生まれた国だな)
エレノアが答えた。
やっぱり関わったかこいつ……というか壊したとか作ったとかじゃないのか。
その事にちょっと興味をもったが、後回しにした。
シーマに意識を戻して、腕枕している手で頬を撫でながら更に聞く。
「スキロスから話を少しだけ聞いてる、なんで断ったんだ?」
「占いがあったの」
「占い?」
「大予言者アカンサのことを知ってる?」
頷くおれ、その肩書きは初耳だが。
「アカンサが十年前この里に来た、里の人間はこの先五十年、何があっても里を出てはいけない。出ると凶が10……といわれたわ」
「凶が10、それはまずそうだな」
(貴様の「吉が10」を考えたらまずさが際立つな)
「だからわたし達はずっと里に籠もってきた。なんの娯楽もないこの里に。一族にとっての凶が10を踏みに行くわけにはいかないから」
「だから欲求不満だったのか」
十人の裸の美女、シーマと寝息を立てている九人を見た。
あきらかに欲求不満な彼女達は占いで軟禁されて抑圧されてきたせいだろうな。
「そもそもこの里の襲撃もそうよ、この前外から来たレクスという男。外から来るのはいいのよ、でも里の人間を外に連れ出すのはダメ。かれは仲良くしてる子を外に連れ出そうとしたの」
「なるほど」
因果関係は占いという不確かなものだが、そうかも知れないなとおれも思った。
「だから、わたし達はここに引きこもってる。あと四十年は里から出てはいけない」
「ふむ」
シーマに腕枕をしつつ、考える。
スキロスがメルクーリに断られた理由は分かった、ついでにこの里が襲われた理由もわかった。
「なあシーマ」
「なあに」
猫なで声で聞き返された、話が一段落したのを気配で感じた彼女はおねだりをしてきたのだ。
「提案がある」
先払いのキスをしてから、彼女を組み敷く形で上から瞳をのぞき込んだ。
☆
服を着て外に出た。
一晩明けて、襲われた里はすっかり落ち着きを取り戻していた。
「おはよーおとーさん!」
朝日の中、ひかりが走ってきておれに抱きついた。
「おはよう。大丈夫だったかひかり」
「うん! ひかり頑張った。敵の人を全員捕まえたよ」
「そうかそうか、さすがおれのむすめだ」
「えへへへー」
(まったくこの親馬鹿め)
なんとでもいえ。
頑張ったひかりの頭を撫でてやると、遠くからオリビアが歩いてきた。
「おはよう人の子。ひかりが捕らえてきた連中を一通り拷問しといたよ」
「へえ、どうやって」
「軽くひっかいてやったよ、あたしの爪に引っかかれるとそこから徐々にうろこになって最後はトカゲになっていくんだ。それを何人かにやったらね」
「それはエグいな。トカゲになったらトカゲのままなのか?」
「戻すことも出来るよ。まだはいてない事があるかも知れないからしばらくそのままにしとくけど」
「そうか、よくやった」
ひかりの頭から手を離し、オリビアを抱き寄せてキスをする。
「わー、おーちゃんおめでとう」
ひかりは横でパチパチ拍手して喜んだ。
正直ちょっとだけ微妙な気分になった。
オリビア、おーちゃん。
おれの女であるが、一方でひかりの親友でもあるオリビア。
本当はひかりの親友はあのチビドラゴンの方のオリビアなんだが、今のオリビアとひかりもあれに勝るとも劣らないくらい仲が良い。
娘の親友。
言葉が頭の中に浮かんでちょっとだけ微妙な気分になった。
キスが終わった後、シーマが家から出てくるのが見えた。
彼女はおれを――オリビアをちらっと見て、羨ましそうな顔をした。
「おろろ、一晩ですっかり虜になっちゃったね」
「驚くところなのか」
「里の子たちが言うには百戦錬磨な人だからさ、あたしそういうの経験少ないし、人の子しかしらないしさ」
「なるほど」
聡明なオリビアにもわからない事があるわけか。
「ねえ、あの子どこに行くの?」
「ちょっとな」
おれはそう言って、オリビアとひかりを連れてシーマの後を追った。
☆
「レクス・アポス、そしてソーラ・メルクーリ」
ソーラの家、襲撃の後応急処置でとりあえず直した家の中、シーマがカップルの二人と向き合っていた。
里の長であるシーマが出向いて、冷然とした表情で二人のフルネームを呼んだ。
その事に、レクスもソーラも表情が強ばった。
そんな二人の反応を意にも介さず、シーマは更に言う。
「シーマ・レイウース・メルクーリの名において宣言する。ソーラ・メルクーリをメルクーリの民から除名し、里から追放する」
「つ、追放だって!?」
「どうしてですかシーマ様!」
「理由はわかっているはずよ」
シーマはソーラ、そしてレクスをじろりと睨んだ。
二人はビクッとなった、シーマの眼光にすくみ上がった。
「今回の襲撃、あなたが彼女を外に連れだそうとしたから起きた」
「それはでも――」
「お前も追放だレクス・アポス。あの言葉をやぶって、外にほんの少しでも出たものをこれ以上里におけない」
「うっ……」
「分かったねソーラ、今日中に里から出て行きなさい」
「……わかりました」
ソーラは涙ぐんで立ち上がり、シーマに深々と一礼した。
「勝手な事をしてごめんなさい、今までお世話になりました」
「……」
シーマは無言でソーラ、そしてうなだれているレクスを一瞥して、彼女の家をでた。
残された二人、ソーラはレクスの横に座り直した。
「ごめんなさいレクス、こんなことになってしまって」
「ソーラはわるくない、おれがソーラに外を見せたかっただけだ」
「ううん! わたしもちょっとだけなら大丈夫だって思った。だから……わたしの方こそごめんなさい」
更にうなだれるレクス、同じように気落ちするソーラ。
沈黙がおりる、二人は落ち込んで何も言えないでいた。
「結局……凶が3の方だったのかな」
「レクス……」
「いいや、吉が7だとおもうぞ」
「え?」
顔をぱっとあげるレクスとソーラ。
シーマが出て行ったドアから男が入って来た。
里の襲撃を間一髪のところで介入し、里全体を救った剣士。
「ユウキ……どういう意味なんだそれは」
「レクス、それにソーラ」
「は、はい」
「王にでもならないか?」
強い眼差し、自信に満ちた口角の笑み。
カケルの言葉は、部屋に充満していた陰鬱な空気をまとめて吹き飛ばしたのだった。
下の同時連載も読んでくれると嬉しいです
【同時連載作品】
こちらも読んでくれたら嬉しいです。
■レベル1だけどユニークスキルで最強ですリンク
ブラック企業で過労死した佐藤亮太は異世界に転移して、レベルが1に固定される不遇を背負わされてしまう。
レベルは上がらない一方で、モンスターからその世界に存在しないはずのチートアイテムをドロップするという、彼だけのユニークスキルをもっていた。
それを知った彼は手始めに能力アップアイテムでステータスMAXになって、更に自分にしか使えない武器やアイテムの数々を揃えていった結果、レベル1のまま能力も装備も最強になって、好きに生きられる第二の人生をはじめられることになった。
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