細かなバッキング。1つ1つが生き生きとしています。誤解を恐れずにいうと、スモールモニタースピーカーの世界感です。
おもちゃメーカーでありながらヘッドホンメーカーとしても歩みつつあるグッドスマイルカンパニー。初期モデルの可変式ヘッドホンに続いて、新シリーズとなる「Double Zero 001」がリリースされましたよ。
エレクトロ・ミュージックのトップDJ&プロデューサー、Zedd(ゼッド)が舵を取り、エクステリアをデザイン集団SF inc.、ハードウェアアーキテクチャをオンキヨーが担当した壮大なスケールのコラボヘッドホン。Zeddいわく「テスラやアップルのような、シンプルでモダンなプロダクトを目指した」そうです。
しかし、なんでまたZeddがヘッドホンを手がけることになったのでしょうか。
Zedd「日本でライブをしたときに、グッドスマイルカンパニーがトランスフォーミングするヘッドホンを持ってきたんだ。聴いてみたら音が良かったんだよね。しかしデザインがファニーで、僕の好みじゃなかった。だから一緒に作ろうよということになったんだ」
確かにあの可変式ヘッドホンはユーザーを選ぶデザインでしたね。では、デザイン面でZeddがこだわったところはどこなの?
Zedd「良い音のヘッドホンはハウジングが大きくなってしまいがちだよね」
確かに。ドライバーの口径も大きいしドライバー背面の空間も大きめにとるのがスタンダードです。
Zedd「でもDouble Zero 001はね、いい音なんだけど薄いんだ。この形になるように頑張ったんだ」
横から見ると、おお、なるほどです。分厚いイヤーパッドに卵形のハウジングを組み合わせることで、スマートなアウトラインにまとまっています。
Zedd「流行に左右されないものにしたかったんだ」
ということはライフスタイルとマッチすることが大事だったのでしょうか。
Zedd「イグザクトリィ! 音は好きでもヘッドホンをつけるのに抵抗がある人たちがいるんだ。このヘッドホンはつけていてもクールに見える。もちろん音も大事さ。音楽を作っているときにリアルに聴こえるヘッドホンで、デザインもよくてリーズナブルなものを作りたくて、プロデュースしたんだ」
では実聴です。
まずはZedd x アレッシア・カーラの最新アルバムから『Stay』をプレイ! おっと、アレッシア・カーラの声の通りがいい! ノラ・ジョーンズを思わせる、エッジがハスキーな彼女の声の特徴が良く出ています。タイトなリズムセクションが入ってもボーカルの存在感に一片の陰りもなし。
次にZedd x Greyの『Adrenaline』を聴きますと、スタンダードなEDMトラックとも高い次元で合いますね。シャープな低域再生能力を重視したのか、いわゆる重低音重視機ほどの低音量はありません。ブーストをかけず、ドライバーのポテンシャルでローエンドのベースラインを鳴らしている印象です。
綺麗系EDMの申し子たるZeddのトラックとのマッチングは最高。では他のジャンルはどうでしょうか。
いろいろ試してみたところ、全体的に高解像で音離れが速く、ダマになって潰れやすいフレーズもしっかりと鳴らす性格が見えてきました。エネルギーバランスはフラットな傾向ですが、中域、それもボーカルの背筋がスッと伸びています。RADWIMPSの『Sokurateikku Rabu』も綺麗に鳴らしきる。面白い!
エージングにもよると思いますが、新品状態だと大ホールの潤沢なリバーブ感を取りこんだトラックは苦手な様子。音場の広さもスタンダードで、タイトめなモニターテイストのトーンにまとまっています。1音1音がスピーディで、瑞々しいというか若々しいというか。なるほど、これがZeddが目指す音世界なのか。
「自分たちが好きな曲を聴いてほしいね。いままでよりも綺麗に聴こえるというのを体感してほしい。でも、これといった曲がないなら、僕の『Stay』を聴いてほしいね(笑)」というZedd。
前述したように『Stay』との相性は抜群だったので、Zeddのトラックを追いかけている人はコイツで一聴すべき!
images: 武者良太
source: Double Zero, グッドスマイルカンパニー, Zedd,
(武者良太)