旅好きなデザイナーが考えると、ギターはこうなる──弦がない木製の電子楽器「NOMAD」
「いつでもどこでもギターを演奏したい」。そう考えた旅好きなデザイナー、オリット・ドレフが生み出したのは、ペグも弦もボディもない、まるでギターのネック部分だけを残したような電子楽器「NOMAD」だ。
TEXT BY WIRED.jp_A
世界各国を旅して回っていたデザイナーのオリット・ドレフ。ある日、彼女は旅のお供にギターをもっていくことを思いつく。「音楽は、旅先で出会った人々と言葉や文化を越えてコミュニケーションをとるのに最高の手段だと思ったんです」
しかし、ギターと一緒に旅するのは大変だ。ボディが大きすぎるためにリュックには入らず、弦の張り替えやチューニングにも手間がかかる。それでも、場所を選ばず作曲や演奏をしたい──。そう思った彼女が考案したのが、まるでギターのネック部分だけを残したような電子楽器「NOMAD」だ。
NOMADのプロトタイプはクラシックギターをベースにデザインされている。演奏者が普通のギターと同じ感覚で持てるよう、本体は木製だ。しかし、このギターにはいわゆる糸のような弦は張られていない。その代わり、感圧パッドが内蔵されたゴム製の“弦”があり、それをはじくことで従来のギターと同じように演奏できるのだ。さらに、専用のアプリを使ってチューニングを変えたり、音色を自由に切り替えたりすることもできる。「アナログな楽器がもつ親しみやすさと、電子楽器がもつ可能性を融合させたデザイン」なのである。
音の出力方法は、ヘッドフォンと専用アンプの2種類。ひとりで演奏したいときはヘッドフォンをつなぎ、誰かに演奏を聞かせたいときなどはワイヤレスでNOMAD専用のアンプにつなげることもできる。専用アンプは、NOMADとペアになるようにデザインされており、重ねて持ち運ぶことで本体の弦部分を守る役割も果たしている。
現時点ではプロトタイプのNOMADだが、ドレフは製品化に向けて準備しているところだという。
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ピアノの表現力の限界を超えた次世代キーボードや、モジュラー型音楽デヴァイス、直感で作曲できる音楽アプリなど、革新的な楽器を生み出しているROLI。その創業者ローランド・ラムは、日本の禅寺で修行を積んだこともある異色の経歴の持ち主だ。そんな彼が目指すのは、誰もが気軽に「音楽のセルフィ―」を生み出すような、音楽づくりが民主化された世界だという。
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